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  • 2008/09/10 掲載

【連載最終回】社内で導入するための実践「1枚企画書」講座(12)図解がメインの「1枚企画書」作成法(2/3)

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執筆:竹島 愼一郎
複雑な仕組みをわかりやすく示す

 企画というのはものごとを変えるという試みです。変えてしまうということは、従来あったあり方や形態が一変してしまうということを意味します。

 つまり企画というのは大なり小なり、改革を目指すものなのです。そして改革につきものなのが、変化を望まない守旧派の人たちの存在と有形無形の抵抗です。あなたの職場にも自分の立場を守りたい(冒険して失敗するのはまっぴらという)だけの“ダメ出し”の得意な部長や課長がいるかもしれません。

 企画提案で大切なことは、変えてしまったあとの形は従来のものとどう違うのか、あるいは変えることによってどのようなメリットがあるのかを、こと細かに説明する必要があるという点です。ここで説明が不足していたりすると、のちのち誤解の元になります。また言葉だけの説明に終始すると「そういうことだとは思っていなかったよ」と前提そのものがひっくり返される恐れもあります。

 複雑な仕組みの説明を行うときには、それを目で確認して理解できるようなものを用意して十分に納得してもらうとともに、変化をともなう企画そのものに対する安心感を与えてあげるべきでしょう。その有効な手段が図解です。


※クリックで拡大
図3:企画によって「ヒト」の動きが変わることに
フォーカスして図解した「1枚企画書」
 図3は第8回図1でも取り上げた旅行代理店のエリア戦略の企画案です。位置づけとしては、前のものが予算の見積もりを通す企画案で、これはそのあとで「詳しい店舗の考え方を何かわかりやすい方法で説明してほしい」と促されたあとで提案されたものと考えるといいでしょう。

 こうした図解で重視したいことがあります。それは企画することで変わってしまう「ヒト」「モノ」「お金」「情報」の関係性と動き(流れ)にフォーカスするということです。

 この企画書例でも、「ヒト」の動きが従来のやり方とは変わってしまうことにフォーカスしています。その様子を「こけし」のような「ヒト」のイラストで表し、「当社」とユーザーとの接触がこうした流れでこのように変わるということを表現してあります。

 このような「1枚企画書」に挿入する図解で気をつけてほしいことがもうひとつあります。それは作りをできるだけ簡略化して、核心部分をシンプルに見せるということです。

 ビジネスパーソンに図解の課題を与えたときよく見かけるのは、考えていることを整理しないで、そのまますべてのことを形にしてしまうということです。それはすなわち未整理の考えですから、それを見る側ではいちいち「こういうことではないだろうか」と推測して、中心にある考えとはどのようなものなのかを理解しなくてはいけません。

 そもそも図解というのは整理した考えを見せなければいけないものです。かえって難しくしてしまう枝葉の部分は思い切ってカットして、ほんとうに大事だというポイントのみをピックアップして単純化するというのが図解作成の秘訣です。

 誤解しやすいのですが、企画書というのは考えるためのものではありません。考えるまでもなく一目で理解できるものを提示して、相手の負担を軽減してあげなくてはいけないのです。受け手が企画書を前に難しい表情を浮かべていたとしたら、それは企画内容の良し悪しや実現可能かどうかを見ているのではなく、そこに表されたことそれ自体が理解できなくて考え込んでいるケースが多いのです。

 最後に、もっともクリエイティブな行為とは、どのようなことをいうのかについて考えてみたいと思います。

 それは相手のために何ができるのかを思いめぐらせ、先回りして実現可能なものを用意してあげるということです。企画内容もそうですが、企画書もしかりです。そうした想像力の限りを尽くして、相手が喜ぶことを考え出すことに究極のクリエイティビティがあるのです。

 企画とは一回性のものだと指摘したことがありますが、1回1回、最善を尽くすということはつぎの企画につながります。

 この連載では、さまざまなフォーマットをダウンロードして利用できるようにしましたが、それは単に企画書作成の時間を短縮してほしいからではありません。紹介した実例を参考に、それに類した企画書では同じパターンが応用できるという「1枚企画書」特有の思考法をマスターしてほしかったからです。

 覚えておいてほしいことは、企画というのはかならず新しいことへの試みだということです。

 仮に1回の企画を、パターンを使って無難に乗り切ることができたとしましょう。しかしそのこと自体にはほとんど意味はありません。なぜなら、企画というのはたった1回で終わるような仕事ではないからです。持続的に仕事のことを考え続け、その都度新たな提案を行うのが企画の本来の役割です。1回1回、密度の濃い思考をすること、そしてその積み重ねこそが重要なのです

 よく「1枚企画書」はフォーマットを使えば数十分で仕上げられる便利なものだと誤解されるのですが、作り込むにはそれなりの努力と労力と時間が必要になってきます。

 しかしそのプロセスこそが企画にとって重要なことにほかなりません。

 繰り返しになりますが、企画というのは従来の方法の変革を目指すものなので大きな壁が立ちふさがることもしばしばです。それはこういった台詞に表れます。「いままでのやり方でも別にいいんじゃない」「前例がないからダメ」「そんなものに予算は下りないよ」「企画書を書いているヒマがあるなら営業に出ろ」「上に通すのはまず無理だね」等々。

 しかし、それでも企画することにはそれ自体、価値があります。なぜなら、そうした障害を乗り越えることがすなわち「企てを画すること」だからです。そうした修練の積み重ねは、あなたの人生に掛け値なしに豊かなものをもたらしてくれるものだということを保証します。

 「1枚企画書」で社会を、そして未来を切り開いてください。これが私からの最後のメッセージです。



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