- 2023/12/08 掲載
アングル:見通し分かれる来年の金融市場、米国が景気後退に陥るかが焦点
[ロンドン 7日 ロイター] - 来年の株式と為替の見通しを巡り市場関係者の予想は大きく異なる。米経済がリセッション(景気後退)入りするかどうかについて、見方が分かれているためだ。
リーガル&ジェネラル・インベストメント・マネジメントのソニア・ラウド最高投資責任者(CIO)は「米国がハードランディングするかソフトランディングするかが市場の焦点になるだろう」と語る。シナリオはまだ明確ではなく、米政策金利の見通しが大きく変化すれば市場で大きな変動が生じると述べた。
<円が明るい材料に>
ロイター調査によると、2024年の米国内総生産(GDP)成長率は平均1.2%と予想されている。
米連邦準備理事会(FRB)の積極的な利上げが景気を減速させるとの見方でエコノミストは一致しているものの、成長率が四半期ベースで複数回マイナスとなり、利下げが行われてドル安になるかどうかは意見が分かれる。
欧州最大の資産運用会社アムンディは24年前半の米景気後退入りを予想している。同社のバンサン・モルティエCIOは日銀が大規模な金融緩和政策から脱却すると予想されるため、為替市場では円が「明るい材料」になるだろうと述べた。
一方モルガン・スタンレーは、来年にかけてFRBが金利を高水準にとどめる可能性があるが、景気後退入りはしないとみている。ドル指数 は現在の104から111へ上昇し、ユーロは対ドルで下落して等価(パリティ)となり、円は142円まで緩やかに回復するとしている。
<株式は上がるか下がるか>
米国株については、これまで支配的だった景気後退予想を変えたかどうかによって市場関係者の見方が異なる。
ドイツ銀行は24年前半に米国が穏やかな景気後退に陥り、175ベーシスポイント(bp)の利下げが実施されると予想。利下げを受けてS&P総合500種株価指数は5100まで上昇するとの見方を示した。
JPモルガンは景気後退の可能性があり、年末時点のS&P500の水準を4200と予想した。ゴールドマン・サックスは景気後退のリスクは限定的だとみている。
ブラックロック・インベストメント・インスティチュート(BII)によると、S&P500に関する株式アナリストの予想は現在、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)以降で最も大きく分かれている。
リーガル&ジェネラルのラウド氏は、米景気後退を見込んで株式をアンダーウエートにしていると明らかにした。
ピクテ・アセット・マネジメントのチーフストラテジスト、ルカ・パオリーニ氏は割安と考える欧州株の上昇に最も注目していると述べた。
<債券の復活>
ほとんどのエコノミストは世界的なインフレ高進は終わったとみている。しかし債券市場でも大幅な利下げが行われるかどうかについては投資家の意見は一致していない。
債券運用大手PIMCO(ピムコ)は24年に米国が景気後退に陥る確率を50%とし、株式よりも国債を推奨している。
HSBCの債券ストラテジストはベンチマークである米10年物国債の利回りについて、24年終盤のターゲットを3%とした。現在の水準は約4.3%。
これに対しインサイト・インベストメント・マネジメントのグローバルCIOエイドリアン・グレイ氏は、国債市場はすでに高揚しすぎていると指摘する。「FRB、欧州中央銀行(ECB)、イングランド銀行(英中銀)はそろって来年の第3・四半期ごろから(金利を)引き下げると当社は予想している。現在の国債市場はそれを以上を織り込んでいる」とし、利回りは今後「若干」上昇するだろうと予想した。
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