- 2023/12/07 掲載
政府の資産運用業改革、公的年金などが動く必要=中村・企業年金連合会理事
[東京 7日 ロイター] - 企業年金連合会の中村明弘運用執行理事はロイターとのインタビューで、「資産運用立国」を目指して政府が進める資産運用業の改革について、実現するには企業年金だけでなく、より資産規模の大きな公的年金などが動く必要があるとの見方を示した。
中村氏は、議論されている改革の内容を見ると、より良いリターンをもたらす運用戦略の促進など「基本的に(独自の分析で投資対象を選別する)アクティブ運用の能力の向上が前提になっていると理解できる」と指摘。一方、共済組合を含む公的年金の運用は、株式指数連動のパッシブ型が中心だ。
パッシブ運用について「同じ機関投資家として何ら問題があるとは思っていない」と強調した上で、公的年金の現状と政府が期待する改革の方向性が合っていないと述べた。
政府の一連の改革は、2000兆円超の家計金融資産の半分以上を占める現預金を投資に振り向けて経済を活性化させるため、資産運用業の運用力を強化するのが目的。資産運用会社だけでなく、資金の出し手である年金基金など、「アセットオーナー」と呼ばれる機関投資家に対しても委託先の運用会社を適切に選ぶ「目利き力」の向上を求める。
中村氏は、アセットオーナーをめぐる改革の議論の中で、企業年金の運用力向上のみに焦点が当てられ、より規模の大きい公的年金や生命保険などへの具体的な言及がないことに違和感があると説明。「公的年金などが運用会社を選別して適正な報酬を払わない限り、資産運用会社が専門的な能力を発揮して商品を開発する流れにはなりにくく、この改革を実現することは難しいのではないか」と述べた。
中村氏によると、生命保険会社の資産規模は約400兆円、公的年金は約200兆円、企業年金は約100兆円。企業年金連合会は国内最大の企業年金基金で、12兆円超の運用資産の大部分をアクティブ運用している。
さらに中村氏は、企業年金の予定利率は平均2%台と生命保険などよりも高いと指摘。「なぜ、企業年金の運用力ばかりが問題であるかのように扱われているのか」と語った。
*インタビューは4日に実施しました。
(山崎牧子 編集:久保信博)
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