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- 2007/11/14 掲載
【連載】社内で導入するための実践「1枚企画書」講座(2)企画書に必要な5つの構成要素とは(2/3)
それでは、前回もとりあげた、PowerPointを使った箇条書きによる紙芝居型の企画書ではどうでしょう。
初心者の人が書くと、文章型と違って、要点を簡潔にまとめようとする点ではいいのですが、やはり企画書全体を意識してそれぞれのページを作成していないのです。そのページのみに集中して、全体のなかでそれがどのような役割をもっているかにまでは意識がいっていないのです。「木を見て、森を見ず」とはこのことをいいます。
これまで初心者をはじめとして人が書いた企画書をいくつも見てきましたが、そこで感じたことは、「何を言って、つぎに何を言おう」という“上から下への流れ”ばかりを意識して書いてしまう傾向が強い、ということです。
流れ=論理的な展開がある、というのは大切で、それはそれで意味のあることですが、論理が完璧だからといって企画が通るかというと、それは違います。繰り返しになりますが、それが「説得」というものです。
企画は、もっている内容で勝負するものです。内容を見せるには、各部分が有機的なつながりをもっていることを意識して、全体を構成しなくてはなりません。
「1枚企画書」では、企画とは5つのパートから成り立っているという考え方をとります。5つとは、つぎの構成要素を指します。
1.S(Scene:情況)
2.V(View:判断)
3.C(Concept:中心概念)
4.I(Idea:具体案)
5.P(Plan:実行計画)
まず何かを企画するとき、そこには「情況」というものがあります。たとえば、「今年の夏はオーストラリアが記録的な干ばつに見舞われ、小麦の輸入が思うように確保できない」というのは「情況」です。あるいは「隣のデパ地下がリニューアルして2か月経つが、うちのデパ地下の客離れは止まらず、売上げも微減が続いている」というのも「情況」です。
つまり、目に見えるものがまずそこにある、ということが企画の前提としてあります。これがシーン=Sceneです。Situationとしてもいいのですが、自分たちを起点にすれば「置かれた立場」でも、もっと大きく(マクロの視点で)見ると、政治的、経済的に「現れている現象」ということもあるのでSceneとします(同様に、「状態」よりも「情報」的な色彩が強いので、「状況」ではなく「情況」と表記することにします)。
企画を料理にたとえるなら、Scene(情況)は素材です。料理も企画も素材の良し悪しで決まります。素材が良ければ、いい料理が出来上がります。よくGIGO(Garbage In, Garbage Out:「ごみのような情報からはごみのような結果しか生まれてこない」)という言い方をしますが、これは転じて、「すぐれた結果=アウトプットを出したければ、それ相応の素材=インプットが必要だ」ということを意味します。
その素材で、どのような料理を作ろうか、と思案するのがつぎのステップです。目の前の素材をどうすれば、すばらしい料理に仕上げることができるか、と考える段階です。これをScene (情況)に対するView(判断)と言い表すことができます。離れた位置に立って、客観的に見るということです。SとVは、文法の主語と述語の関係になぞらえることもできます。
ここまでが、料理でいうとレシピを決める段階で、企画書の第1フェーズ(局面)と呼ぶことにします。
料理を何にするかはIdea(具体案)です。たとえば、スズキのムニエルとか、アワビの包み焼き、といったものですが、それだけでは、単に料理の名前=メニューを表したものにすぎません。企画というのは、企画依頼者の依頼を満たしていないといけません。
たとえば「日常のすっきりしない、何かよどんだ状態から解き放ってくれ、スカッとした気分を味わせてほしい」というのが顧客の望みなら、「南欧の透き通った緑色のそよ風」といったものを料理のテーマにします。こうしたテーマが決まらないと、料理は決まってきません。企画書でいうと、これがConcept(中心概念)です。
※クリックで拡大 |
企画書にSVCIPをあてはめた例 |
この、Concept(中心概念)―Idea(具体案)―Plan(実行計画)までが第2フェーズです。
第1フェーズ、第2フェーズからなる5つの構成要素を「1枚企画書」の「SVCIPモデル」ということにします。第1回でもとりあげた企画書にSVCIPをあてはめると上図のようになります。
図のそれぞれの項目名に注目してください。「市場環境と問題」「問題点」「コンセプト&ネーミング」「イメージ戦略」「販売促進」「企画目標」となっています。
最初の「市場環境と問題」とつぎの「問題点」とは、「市場環境と問題」というS(情況)を、どうV(判断)したかが「問題点」である、という関係になっています。つまり、相互の関係性から、その企画に合ったネーミングがなされています。
文章型の企画書の同じ箇所をもう一度見てみましょう。それぞれ「今回の企画の背景にあるものとは」と「企画に必要なものは何かというと」となっています。これを見て、S(情況)とV(判断)かどうかは、すぐにはわかりません。また、この企画書は「1枚企画書」と同じ内容なのでそうではありませんが、S(情況)とV(判断)を意識して作っているかというと、そうでもないことが多いのです。
「1枚企画書」というのは「SVCIPモデル」という枠組み(フレームワーク)が先にあって、それに企画内容をあてはめ、そこから項目名を考え出すという方法をとります。
文章型の企画書をもう一度見てください。I(具体案)を提示する部分は、「そこでつぎのような企画を提案します」となっていて、一見、それでいいように思えますが、この企画の場合、求められていることは「新商品でこれまでとは違う打ち出しでイメージアップを図りたい」という要望なので、「1枚企画書」では「イメージ戦略」という項目名にしてあります。
つまり、最初に企画書の構図を考え、それぞれの配置から、ふさわしい名前を個々につけているのです、そうすることによって、それぞれの項目は、全体の構図のなかの一項目である、という有機的な関係性をもつことができるのです。
連載第1回でお話しした「全体像を提示できる」「関連性を見せられる」というメリットは、こうした考え方から生まれてきます。
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「SVCIPモデル」に忠実にしたがった「1枚企画書」の例 |
要は、その企画に求められていることにじっと耳を傾け、「SVCIPモデル」を念頭に置き、企画書を書くときには、その企画に合ったものを柔軟に考え出すべきである、ということです。参考までに、「SVCIPモデル」に忠実にしたがった「1枚企画書」の例をもう一点右に挙げておきましょう。
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