「KIOXIA SSDフォーラム2020」レポート 茂木健一郎氏も雄弁「今は人の変革期」
AI時代に世界を変えるのは“記憶”?
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データの意義は「過去の記録」から「未来の予測」へ
今では、さまざまなビジネス領域でAIが活用されその期待値も高まっているが、AIを活用するにあたって欠かせないものがデータだ。1990年代以降にインターネットが普及して、現在は有線から無線通信への切り替えが進んでいる。また、日常生活に欠かせない存在となったスマートフォンの普及で個人ユーザー向けの多彩なアプリケーションやネットビジネスが数多く登場している。さらに、世界規模のクラウドサービスによって、あらゆるモノがネットにつながる世界が確立された。「インターネット、特に無線通信によって、私たちは時と空間からの制約から解き放たれています。この社会こそ、まさにデジタルトランスフォーメーション(DX)の姿だと思っています。DXの実現には、フラッシュや半導体ストレージ、それらをコントロールするSSDの技術が大きく貢献していると確信しています」と語るのは、キオクシアの常務執行役員 SSD事業部長である横塚 賢志氏だ。
ネットにつながるデバイスは450億台に増加し、2020年春には国内でも次世代無線通信規格「5G」の商用サービスが開始される。横塚氏は「日常生活やビジネス、社会が変化してデータ量が今後も増大する中、フラッシュメモリ、そしてSSD製品はさらに求められることになります」との見解を示した。
同氏によると、これまでデジタルデータは「過去の振り返り」のための「活動の記録」として保存されることが多かったという。今後は、過去の記録をAIやML(マシンラーニング)技術で解析し、「未来の予測」のために使われると予測する。
「“過去の振り返り”から“未来との対峙”という、データの意義の大きな変化がDXの根底にあると考えています」(横塚氏)
DXをさらに加速するために求められるフラッシュメモリとは、どのようなものだろうか。同氏は「活動の記録という観点では、インテリジェントな社会インフラによってデータ資源が収集されるようになる“More Data”の要求を、未来の予測という観点では、CPU/GPUの高速化による革新的なITシステムが登場し、より高速なデータ解析が求められる“More Performance”の要求を満たす必要があります」と説明した。
More Dataでは、「高密度」「省電力」「高低温対応」「仮想化対応」というフラッシュの4つの特性を進化させることで、自動車やドローン、VR、常設カメラなど応用分野がさらに広がり、インテリジェントな社会インフラの基盤を支えることにつなげるという。
また、More Performanceでは、フラッシュの「高速」「省電力」「仮想化対応」「セキュリティ」という4つの特性を生かして、深層・強化学習、超高速取引、遠隔操作などが広がり、大規模クラウドがそれらを支えることに貢献するという。
最後に、横塚氏は「情報が生まれた瞬間の経験、感情、考え方までを記憶として捉えて、「記憶」で世界をおもしろくする、を当社のミッションとして、記憶の可能性を追求し、新しい価値を創り出す企業を目指します」との方針を語った。
茂木健一郎氏が語る、AI時代へ必要な脳内変革
AI(人工知能)時代が到来し、産業構造や仕事はもちろん、暮らしまでが変わろうとしている。ビジネスパーソンにとっての大きな関心は、仕事の在り方であろう。考えを突き詰めると、「自分の仕事はなくなるのか?」「自分は何をすればAIに勝てるのか?」というような自問自答に行き当たるだろう。脳科学者の茂木健一郎氏が「AI時代へ必要な脳内変革」をテーマに登壇。AI時代の到来で、ヒトがヒトとしての変革すべき意識や磨くべき能力の在り方につき、脳科学の視点から紹介した。
現在は、ヒトがヒトとしての存在や力について思い悩み始めた、まさにAI時代の幕開けといえる。茂木氏は、脳科学の視点から変革すべき意識や磨くべき能力について解き明かした。
ハイブリッドクラウド時代のコンピューティングシステムの在り方
Dell Technologiesの上原 宏氏は「記憶革命2020を支える最新コンピューティングのダイナミズム」と題した講演を行った。まず上原氏は、2020年に予測される国内IT市場の主要トレンド10項目について触れ、その中にある「クラウドの変化」について言及した。上原氏は、「企業システムにクラウドが普及するにつれ、クラウドの複雑化がシステムのサイロ化を生み出しています」と指摘した。
その上で「ハイブリッドクラウドをきちんと定義する必要があります」と語り、一貫性のある運用管理の手法を用いること、ワークロードの移行容易性、既存のスキルとプロセスの有効活用、一貫性のあるセキュリティポリシーなどを実現する、いわゆる包括的なハイブリッドクラウドを検討する時期を迎えていると説明した。
次に、クラウドネイティブ時代のITプラットフォームの形として、マイクロサービスの利用による「アプリケーション構造の変化」、コンテナ技術の登場による「プラットフォームの変化」などが起きている現状を解説した。
「他社に先駆けて新サービスを迅速にリリースするためには、マイクロサービスを有効活用して開発とリリースのスピードを上げ、クラウド・データセンター間の可搬性を向上させることが求められています。仮想化技術に加えてコンテナ化技術が活用されつつあります」(上原氏)
さらに、今後は「アクセラレーテッドコンピューティング」の成長に期待していると述べた。上原氏によると、「アクセラレーテッドコンピューティングとは、CPUが担ってきた処理の一部を隣接するシリコンサブシステムへ委譲することで、アプリケーションやワークロードを高速化する手法」のことだという。
それを実現する要素として、半導体の進化を上げた。複雑な処理は得意だが、逐次処理となるCPU、大容量の並列処理が可能なGPU、プログラム可能な専用集積回路であるFPGA、AI/機械学習専用プロセッサであるIPUなどの進化が著しいという。
特に、コンピューティングの世界では、SSD、SCMなどさまざまな技術が進んでおり、サーバー内部のスピード差を埋める「記憶革命」が始まっているという。
「さまざまなデバイスの実効速度の間を埋める技術が今後さらに進みます。当社としては、最新のデータセンターに求められる機能が搭載されている『Dell EMC PowerEdge サーバー』に、こうした最新技術を搭載していく予定です」と語った。
SSD製品の開発秘話
最後に、キオクシアのSSD事業部 技師長(SSD)の柳 茂知氏が登壇。「キオクシアSSDの『カタチ』」と題して、同社が取り組むSSD製品の開発秘話を明かした。現在、キオクシアでは、クライアント/データセンター/エンタープライズの3領域において、顧客のニーズや特性に応じたSSD製品の設計・開発・提供を進めている。エンタープライズSAS SSDは2013年から提供開始し、2018年には市場シェアの30%以上を占めるまでに成長している。
同氏によると、キオクシアのSSD開発ビジョンは「インターフェース技術で先行する 」「最高の性能・機能を目指す」「コスト・品質・TTM(Time to Market)」の3点であり、これらはストレージ製品の普遍的法則であるとのこと。中でも「コントローラとファームウェアが製品差別化のカギを握ります」と強調する。
その上で「SSD製品の競争力を左右する要素技術は短期間には獲得できません」と語り、製品コンセプトが確定してから製品が実際にリリースするまでの3、4年先の未来では顧客や市場のニーズなどの変化が起きていると説明する。
そのため、同社では製品ライフサイクル中(リリース後5年間)の市場・技術を予測するなど、製品リリースまで実装仕様の変更・修正の検証プロセスを定期的に回すという「イタレーションサイクル」を実施していると明かした。
柳氏は「変化に追従する側ではなく、変化を起こす側にいるためには、キオクシア単独では実現できません。顧客や市場との絶え間ないコミュニケーションが必要不可欠です」と語った。
パートナー企業とは、市場・技術課題、ロードマップを相互共有して共同で新技術開発を実施し、OEM提携企業とは、新規市場の創造や技術・製品コンセプト提案などを行い、そこから生まれた製品によって、ITの現場に革新的なイノベーションをもたらしていくという。
「キオクシアと一緒に“ミライのカタチ造り”をリードしませんか」と呼びかけて、講演を締めくくった。