• 2024/09/20 掲載

焦点:FRB大幅緩和で注目のECB、10月利下げ予想はまだ本命視されず

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[フランクフルト 19日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)の連邦公開市場委員会(FOMC)が18日に大幅利下げを決めたことで、欧州中央銀行(ECB)が10月に追加利下げを行うとの観測が以前より高まった。ただ、欧米の経済情勢は異なるため、10月は金利据え置きシナリオの方がまだ優勢だ。

ECBは6月と今月の2回にわたって利下げを実施。ECB幹部の多くは、インフレを持続的に抑え込むため四半期ごとの段階的なペースで利下げを続けることを示唆している。

FRBが景気下支えのために利下げ幅を0.25%ではなく0.5%としたことは、ユーロ圏の景気後退リスクを前にECBの金融政策が後手に回っている、との言い分にいくらか加勢するものだ。ただ経済ファンタメンタルズが一夜にして変わったわけではないため、ECBのタカ派理事は12月まで追加利下げを待つべきだと主張することができる。

ナティクシスのエコノミスト、ディルク・シューマッハー氏は「FRBの金融政策ゆえにECBが10月に利下げする必要がある、というのは馬鹿げた主張であり、ECB理事会では通用しない」と一蹴。「FRBの利下げによってユーロ圏の経済データが変わるから、という理由なら分かるし、事実その通りかもしれないが、まだそれは確認できていない」と語った。

金融市場にも、こうした見方は反映されている。市場の織り込み度合いを見ると、ECBが10月に中銀預金金利を0.25%幅引き下げる確率は現在35%で、1日前(FRBの利下げ前)の30%から小幅に上昇している。見逃せない変化幅ではあるが、ECBの追加利下げ時期として最も確率が高いのは12月だ。

ECBはFRBに比べて必要な利下げの度合いが少ないため、ゆっくりと事を進めることができるだろう。

さまざまな推計によると、ECBの「中立」金利は2.0ないし2.25%前後で、そこに到達するには0.25%幅の利下げをあと5、6回実施する必要がある。

これに対してFRBは中立金利に到達するのに0.25%幅の利下げをおそらく8回行うことになる。

加えて、欧米間にはファンダメンタルズの違いがある。

ユーロ圏のインフレ率は現在2.2%で、年末にかけて2.5%に上昇した後、来年最後の数週間までの間にゆっくりと2%へと鈍化する可能性がある。インフレ鈍化のスピードが遅いのは、根強い賃金上昇圧力がサービスコストを押し上げているからだ。

ECBのタカ派理事らが急スピードの利下げに慎重なのは、このためだ。ECB理事会メンバーのカジミール・スロバキア中銀総裁は既に10月利下げに否定的な考えを示しており、シュナーベル専務理事と理事会メンバーのクノット・オランダ中銀総裁は過去に、四半期ごとの利下げが最新の経済見通しと整合的だと主張している。

理事会メンバーのナーゲル・ドイツ連銀総裁は18日に「インフレ率は望ましい水準になっていない」と述べた。

ECB理事会ではタカ派メンバーが多数派を維持しているとみられる。FRBの大幅利下げ後も市場がECBの利下げ見通しを大きく変えていないのはこのためだ。

INGのフランチェスコ・ペゾーレ氏は「つまるところ、タカ派の声が大きいゆえに、FRBによるハト派的な影響があっても市場はECBの利下げ積極化を織り込むのを渋るはずだ」と語った。

タカ派理事らは、賃金上昇圧力が強過ぎて、すぐに和らぐことはないと主張している。

第2・四半期のユーロ圏の労働コスト上昇率は4.7%と、ECBの物価目標と整合的だと考えられる3%を大幅に超えた。労働組合は、実質所得の減少を補う大幅な賃上げを要求し続けている。

また、10月17日の次回ECB理事会までには、重要な経済指標がわずかしか発表されない。

<ハト派>

とはいえ、欧州南部出身者を中心とするハト派理事は、より急スピードの利下げを唱え続けている。

センテノ・ポルトガル中銀総裁は、経済成長見通しが急速に悪化しているため、ECBが素早く動かないとインフレ率が物価目標を下回りかねないと主張。米メディア、ポリティコに対し「物価下振れのリスクを最小化することが是非とも必要だ。それが最大のリスクだからだ」と語った。

ハト派の主張は、経済成長が息切れし、鉱工業は景気後退に陥っており、消費は弱く、人々はおそらく景気悪化への不安から貯蓄を増やしているというもの。これらは全てデフレにつながり得る要因だ。

ハト派理事らはまた、インフレ率は9月に物価目標の地点まで鈍化するだろうと指摘。その後数カ月間で再び上昇するにせよ、特にエネルギー価格が落ち着いている以上、野放図なインフレは退治できたと訴えている。

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