- 2024/08/28 掲載
高い緊張感で市場注視、見通し実現の確度高まれば緩和度調整=氷見野日銀副総裁
Takahiko Wada
[甲府市 28日 ロイター] - 日銀の氷見野良三副総裁は28日、金融資本市場に関して引き続き不安定な状況にあり、当面はその動向を極めて高い緊張感を持って注視していく必要があると述べた。その上で、市場動向がもたらす影響や7月の利上げの影響を見極めつつ「経済・物価の見通しが実現する確度が高まっていくということであれば、金融緩和の度合いを調整していくというのが基本的な姿勢だ」と語った。
山梨県甲府市で開いた金融経済懇談会であいさつした。金融市場の動揺を受けた金融政策運営のあり方について、氷見野副総裁の発言は23日に植田和男総裁が衆参両院の閉会中審査で示したスタンスに沿ったものとなった。
氷見野副総裁は内外の金融資本市場の動向が、経済・物価の見通しやリスク、見通しが実現する確度に及ぼす影響をしっかり見極めていくとも述べた。
<海外の投資ファンド経由のリスク波及に警戒>
氷見野副総裁は、経済・物価見通しについて、来年度・再来年度は「物価安定の目標に即したインフレ率、巡航速度を少し上回る程度の成長という、バランスの良い状態をメインシナリオと考えている」と述べた。
日銀が目指す賃金と物価の好循環を巡る先行きの焦点として、海外経済のほか、国内については賃上げの持続性、消費、最近の円高・株安の影響の3点を指摘。
このうち、足元の円安修正に関しては「輸入物価を通じた物価の上振れリスクがその分小さくなり、ひいては家計消費の先行きにもプラスに働き得るかもしれない」としたほか、多くの中小企業にとっては、円安に伴うコスト上昇圧力が「いくらか和らぐ面があるのではないか」と話した。
株価の動向については、心理的な影響にも注意が必要だが「自己変革を重ねてきた日本企業の強みは依然健在であり、相場の目先の動きに見方を左右されすぎないことが大切だ」と語った。
銀行の保有株式はかなり減ってきており、「現時点では全体としてみれば健全性に大きく影響が及ぶとはみていない」と指摘した。ただ、株高・円安が持続するとの「目算」が外れる格好となった海外の投資ファンドを経由してリスクが波及してこないかなど、よくモニターしていきたいと話した。
<多角的レビュー、年内めどに取りまとめ公表へ>
先行きの金融政策運営に絡み、氷見野副総裁は中立金利に言及した。中立金利の推計はどの推計方法を使っても幅を持ったものになり、用いる手法によって結果が違うため「特定の数字をピンポイントで正解と言えるわけではない」と指摘。少なくとも当面の日本の政策運営を巡っては「中立金利の議論からそのまま当面の進め方の答えが出るというわけにはいかないように思う」と語った。
昨年4月から取り組んできた金融政策の多角的レビューに関しては、日銀のスタッフや国内外の研究者の実証分析では「各種の非伝統的な政策は景気や物価に対して一定の効果を有した、というのがおおむね共通した結果だ」と話した。その上で、年内をめどに全体を取りまとめた結果を公表したいと明らかにした。
ただ、なお研究が必要な論点として、強力な金融緩和が生産性にもたらす影響や非伝統的な金融政策の波及経路を挙げた。
非伝統的政策の波及経路については、貸出増加の太宗を不動産関連が占めたことは地価の安定やマンション価格の上昇と密接な関係があったことが推測されるとして「株価や為替相場や不動産価格といった資産価格の変動による経路の役割もそれなりに大きかったらしいことがうかがわれる」と指摘した。
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