- 2024/09/26 掲載
解雇規制見直しに波紋=「首にしやすく」懸念広がる―自民総裁選
自民党総裁選では、労働市場改革の一環として解雇規制の見直しが争点となっている。小泉進次郎元環境相は、企業が従業員を解雇する際、満たさなければいけないとされる「整理解雇の4要件」の見直しを提起。河野太郎デジタル相も、解雇に対する金銭補償の導入を掲げるが、「企業が首にしやすくなる」との懸念も広がる。
企業側が労働契約を解除して整理解雇に踏み切る場合、人員削減の必要性や解雇の回避努力といった4要件を考慮することが必要とされる。小泉氏は転職市場が活発化する中、「企業にリスキリング(学び直し)や再就職支援を義務付ける」ことで、成長産業に労働力が移動しやすくなると主張。財界からは「人が動き始めた今、解雇法制的なものをどう考えるかは『あり』だ」(経済同友会の新浪剛史代表幹事)と期待の声が上がる。
これに対し、高市早苗経済安全保障担当相は「4要件は判例が積み上がって確立された。短い期間の議論で立法し、判例を覆すのは容易ではない」と指摘。小林鷹之前経済安保担当相も「働く人を不安にさせ、格差を固定しかねない」と批判する。立憲民主党の野田佳彦代表は代表選で、「解雇規制と労働市場の流動化に相関性はない」と主張した。
河野氏は、中小企業の労働者が解雇時に十分な補償を受けられない現状があるとして、「金銭解決のルールの明確化」を掲げる。昭和女子大の八代尚宏特命教授は、導入されればスキルや経験が豊富な中高年の転職が広がるほか、非正規社員から先に解雇されるなどの不平等な状況も改善し、「(労働市場が)公正な姿になる」とみる。
ただ、金銭解決は2015年、政府の成長戦略に盛り込まれたものの、具体的な結論は出ず、法制化の動きも進んでいない。厚生労働省の検討会では、金銭補償の水準設定に関し、労働組合側だけでなく中小企業の経営者側も懸念を示した。早稲田大の水町勇一郎教授は「労働者にとって優しい制度設計になっても、企業によっては安易に解雇できると誤解する可能性がある」と話している。
【時事通信社】
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