- 2023/12/08 掲載
早期政策修正、市場に観測=植田日銀総裁「年末からチャレンジング」
金融市場で、日銀がマイナス金利政策を早期に解除するとの観測が強まっている。植田和男日銀総裁は7日の参院財政金融委員会で「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」と言及。賃金と物価がバランスよく上昇していくか難しい見極めを試される局面が近いと示唆した。市場は来年の春闘の賃上げ動向をにらみながら、マイナス金利の解除に身構え始めた。
「賃金が来年も持続的に上がるかどうかなどを点検していきたい」。植田氏は7日午後、首相官邸で岸田文雄首相と会談した際、大規模緩和の正常化に向けた出口の考え方について説明したことを記者団に明らかにした。物価目標の持続的実現に向け、政府・日銀の認識をすり合わせた可能性がある。
6日には、日銀の氷見野良三副総裁が大分市の講演で「賃金と物価の好循環が強まっていくメリットは幅広い家計と企業に及ぶ。出口を良い結果につなげることは十分可能だ」と発言。マイナス金利を解除しても経済への悪影響は限定的だとの見解を示した。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美チーフ債券ストラテジストは氷見野氏の発言を「想定より出口に踏み込んだ」と受け止める。
早期修正観測を受け、財務省が7日実施した30年物国債の入札は不調に終わった。同日の東京債券市場では長期金利の指標となる新発10年物国債(第372回債)の価格が急落、流通利回りは前日比0.105%高い0.750%に急上昇した。
ただ、マイナス金利解除にはリスクが伴う。食料品を中心とした物価高で個人消費は鈍化し、米国経済の先行きには後退懸念が強い。氷見野氏は6日の講演後の記者会見で「全部青信号がともることは実際の経済ではない」と指摘した。日銀は、今月18、19両日に金融政策決定会合を開く。賃金と物価がともに上がる好循環が実現する確度を見極める難しい局面に入った。
【時事通信社】 〔写真説明〕日銀の植田和男総裁=11月6日、名古屋市中区
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