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生成AIは非常に速いスピードで進化する特性を持つため、企業で利用する際にもこれまでとは異なる体制で運用する必要がある。では具体的にどのような点に注力するべきなのだろうか。本稿では企業が生成AIを効果的に活用するためのポイント5つ(「戦略を立てる」「学習/トライアルを実施する」「統括組織をつくる」「トラスト(信頼)を確立する」「技術を見極める」)を紹介。この点を踏まえつつ、ボストン コンサルティング グループ(BCG)が示す「日本の生成AI活用の勝ち筋」について解説する。
企業が検討すべき5つのポイント
生成AIはさまざまな可能性を秘めている半面、急速に進化を遂げるテクノロジーであり、短期的な過剰期待、長期的な過小評価に陥りやすいという点で、経営者の頭を悩ませる。どのタイミングで、どこから着手すればいいのか、打つ手を見極められずに戸惑っている企業も多いだろう。
企業が生成AIとうまくつきあうためには、「戦略」「学習/トライアル」「組織」「トラスト」「技術」という5つの観点で検討するとよいだろう(図表2-4)。最初はお試しで学習すればいいと、戦略や組織は整備せず、情報管理も後手に回る企業が多いが、最初からこの5つの要諦を押さえたうえでスタートを切ったほうが、より高い効果が望める。
ポイント1 戦略を立てる
まず考えたいのが、どこに適用すれば価値が出るか、どのユースケースで自社が差別化できるのか、という点である。
オペレーションを変えて、生産性を高められるか。顧客の購買行動がどのように変化する可能性があり、それにどう対応するか。自社のビジネスモデルはどう変わり、自社の競争優位性の構築にどう活用できるか。
過剰期待と過小予測を避けるように意識しながら、どのタイミングでアクセルを踏み、どのような時間軸で投資を行い立ち上げていくか、その機会とタイミングを最初にしっかりと構想しておく。
ポイント2 学習/トライアルを実施する
新しいテクノロジーは実際に体験してみないと、正しく理解できないものだ。機能が不完全だからと待っていても、いつ最終形が出てくるのかはわからない。今あるものを早期に試して、適用可能性と適合性を評価し、自社にノウハウを蓄積し、判断力を養ったほうがよい。また、AIに関するトライアルからの学習が組織的に集積され、活用の精度を高めていく好循環の構築がカギとなる。
トライアルの際には「安全な砂場(サンドボックス)」が必要になる。情報漏洩やセキュリティ事故を防ぎながら、安全に試行や実験ができる隔離された環境を用意しなくてはならない。
生成AIの活用時に留意したいのが「ハルシネーション」、つまりもっともらしい誤答だ。私たちは、「機械は正確であり、常に正しく振る舞うように制御されている」と思い込みがちだ。そうした暗黙の前提やバイアスを取り払って、生成AIは事実と異なることを堂々と回答する場合があることを念頭に置いておかなくてはならない。
特に生成AIを試す場合には、ただテキストボックスに質問を投げるだけでは期待した答えは返ってこないため、「あまり使えない」という評価になりやすい。そうした落とし穴に陥らないように、明確な目標設定と、ベースとなるプロンプトエンジニアリングや評価検証などの準備をしなくてはならない。
ポイント3 統括組織をつくる
新しいノウハウや知識に関わることなので、活用する情報を1カ所に集め、知見を集約し、ガバナンスを効かせるために、生成AIの統括組織をつくることを勧めたい。よく見られるのが、各部門で個々人が好き勝手に生成AIツールを試すような放任スタイルのやり方だが、これでは企業としてのノウハウが蓄積されない。
また、社内でAIが間違った学習を進めてしまっても、有効な手を打つことができなくなる。活用範囲をやみくもに拡げたり、現場ごとに自由研究活動が立ち上がる状況は避けなくてはならない。
AIへの各取り組みから得た成果を全社へと拡張するためのコントロールタワーとなる中央組織をつくり、技術支援、規制、利用促進、検証、データ管理などの機能を与えて、責任を持って推進できるようにすることが重要だ。
【次ページ】生成AIの「企業が検討すべきポイント残り2つ」「日本の勝ち筋」
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