• 2022/01/08 掲載

伝わる文章を書ける人だけが知っている「フックが9割」の法則(2/2)

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・「問い」のフックで、「答え」を引っかける
 さて「問い」から始めたからには、やはり「答え」に辿りつかなければ、文章はまとまりません。スタートが「?」とくれば、もう想像がついているでしょうか。

 そうです。「!」をゴールにするのです。

 書き手である自分が「そうだったのか!」と驚くようなことを結論として導いてくることができれば、その「!」は同時に読み手の驚きにもなってくれるでしょう。

 「?」のフックで、最終的には「!」を引っかけてくれば、実に歯切れがよく、読みごたえのある文章になるのです。

 たとえばテレビのバラエティ番組は、CM前には決まって疑問形で終わります。

 「突然現れた巨大な物体、はたしてその正体とは……? 答えは30秒後!」などというナレーションが流れたら、つい気になってCMが終わるのを待ったということがあるでしょう。それまではたいして注意を払って見ていなかったのに、「!」を期待して画面に釘づけになってしまうのです。

 CMの間に視聴者がチャンネルを変えないようにする、ごく単純な仕掛けですが、人間心理を見事についた戦略なのです。

 こうした例は、テレビにはたくさんあります。視聴者をどれだけ番組に惹きつけておけるかで勝負しているテレビは、「?」と「!」の構成のいいお手本といっていいでしょう。

・疑問文でタイトルをつけてみる
 ちなみに、最初に立てた問いは、文章の表題として使うこともおすすめです。問いの文言をそのまま、文章のタイトルとしてつけてみるのです。

 書籍や雑誌記事などのタイトルでも、「なぜ○○は△△なのか?」式のものを多く見かけます。言葉のプロたちが練りに練った末に、こうしたタイトルをつけているは、「問い」が人の興味関心を引き、好奇心を刺激しやすいからにほかなりません。

 これは、私が実際に大学生に指導した経験からも実感しています。

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「?」で始まり、「!」で終わる
 あるとき、学生たちが書いた宿題のエッセイを読んでいたところ、内容に関しての工夫が見られるわりに、タイトルがおざなりだと感じたことが多かったのです。

 これはもったいないと思った私は、学生たちに「疑問形のタイトルをつけること」を次の課題としてやってもらいました。

 すると、エッセイは一転、本文に目を通す前から、思わず惹きつけられるような雰囲気をまとうようになったのです。

 タイトルは、読む人が最初に目にするところです。タイトルを問いかけ式にするというやり方そのものが、読者の関心を引っかける優れたフックになるのです。

「?」があれば、思考も文章もどんどん進む

・ある「問いかけ」から生まれたベストセラー
 「問い」とは興味関心のスタートラインです。

 ひとたび「問い」が立てば、そこから思考がどんどん広がります。そして「?」の形の通り、問いそのものが「フック」となって、身のまわりや世の中、知識の世界から文章の材料を引っかけてきてくれるのです。

 もう20年近く前にベストセラーになった『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?身近な疑問からはじめる会計学』(山田真哉著、光文社新書)という本があります。

 「たけや~、さおだけ~♪」という、のんびりした歌声とともに日中の住宅街を流している、さおだけ屋の軽トラック。みなさんはご存じでしょうか。

 この本は、そのタイトルの通り、著者が日常で感じている「素朴な問い」がスタートラインになっています。

「さおだけ屋のトラックを見かけても、客がさおだけを買っているところを見たことがない。それなのに、なぜ潰れないのか? どうやって商売が成り立っているのか?」

 そんな疑問をもったことが、本書の出発点だったと著者は書いています。

 一冊の本ですから、200ページほどのボリュームがあります。

 ところが、著者が最初に立てた問いであり、タイトルにもなっている「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」について書かれているのは、実はそのうちのほんの1章程度です。

 では、ほかに何が書かれているのかというと、「表向きの商品とは違うもので商売を成り立たせている」という、さおだけ屋と同じ仕組みで成立している別業種の事例なのです。

 つまり、こういうことです。

 最初の問いは、たしかに「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」でした。

 その答えを追究したら、「表向きの商品とは違うもので商売を成り立たせている」というさおだけ屋の特殊なビジネスモデルが見えてきた。では、ほかにも同様のモデルで成立している業種はないだろうかと、さらに世の中を見渡してみた。

 こうして、最初の「?」をフックとして引っかけてきた別業種の事例が、実に本書の大半を構成しているというわけです。

 「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」という問いは、書き手と読み手の双方にとって強力な「フック」だったといえるでしょう。

 書くネタを引っかけ、書き手の思考と文章を押し進めていくフックとしても、「そういえば、なぜだろう?」と読者の興味関心を引くフックとしても、「?」が非常にうまく機能した好例なのです。

 その結果が、この本の大ヒットにつながったのでしょう。

・すべてのものに「?」「!」が眠っている
 さおだけ屋の軽トラックは、誰もが日常的に目にしてきたものだったはずです。

 しかし、この本の著者が最初に抱いたような素朴な疑問をもった人は、それ以前にはいなかったのでしょう。もっといえば、誰もがうすうす不思議だとは思っていたけれど、じっくりと考えてみようとはしなかったというほうが正確なのかもしれません。

 それだけ、この本の著者は目のつけどころがよかったということですが、「文章を書く」という視点でいえば、私たちがここから学ぶべきことがあります。

 それは、一見、当たり前のように見えるものにも「?」と「!」が眠っているという事実です。

 どんなに身近なことでも、まずは「?」を探そうとする目で物事を見つめることが、そのまま文章を書く力、そして読ませる力につながっていくのです。
※本記事は『書ける人だけが手にするもの』を再構成したものです。本記事に興味を持たれた方はぜひ本屋などで手に取ってみてください。

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