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2023年の金融領域のテクノロジーに関しては生成AIが話題の中心だったが、2024年はその実装による影響に加えて、ブロックチェーンの実利用、決済インフラの変化、NISAや相続登記などの制度変化への対応、高齢化や気候変動といった社会変化への対応、セキュリティの脅威など、重要と思われるトレンドを選定した。なお、金利政策の転換など、マクロ環境の変化も予想されるが、ここではフィンテック分野での変化を中心に論じている。
生成AIによる「顧客との関係性の変化」
コロナ禍以降、多くの金融機関においてネットやモバイルチャネルの利用が拡大している傾向にあるが、2023年中に世界中で話題となった
ChatGPTに代表される生成AIの実用化によって、そうしたダイレクトチャネルにおける顧客接点におけるパーソナライゼーションが進展するものと考えられる。
2023年の段階では、多くの金融機関は生成AIのおかす「ハルシネーション(幻覚)」による間違いやプライバシーの問題を認識しており、対顧業務ですぐに利用することに慎重な姿勢をみせている。
とはいえ、専用の利用環境を設定し、学習データを限定することによってそうした問題は解消されるものと考えられている。このため2024年以降には、ネットやモバイルでの問合せ対応、コンタクトセンターでの一次対応、資産運用に関する顧客へのレコメンデーション、といった領域での利用に期待がされ、各顧客の状況に応じて最適化された対応がシステム的に実現していくものと予想される。
さらに、その他のフィンテックソリューションに生成AIが組み込まれることでユーザーに提供できる価値の向上も期待できることから、2024年にはアイデアの勝負となってこよう。
リテール証券の変化
ネット証券の手数料引き下げ競争は最終段階に到達、2023年9月にはSBI証券、10月には楽天証券が無料となるメニューを導入した。口座数や利益水準で優位に立つ上位2社に対して、他の大手(マネックス、カブコム、松井)は慎重な姿勢をみせているが、手数料による競争に終止符が打たれたといっても過言ではない。
米国においては2019年の手数料無料化後にTDアメリトレードがチャールズ・シュワブに、イー・トレードがモルガン・スタンレーにそれぞれ買収されるという大型再編が起きているが、日本でも2023年は再編の報道が相次いだ。
2022年
SMBCがSBI証券に出資したのに続き、2023年2月には
リテールデジタル金融分野での業務提携を発表、10月に
NTTドコモによるマネックスへの出資、
楽天証券へのみずほFGの出資と再編の動きが顕在化した。2024年以降は残された独立系の松井証券の去就が注目される。
また、2024年のリテール証券においては、
新NISAの導入によって増加が予想される証券投資の吸収が大きなポイントとなる。既存証券会社間の競争に加えて、フィンテック企業にとっても、各種資産運用メニューの提供、資産管理の高度化や金融リテラシー向上に役立つ機能で参入するチャンスが生まれるものと思われる。
相続対応及びシニア向けサービスのデジタル化
日本における高齢化の進展とともに、死亡者数は増加傾向にあり、今後もこの傾向は続くことが予想される。それとともに
相続案件数・相続税支払額の増加傾向にあり、当面この傾向は変わらないものと考えられる。
さらに、所有者不明土地の発生予防のために2024年4月に施行される不動産登記制度の改正によって、相続により(遺言による場合を含む)不動産を取得した相続人は、相続による所有権取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならないことになる。
不動産登記に加えてデジタル資産の増加、認知症のリスクもあり、相続手続きの効率化を求める声は多く、デジタル庁において
デジタル化の検討が進められている。さらに、手続き効率化につながるサービス(例:
いい相続)や、
KAERUのように認知症対策を提供するフィンテック企業の参入も今後増加することが予想される。
【次ページ】生成AI実装は何を変える? 「デジタル通貨 」「デジタル証券」も変革
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