- 2024/08/27 掲載
アングル:景気軟着陸維持なら利下げで米株支援へ、今後の指標で見極め
[26日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)の利下げ開始が確実な情勢になったことから、投資家は今年の米国株を押し上げた「ソフトランディング(軟着陸)」シナリオが持続するかを見極めるため、今後数カ月の経済データに一段と注目している。
FRBのパウエル議長は23日、年次経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」で、インフレが2%目標に向かいつつあり、政策を調整する「時期が来た」と述べ、9月の利下げ開始を示唆した。
このような発言でも「警戒解除」シグナルとはとても言えないようだ。インベスコ・ソリューションズのシニアポートフォリオマネジャー兼投資責任者のアレッシオ・デロンギス氏は「市場が求めていたのは、利下げサイクルが始まったという知らせだった」と話す。「FRBは実際に今、経済を心配していると言っているのだろうか。もしそうだとしたら、利下げサイクルに対する期待感も別の観点で見るべきだ」と述べた。市場参加者は、米経済が軟着陸に向かっているという証拠を継続的に確認しなければならない。
歴史を振り返ると、利下げがどのような状況で行われたかで、株価の動きは異なる。利下げが底固い成長を背景に実施された場合、急激な景気後退局面下より株価パフォーマンスがはるかに良い傾向がある。エバーコアISIのストラテジストによると、S&P総合500種指数は1970年以降、景気後退局面ではない局面の利下げ開始後の1年間では平均18%上昇しているのに対し、景気後退期の場合はわずか2%にとどまった。
パウエル議長は講演で「労働市場のさらなる減速を目指しておらず、歓迎もしない」と述べた。8月初めに発表された7月の雇用統計が弱かっただけに、9月6日発表の雇用統計が注目される。
今後予定される重要指標は、8月30日の個人消費支出(PCE)価格指数や9月11日の消費者物価指数(CPI)などがある。
景気減速の兆候が強まれば、再び株価が動揺し、9月の50ベーシスポイント(bp)利下げ期待が高まる可能性がある。先物市場のデータによると、50bp利下げの織り込み度は23日午後時点で約35%と、パウエル氏の講演前の約29%から上昇した。
ブラックロックのグローバル債券最高投資責任者リック・リーダー氏は23日付のメモで「経済が特に弱くない(そしてインフレが依然として目標を上回っている)中で、FRBは金融緩和を行うことになり、経済が急激に弱くなればそれに応じて大幅に金融緩和する可能性がある」と述べた。
LPLファイナンシャルのチーフグローバルストラテジスト、クインシー・クロスビー氏によれば、株価にとって重要な要因は利下げの理由。インフレが鈍化しているから利下げするのか、それとも労働市場に弱さが見られるからなのか、だという。
「市場が望むのは、インフレ鈍化を理由にした利下げサイクル入りだ。労働市場がさらなる悪化するかどうかは依然疑問だ」と述べた。
9月は歴史的に株価パフォーマンスが最も弱い月で、CFRAのデータによるとS&P500は第2次世界大戦以降、平均0.78%下落している。不安定な動きが予想される中で良好なデータが出れば、相場押し上げ効果が見込まれる。
一方で割高感から悪材料が出た際に投資家の保有意欲を低下させかねない。LSEGデータストリームによると、S&P500の予想株価収益率(PER)は8月初めの19.6倍から21倍に上昇し、長期平均の15.7倍を大きく上回る。
加えて、11月の米大統領選に向けたハリス副大統領とトランプ前大統領の激しい戦いも不確実性の要因となる。
インジニアム・アナリティクスのマネジングメンバー、アンドレ・バコス氏は「株式市場の長期的なトレンドは極めて安定しており、下げ局面はエクスポージャーを増やすチャンスだ」と指摘。しかし短期的には「パウエル議長が手の内を見せた今、何が起こるか誰にも分からない」と述べ、不安定で波乱含みな展開になると予想した。
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