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  • 2008/09/10 掲載

【連載最終回】社内で導入するための実践「1枚企画書」講座(12)図解がメインの「1枚企画書」作成法

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「1枚企画書」というのは「ものごとの複雑な仕組みや流れ、モデルをフロー(流れ図)で表したもの」という意味で図解企画書の一種と見なすことができます。しかしその一方で、ピラミッド型など単独の図解を「1枚企画書」の一部に挿入するという方法も考えられます。連載最終の今回は、図解をメインに見せる「1枚企画書」を取り上げます。情報密度の極めて高いこのような図解企画書を、実際のプレゼンでも活用できるようにしてください。

執筆:竹島 愼一郎

ビジネスモデルのシステムを見せる

 「1枚企画書」は全体がフローによる図解であるという意味で広義の図解企画書と捉えることができます。フローにすると視線の動きを迅速かつ自在にナビゲートできるというメリットがあります。

 それに対して、通常、図解企画書というと1枚の紙(スライド)に図解が盛り込まれたものを指します。形としてはピラミッド型や相関図がその代表的なものですが、図解はそれ自体意味ある内容をもっているので、これを有効に活用することは「1枚企画書」にとっても見やすく理解しやすいものになるはずです。

 そこで考えたのが「1枚企画書」のどこかに図解を入れるスペースを作り、それの周囲に、その図解に関する説明(解説、コメント)を配置するという方法です。


※クリックで拡大
図1:右上に図解を入れ、左側と下に
その図解の説明を入れた「1枚企画書」
 図1をご覧ください。これは右上に図解を入れ、左側と下にその図解の説明を入れた例です。企画内容としては、スパムメールを撃退するソフトを単体で売り出すとそれほど売上が見込めないので、パソコン上で撃退するとき画面に流れる広告収入で収益を上げようというビジネスモデルの解説をするものとなっています。

 このように「1枚企画書」の一部に図解を挿入するタイプについては、実は以前にも取り上げたことがあります。たとえば第8回の図5がそうですが、そのときビジュアル要素は左側に入れる、つまり「左ビジュアルの原則」を守るべきだと指摘しました。

 では今回の企画書例ではどうして左側ではなく右側に入っているのでしょうか。

 それはコメント欄に「1」から「5」の番号が振ってあることでわかるように、説明をひとつながりのものと見てもらうためです。左側のコメント欄を右側にもっていくこともできますが、そうすると「2」と「3」の位置が左右に大きく離れてしまいます。第8回図5の場合は「1」と「2」がそれ以下のコメントと独立した内容なので分離しても差し支えありませんが、すべてを連続した説明と見てもらいたい場合には、こうした「L字型」の展開法を採用したほうがいいのです。

 いずれにせよ、ビジネスモデルなど具体的な仕組みや流れがあって、それを目に見える形で詳しく説明しないとなかなか理解してもらえない場合には、独立した図解を「1枚企画書」中のどこかに挿入するといいでしょう。


善後策を比較して見せる

 企画というのはかならず良いことの提案です。企画を実行することで現状を良くすることを目指し、それを約束するのが大きな役目だということです。

 「企画の前後ではこれだけの違いがある」「企画を通すことでこんなに良い結果が生まれる」ということを表現するのも図解の得意分野です


※クリックで拡大
図2:2つの図解を1つの企画書に並置した「1枚企画書」
 図2は、アジア各国の料理をテーマとしたフードコートの改善企画案ですが、オープン後3年を経て売上が伸び悩んでいるので、それまで頻繁に来店してもらっているお客様をロイヤルユーザー(上客)と見なし、何度も来店してもらうことで売上アップにつなげようという内容になっています。

 最下段の左右に2つの図解が入っています。左側のものは現状での実績で、ユーザーの来店数により4つの階層に分類できるということを示したもので、売上の貢献度からいうと、上から2番目の階層の人たちが全体20%を占めるという現状を図解化してあります。

 それに対して右側は、そのロイヤルユーザー(上客)とその下のヘビーユーザーの人たちを大切に扱うべきだという内容になっていて、二度、三度と来店してもらえるなら、新規の顧客を呼び込まなくても50%程度の売上アップが見込まれる、ということを表しています。

 こうした2つの図解を1つの企画書に並置して、改善策や改革案を提起するものを「before/after図」と呼ぶことができます。良きことを目指す企画書ではきわめて利用頻度が高いので、機会があれば活用してみるといいでしょう。

 ここでひとつだけ指摘しておきます。それはこうした2つの図解の見せ方では、対象となる図解は左右の同じ位置に同じ大きさで配置するというのが原則だということです。

 というのは、人の視野というのは左右に広いので、横長になるよう左と右とに対象物を並べたほうが見やすいからです。たとえばハイビジョン放送のアスペクト比は縦横が9:16の比率になっていますが、そのために従来のテレビ画面の比率より見やすく感じられます。また人というのは、左右に同じようなものが並べられているとき、自然と双方の違いに注目して見ようとする習性があるということも覚えておくといいでしょう。

 こうした表現方法は、たとえば「従来の商品で不足していた機能を追加するという改良案の提案」や、「社内の座席を撤廃して自由な場所に移動できるフリーアドレス制の提案」といった比較や対照をともなう図解に幅広く使えるので、適切な場面があれば活用してみましょう。
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