- 2006/11/28 掲載
【岡部敬史氏インタビュー】殺人事件2.0!? ミステリー小説でネットの潮流を読み解く
Web2.0殺人事件
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岡部敬史(以下、岡部)■ Web2.0というのは、いまのインターネットの潮流なんですけど、そこで僕が感じるのは、いざWeb2.0の話になると、インフラの話ばかりに注目が集まっていて、そこで何が起こっているのかが抜け落ちている場合が多い気がするんです。
Web2.0が意味することは、「インターネットに詳しくない人も、誰でも手軽に発信することができるようになった」というのが大元にあると思うんですけど、逆に「Web2.0」という言葉がわかりにくいので、「そもそもインターネットがわからない」という人が、ますます入って来づらくなっているのではないかと。
なので、小説というかたちで気軽に読んでもらうことによって、理系的な知識を持っている人だけじゃなくて、本当にものが書きたい人、文系的な資質を持っている人がWeb2.0で発信できるようになったんだよ、ということが、もっと伝わればいいなと思うんです。
――書店で、最初は小説の棚にあるのかと思ってこの本を探したのですが、コンピュータ書の棚にありました。
岡部■ ミステリーの棚に置いてある店もあるし、サブカルチャーの棚に置くところもあります。書店のいろんなところにある。そういうのも、ある意味Web2.0的かもしれません(笑)。
岡部敬史氏
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――Web2.0を題材に、あえてミステリーと組み合わされたのはなぜですか。
岡部■ 最初にタイトルだけ思いついたんですよ。書店の「Web2.0コーナー」を見てたときに、ここに『Web2.0殺人事件』ってタイトルの本があったら面白いだろうなって思って。
それからストーリーを考えたんですが、下地にしたというか参考にしたのは、西村京太郎さんのトラベルミステリーです。あれは、時刻表が事件のカギになってますが、この本では、「ミクシィ」「教えて!goo」「ブログ」「はてなブックマーク」「レストランの口コミサイト」「YouTube」などといった「Web2.0系サービス」がカギになっていればいいのかな、と。
――探偵役がインターネットに詳しい小学生の男の子で、まだ若い未亡人の母親がいて、母親の喫茶店の常連客がいて……というキャラクター設定はどのようにして決められたのでしょうか。ネット絡みの犯罪ものだと、「天才ハッカーが事件を解決!」となりそうなものですけど、そういう人物はまったく出てこないですよね。
岡部■ 「Web2.0って、そんなに難しいものじゃないよ」というのを読者に伝えるには、それを子どもが話すというのがいいと思ったんです。で、説明をする相手が必要なので、ボケ役をしながら聞く相手としてお母さんを出しました。そして、依頼人として常連客がいる、という感じですね。お父さんがいないのは、いると話がややこしくなるからです(笑)。
――男の子が母親や常連客たちと会話しながら、ネット絡みのちょっとした事件の謎を解いていくという、ほのぼのとした内容だなあと思って、最初はニコニコしながら読んでいたんです。 でも、最終章のあの展開には驚かされました。しかも、逆にネットでは絶対に伝えることができない情報が最後の決め手になっているという……あっ、これ以上言うと、ネタばらしになってしまいますね。
岡部■ 最終章は、最初から考えていたわけではないんですけどね。執筆の最後の方で、あの結末が決まったとき、バラバラだったすべてのエピソードが、音を立ててカッチリとあるべき場所に収まった、という感じです。小説は昔から趣味では書いていたんですけど、ミステリーにWeb2.0を絡めるというのは初めての試みなので、手探りしながら書きました。
他には「Wikipedia」なんかも登場させたいと思ったんですけど、あまりいい話が思いつかなくて……。また新しい技術やサービスが出てくれば、ネタも増えて、続編なんかも考えられると思うんですけどね。
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