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通常の転職では希望給与が高すぎると採用されない。しかし、シニア転職・再就職の現場では、希望給与が低すぎて採用されない場面が続出している。なぜ、他の年齢層と180度違う現象がシニア転職では起きるのか?その背景・理由をシニア転職支援のプロフェッショナルが解説する。
希望給与が低すぎて採用されない
あなたがもし、60歳以降に就職活動をする場合、どのくらいの希望給与を伝えるだろうか?
60歳で定年となり、そのまま同じ企業に再雇用された場合、多くは給与が定年前の半額以下になるという。正社員など比較的良い条件で転職したとしても、3~4割減の給与となってしまうことはシニア転職市場のこれまでの相場だった。
しかし今、シニアの働き方は急変している。多くの企業がすでに65歳までの雇用継続となり、さらに70歳まで働く世の中が迫りつつある。そんな社会の急変の結果、シニア転職の現場で新たに出てきているのが「希望給与が低すぎて採用されないシニア」である。
誰もが耳を疑うような「希望給与が低すぎて採用されない」とは、どんな現象なのだろうか? 今回はそんな「シニアの希望給与が低すぎる問題」を解説していく。
希望給与が高すぎて採用されないのが常識だが……
仕事の斡旋を依頼しているエージェントが、「この希望給与では受からないと思います」などと言い出した場合、そのほとんどは「希望給与が高すぎる」ということである。
客観的な評価と相場を超えた希望給与を提示した場合、仮にそこから交渉で下がることを折り込み済みだとしても、採用担当の心象を悪くしたり、常識や客観性を疑われたりする危険性がある。
そのため履歴書などの希望条件欄には、「貴社規定に従います」などという書く必要があるのかないのかわからない曖昧な文言を書くことが一般常識としてアドバイスされている。
このように「希望給与が高すぎると採用されない」という話は、日本人なら誰もがうなづく就職活動の常識であり、新卒からシニアの転職・再就職に至るまで年代に関係なく共通するものであった。
しかし、最近のシニア層に限っては、これとは正反対の「希望給与が低すぎて採用されない」という事態が発生し始めている。
近年、大企業などでは「ジョブ型雇用」を打ち出すところが増え、こうした企業の職種によっては、新卒や若手でも従来は考えられなかった高額な給与が提示されることもあると聞くが、それでも「希望給与が低すぎて採用されない」という話は聞かない。せいぜい「希望給与を大幅に超えるビックリするような給与を提示された」という話どまりだ。
シニアも最近まではむしろ「希望給与が高すぎて採用されない」というケースが多かったのだと思うし、現在でも「希望給与が高すぎて採用されない」シニアは少なくない。しかし、ここ最近、他の世代にはないシニア特有の問題として、「シニアの希望給与が低すぎる問題」が確実に出現しているのだ。
「シニアの希望給与が低すぎる問題」が生まれた背景
いったい「シニアの希望給与が低すぎる問題」とは、どのような問題なのだろうか。シニア以外の年代では起こらない上、シニアであればどんな人でも起こり得るものでもなく、まだシニア転職・再就職の現場以外では知られていない問題かもしれない。
この「シニアの希望給与が低すぎる問題」が発生しやすいのは、主に正社員としてシニアが転職・再就職する場合である。また、職種としては技術職のシニアに多い。
60歳を超えたシニアが、正社員として働くことなどないのではないか? 60歳を超えたシニアは普通、契約社員や嘱託、パートや業務委託なのではないか? と疑問に思う方がいるとすれば、その方はシニア転職やシニアの仕事のトレンドに乗り遅れていると言えるだろう。
確かに60歳未満と比べると、正社員として働く人は大幅に減るが、近年は60歳以上の正社員も大幅に増えている。すでに多くの企業が65歳までの雇用継続を義務付けられているし、来年4月からは70歳までの雇用機会確保も努力義務となる。こうした中で、定年を65歳や70歳とした会社や、定年を廃止した会社も多いのだ。
こうした60歳以上が正社員として活躍している会社に、特に技術職や有資格者のシニアが転職しようとした場合、ともすると「希望給与が低すぎて採用されない」というこれまで聞いたこともないような事態が発生する。
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