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2020年後半から、中国で突如として電気自動車(EV)が売れ始めている。その背景には、コロナ禍を契機にした意識とライフスタイルの変化がある。市場をリードしているのは、「代歩車」と呼ばれる小型で低価格のEV。ただ、テスラなどの400万円前後の高級車も売れている。代歩車では「クルマの玩具化」、高級車では「クルマのデバイス化」が売れる鍵になっている。中国政府が掲げる「2025年にEV化率20%前後」までには、まだまだ乗り越えなければならない課題はあるが、目標達成への道筋が確実に見え始めている。
中国で「突如として」売れ始めたEV
中国で2020年7月から電気自動車(EV)を中心にした新エネルギー車が売れている。その事実を多くの中国メディアが「突如として」という形容詞を使って報道している。
自動車産業の業界団体である乗用車市場信息聯席会(CPCA)の統計によると、2020年2月から6月まではコロナ禍の影響により、新エネルギー車の販売台数は前年割れとなっていたが、7月から売れ始め、中国政府が事実上の新型コロナ終息宣言を行った9月以降、記録を更新し続けている。
新エネルギー車とは、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、ハイブリッド車(HEV)、その他の新エネルギー車の総称だが、85%程度がEV、15%程度がPHEVでほとんどを占める。
コロナ前、中国の自動車市場、新エネルギー車市場の前途は明るいものではなかった。自動車全体は、2017年の2887.9万台をピークに減少傾向が続いている。一方、これに入れ替わるようにして増えるはずだった新エネルギー車も2019年は前年割れとなり、EVシフトに黄色信号がともった。それが2020年後半の需要急増で、2020年は136.7万台と記録を更新することになった。
「EVを買って後悔」、消費者の心は離れていたのになぜ?
突如としてEVが売れ始めた理由は、何よりもコロナ禍による消費者の意識とライフスタイルが変化したことが大きい。他人と接触することなく移動できるマイカーという移動手段が再評価されている。
コロナ禍以前、消費者の自動車に対する関心は薄れていた。特に若者の車離れが進んでいた。中国の若い世代は1日に7.5時間もスマートフォンを使うとも言われる。運転をする時は、スマホが使えないというのが最大の問題だった。
一方で、公共交通はQRコードやNFC(非接触通信)を使ってスマホで乗れるようになり、シェアリング自転車やタクシー配車、ライドシェアもスマホから利用でき、簡易的な
MaaS(マース)環境が実現できている。
さらに、大都市では、曜日によってナンバー末尾による乗り入れ規制、深刻な駐車場難などの問題もあり、多くの若者が公共交通を使って、スマホを使う時間にあてたいと考えるようになっていた。
また、EVは航続距離の問題、バッテリー発火事故に対する不安などもあり、ガソリン車もEVも売れないというのが、コロナ前の中国における車市場だった。
中国の自動車関係メディアは、「EVを買って後悔している」というオーナーの声を頻繁に取り上げている。最大の理由は、自動車特有の自由さが失われることだ。
ガソリン車であれば、「今日は天気がいいから山の方に行ってみよう」という気ままなドライブが楽しめる。しかし、EVではそうはいかない。事前に、充電ステーションの場所を調べておき、ドライブルートをある程度決めておかないと、バッテリー切れで立ち往生することになる。多くのオーナーが「遠出をする回数が減った」と言う。
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