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マシュマロチャレンジが経営者や経営者に示唆すること
清水氏:水嶋さんは「マシュマロチャレンジ」というチーム・ビルディングの演習をご存知ですか? 20本のスパゲッティの乾麺と、90cmのテープ、1個のマシュマロを使い、18分間という時間内に、できるだけ高い自立式の塔を建て、頂上にマシュマロをのせる競技です。多くのチーム(MBAの学生、建築家、幼稚園児、CEO、CEO+アドミニストレーター)で競い合いあった結果、非常に面白いことが分かりました*1。なんとMBAの学生チームやCEOよりも、幼稚園児のほうが良い結果を残したのです。彼らの塔は単に高いだけでなく、一番ユニークなものでした。水嶋氏:なぜ、そういう結果になってしまったのでしょうか?
清水氏:スパゲッティで塔を建てるなど、誰もやったことはありません。そこで、ほとんどのチームでは、どのような方法がよいのか、いろいろ議論を重ねることから始めます。そして最後の1~2分頃になって、ようやく塔を建て始めるわけですが、時間寸前で塔が倒れて、そこで終了になってしまう。ところが幼稚園児の場合は、とにかく最初から塔をつくり始めて、途中で塔が倒れたら、また違う形で組み立てるのです。結果として高くてユニークなものが完成するそうです。
水嶋氏:これは経営者にとって、とても示唆に富んだ内容が含まれていますね。
水嶋氏:なるほど。シリコンバレーではスタートアップ企業が多くあります。しかし一生懸命に計画を立案しても、なかなかヒットに結び付かないという話を聞きます。
清水氏:先ほどのマシュマロチャレンジのように、まず小さく事業を始め、マーケットからフィードバックを得て、学びながら良いものに修正することで、事業を大きく育てるというスタンス、すなわち「リーン・スタートアップ」*2のアプローチが、今の経営者、起業家に求められていると思います。実行して初めて分かることも多いため、とにかくやってみることが大切なのです。
企業に足りないのは「C」と「A」
水嶋氏:しかし、リーン・スタートアップにチャレンジする人は、まだそれほど多いとは思いません。それは一体なぜでしょうか?清水氏:一番大きな理由は、フォローアップがうまくできないということです。いろいろな企業に話を聞くと、PDCAサイクルのうち「C」(Check)と「A」(Action)の部分が足りない企業が多いことに気づきます。
水嶋氏:たしかにチェックするためのモニタリングやレポーティングといったプロセスが軽視されがちですね。それができなければアクションにも結び付きません。どちらかというとビッグアイデアが主体で、そのアイデアさえ良ければ、あとは事業も上手くいくと考える方が多いように思います。
清水氏:企業がリーン・スタートアップに二の足を踏むのは、どういうときにフォローすべきか分からないからです。どのように修正すべきか、その経験も足りません。
水嶋氏:ともすると、当たるか外れるかという二元論になりがちです。失敗から学ぶといっても日本のビジネスカルチャーでは、失敗したら怖がって二度とチャレンジしないケースも多いのではないでしょうか。
清水氏:そうかと思うと、失敗の原因がよくわからないまま、また数年後に同じ過ちを繰り返すケースも散見します。こういった失敗は、部門間のコミュニケーションがうまく取れていないことにも原因があります。大企業では組織をまたいで通用する「共通言語」を持ちにくく、組織間でうまく話がかみ合わないことがあります。営業部門と製造部門では、同じ言葉1つとっても意味合いが違ってくるのです。
1つのプラットフォームで情報を共有し、組織の共通言語を作る
清水氏:最近よくあるケースでは、買収による組織間の問題が挙げられます。それぞれの企業が持つメリットを活かし、シナジーを利かそうとしていますが、異なる文化の企業では、なかなかコミュニケーションが取れないという悩みがあります。この場合は、まず情報、データを共有することで共通言語を作ることが重要です。また、数字さえ共有していればよいということでなく、その数字を使って自分はどういうことをやりたいのか、その点をしっかり認識する必要があります。数字は必要条件です。ビジョンができているとか、定性的な部分は十分条件になります。この2つをうまく組み合せることが大切なポイントです。
ただし企業によっては、いくらITサービスを導入しても文化的な背景が影響し、部門間で意見を調整できない場合もあります。やはり経営者が「今後はこの方針で行く」と、トップダウンで強力なリーダーシップを発揮しないと難しい面もあるようです。
経営会議が単なる報告会になっていないか?
清水氏:意思決定という話題では、何かを決定した後に、その結果が分かり、どう対処すべきかという点も求められます。ところが経営会議でも、過去の議事録がすぐに出てこないという基本的な問題も多いようです。実際に何かあった時、すぐに振り返り、対処できる企業が少ないのです。水嶋氏:我々は「不要な会議はやめましょう」というメッセージを打ち出しています。事前に部門間で情報を共有し、コンセンサスを得た上で、実りある会議をしていくべき、というスタンスです。今の経営会議や部門会議は単なる報告会になっている場合が多いと思いますが、アクションプランやブレーンストーミングなど、もっと前向きなことに力を入れる必要があります。
清水氏:このほかにも多くの課題があります。たとえば似たようなデータの要求に対して、フォーマットが微妙に違っているため、現場での対応にかなり時間を取られてしまうという悩みを聞きます。御社のような情報を一元管理するITサービスを導入すれば、そういう悩みも解消されるかもしれませんね。
水嶋氏:そうですね。ワールドワイドで事業を展開する国内企業では、我々のサービス「Domo」を導入して、データの取り込みを自動化し、各事業部門から経営層に提出する日報をまとめているケースもあります。
データの置き場所が複雑化する時代、求められるデータに必要なときアクセスするには
清水氏:今、大企業でもシステムの問題が深刻化していると感じます。従来のシステムに対し、建て増しで騙し騙しシステムを拡張してきたため、かなり複雑なものになって、もう手がつけられない状態になっています。水嶋氏:そういったシステムのデータを統合するにしても、どんなデータがあるのか、その棚卸から始まり、データをうまく収める箱(DWH)の設計と構築をしなければなりません。それらが終わって、ようやくBIが始められます。大企業のシステム構築では、2年ぐらいの時間が取られてしまいます。
清水氏:利用データや業務システムが変化しない時代ならば、それでも対応できたかもしれません。しかし、今はインターネットやクラウドの時代です。非常に変化が激しく、業務クラウドやマーケティング・オートメーションなどのサービスも登場しています。
水嶋氏:そうなると、従来のように最初からDWHを設計して、全体データを収めることは現実的ではありません。データを1つのDWHに収めるアプローチよりも、業務の実施や意思決定に必要な指標を知るために、データを選択的に取りに行く方法のほうが、迅速な対応が可能になります。我々のサービスは、このアプローチを採用しています。データ接続に関しては350以上のコネクターを独自開発しており、システム間連携も容易に行えます。
清水氏:メインフレームのようなレガシーシステムにも対応できますか?
水嶋氏:はい。企業システムで利用されているデータのほとんどを取り込めます。レガシーシステムに加え、Salesforce.comのようなクラウドアプリケーションのデータ、TwitterやFacebookなどのソーシャルな外部データまで取り込むことができます。
清水氏:かなりフレキシビリティが高いサービスですね。たとえば、現在このデータが重要だから集めておき、状況が変わって違うデータが必要になったら、そちらのデータも付け加えられるわけですね。
水嶋氏:そうです。後発という利も活かして、最初からインターネット時代に即したデータの取り込みを意識して設計しているため、格段にフレキシビリティが高いのです。
清水氏:クラウドサービスが伸びている中、これまでシステムを整備してきた企業でも、データが多すぎて一体どうしたらよいのか分からない状況です。「More is better」も大事ですが、本当に求められるデータを厳選し、必要なときにアクセスできることが大切です。フレキシビリティの高いサービスを使って、どういうデータが求められているのかを知った上で、従来の仕事のやり方や意志決定の方法を問い直す時代が来ていると思います。
本対談に登場した慶應義塾大学の清水教授とDomoの水嶋氏は、9月2日に開催されるDomo主催のセミナーにも登壇予定だ。当日は、Domoの詳しい製品紹介や事例企業による講演なども行われる。ご興味のある方は、ぜひセミナーに参加してほしい。