- 2024/12/16 掲載
労務費の転嫁は進展も、サービス発注者への価格転嫁は途上=公取委
Takahiko Wada
[東京 16日 ロイター] - 公正取引委員会は16日、2024年度の価格転嫁円滑化の取り組みに関する特別調査の結果を公表した。労務費の価格転嫁に向けた協議が多くの取引で行われ転嫁率は前年度より大幅に上昇したが、サービス業では価格転嫁が進んでいるのは元請けや下請け間にとどまり、価格転嫁の「源流」に当たる、サービスを発注した企業への転嫁は十分でない可能性が明らかになった。
調査結果によると、労務費について全ての商品・サービスで価格協議をした割合は59.8%、一部協議した分を含めると68.0%に上った。転嫁率は前年度調査の45.1%から62.4%に大幅に上昇し、原材料価格の69.5%、エネルギーコストの65.9%に迫った。
ただ、公取委の優越的地位濫用未然防止対策調査室の大泉智彦室長は「労務費に関してはまだ社内の努力で頑張るようにといった声もあり、他のコストともう少し近づくようになればいいのではないか」と話す。転嫁率は、受注者が発注者に要請した額が実際の労務費上昇分を乗せたものではなく、発注者が受け入れ可能と思われる水準にあらかじめ抑えた額になっている可能性があるという。
サプライチェーンの各段階の状況をみると、価格転嫁を要請した商品・サービスの7割以上で、認められた割合が前年度より上昇した。ただ、サービス業では、価格転嫁が認められた割合は元請けから一次─三次受注者のそれぞれの間では15ポイント以上上昇したのに対し、発注者とサービス提供業者の間での割合は7.6ポイントの上昇にとどまり、発注元への価格転嫁が十分に進んでいない可能性が明らかになった。回答した業者からは「事業者からの発注価格が上がらない限り、取引先受注者に対する発注価格を引き上げることはない」との声があった。
公取委と内閣官房が昨年11月に策定し公表した「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」の認知度は48.8%で、指針を知っている事業者の方が価格交渉で労務費の上昇を理由とする取引価格の引き上げを行った割合が高かった。ただ、この調査の実施は24年5月までで、認知度が低く出た可能性がある。
今回の特別調査は、23年6月から24年5月にかけて事業者11万社を対象とした通常調査、23年度調査における注意喚起対象8175社や23年度に事業者名を公表した10社へのフォローアップ調査などで構成。労務費転嫁交渉指針を知っていたと回答した発注者のうち、同指針に沿った行動をしていなかった9388社には注意喚起文書を送付した。
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