• 会員限定
  • 2016/08/12 掲載

AIに機械的な作業を任せるという発想は「謎」である

  • icon-mail
  • icon-print
  • icon-hatena
  • icon-line
  • icon-close-snsbtns
会員になると、いいね!でマイページに保存できます。
現在、世間において様々なAIのあり方が語られている中で、誰もが納得する表現その機能や役割を定義するのは不可能な話ではある。不可能な話ではあるが、数あるAI談義のなかで、近年しばしば「AIによるマネージャー代替論」が語られることがある。しかし、これは「機械的で面倒な仕事から早く解放されたい」という願望と相まった人間の大きな間違いだ。
photo
AIは営業マネージャーの仕事を代替してくれるのか?

「AIによるマネージャー代替論」には妥当性があるのか?

 AIについては、時に脅威論、時に待望論、日々様々な論考が発表されている。今や、立派にバズワードとしてのポジション、No.1の座を獲得している。いや、もはやバズワードの域を超えている、との論もある。

 少し前までは、やれビッグデータだ、データサイエンティストだと騒がれていたのは一体何だったのか、そういえば3Dプリンターは本当に世界を変えたのか、とか、そういうことはさておき、いまはとにかくAI、なのである。

 脅威論、待望論の双方において、その中心的テーマとなっているのは「人間の仕事を機会に代替することが可能か」である。

 人間にしか実行することのできない知的な営みが、機械によって置き換わる。それがこの世を失業に満ちた地獄に変えるという人もいれば、面倒な仕事の存在しない楽園に変えるという人もいる。

 様々な領域においてこれが語られているなかで、「AIによるマネージャー代替論」が語られることがある。文字通り、AI技術が発達、普及していくなかで、企業組織におけるマネージャーが不要になっていくであろう、という論である。

 そのようなテーマにおいて、何がどういった水準で実現するかどうかはさておき、この論の裏で無意識的に語られているもののイメージ、その浅薄さについては語る意味があるように思われる。

まずは「営業マネージャーの仕事とは何か」から検証しよう

関連記事
 「AIによるマネージャー代替論」はその裏に、極めて興味深い矛盾と期待をはらんだ論である。

 ここにおけるマネージャーとは、主に営業組織におけるマネージャーを念頭に置かれている。そして、その仕事とは、テレアポ数や日々の訪問件数、売上の達成状況をモニタリングすることであるという想定に立っている。

 そうした行為の本質とは、毎日毎日飽きもせずに、やるべきことを地道に繰り返すという「凡事徹底」の世界である。人間はすぐにサボるものであり、余計なことに気を取られる存在であるため、なかなかこれは簡単なことではない。どうせ機械的な仕事であるならば、いっそのことAIによって実現するのがいいんじゃないですか、という論旨だ。

 さらりと読むと、確かにそうかもしれない、そうなったら、さぞストレスフリーな世の中になるだろうなと感じるものであるが、この論には、ふたつの論理の飛躍が潜んでいる。

 ひとつは、マネージャーの仕事に対する定義、もうひとつは、AIに対する定義のあり方だ。

 どの営業組織にも、たいていマネージャーという役職が存在する。そしてその仕事とは、その組織に与えられた営業目標の達成であると、相場が決まっている。

 営業活動の進捗管理とは、確かにそれを構成する要素の一つであるが、それがその職務の本質である、というのは一体どういうことなのであろうか?

 目標と現状には必ずギャップがあるものであり、そのギャップを埋めるという行為には一定の創造性が必要とされるものである。どうしてもこのままのペースでは達成しない、何か手を打たなければならない、そういう局面こそ、マネージャーの手腕が問われる。

 例えば、これまでアタック先と考えてこなかった領域へチャレンジしようとか、思い切った部下の登用でチームの力を底上げしようとか、前例のない案件を受注するために経営層や製造サイドと折衝し、超法規的措置によって一大プロジェクトを始めるといった意思決定が営業マネージャーには求められる。と同時に関連するありとあらゆる組織との協働なくしてその職務を全うすることができない、という側面もあるのだ。

 「AIによるマネージャー代替論」の世界においては、おそらくこれらの想定は存在していない。イレギュラーな事態が発生することのない製品領域で、ただひたすら凡事徹底を繰り返すことで、必ず目標に到達する。そんな組織を想定しているのであれば、確かにそのマネージャーの職務における本質は、ただひたすら進捗管理のみである、ということになる。

 百歩譲ってそう考えたとき、次なる矛盾にぶつかる。すなわち「そこにAIはどうやって介在するのか?」という点である。

【次ページ】AIには機械的な作業を任せよう、という発想の謎
関連タグ タグをフォローすると最新情報が表示されます
あなたの投稿

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

必要な会員情報が不足しています。

必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。

  • 記事閲覧数の制限なし

  • [お気に入り]ボタンでの記事取り置き

  • タグフォロー

  • おすすめコンテンツの表示

詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!

詳細はこちら 詳細情報の入力へ進む
報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます