- 2024/08/16 掲載
アングル:市場の波乱、秋も継続か 投資家は「余震」警戒
[ロンドン 15日 ロイター] - 大手機関投資家は、最近の世界的な株式市場の波乱が秋に入っても続き、幅広い売りが押し寄せるのではないかと警戒している。
米国の景気後退懸念と日銀の利上げをきっかけとした円キャリートレードの巻き戻しは一服し、今週は世界的に株価が反発している。
しかし総額数千億ドルを運用する資産運用会社の幹部らは、押し目買いに入るより売りを続ける可能性が高いと話す。米国の労働市場が軟調なことと、世界的な個人消費の基調を踏まえれば、市場に「余震」が起こる確率が高まったとみているからだ。
欧州最大の資産運用会社アムンディ調査部門のグローバルマクロ責任者、マフムード・プラドハン氏は「先週時点では、単なる大規模な金融市場のアクシデントだと表現していたかもしれないが、そうではなくなった。それよりも幅広い事象になった」と述べ、投資家は慎重姿勢を崩さないと予想した。
パインブリッジ・インベストメンツのマルチアセット責任者、マイケル・ケリー氏は、自身が運用するファンドで株式の持ち高を減らした。さらに減らす可能性もあると語り「今後2カ月間は極めて不安定な展開になるだろう」との見方を示した。
9月には米連邦準備理事会(FRB)が利下げを開始する可能性があるが、経済を救うには遅すぎるかもしれないと、ケリー氏は付け加えた。
投資家の世界経済成長率見通しは8カ月ぶりの低水準に下がっている。
<次の売り手>
日銀の利上げをきっかけに、数十億ドル規模の円キャリートレードが打撃を被った。
JPモルガンの推計では、これまでに同トレードの約70%が巻き戻されている。しかし同トレードと結びついた資金の流れを測定するのは難しく、アムンディのプラドハン氏によると、さらなる巻き戻しが起こることへの警戒感から市場はリスク回避的になっている。
UBSの欧州株式ストラテジー責任者、ゲリー・ファウラー氏によると、ヘッジファンドの売りは終了した可能性が高いが、主流の資産運用会社の動きはヘッジファンドより遅く、ポートフォリオの調整に4─6週間を要することが多い。
次に売るのはファンドマネジャーかもしれないと、エドモン・ドゥ・ロスチャイルド・インベストメント・パートナーズのマルチアセット・ポートフォリオ・マネジャー、マリー・ドゥ・レイザック氏は言う。ただ、ファンドマネジャーは経済データに基づいて売りを出しそうだ。
ゴールドマン・サックスのストラテジスト、スコット・ラブナー氏はノートで、年金基金も一段と株式投資を減らし、債券に資金を移すと予想。米株式市場では1950年以来、9月後半が1年で最悪の時期になってきた経緯があると付け加えた。
<消えない警報>
ラッセル・インベストメンツのチーフ米投資ストラテジスト、ポール・エイトルマン氏は、再び弱い米雇用統計が出れば、改めて市場が不安定化しかねないと話す。
来週開催される年次経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」でのパウエルFRB議長の講演と、28日に予定される米半導体大手エヌビディアの決算も、市場のリスクイベントだ。
ピクテ・アセット・マネジメントのシニア・マルチアセット・ストラテジスト、アルン・サイ氏は「ファンダメンタルズ的には妥当だと思えても、ボラティリティーを踏まえると(株式への)投資を増やすのは難しい」と語った。
米市場の不安心理を示すシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー・インデックス(恐怖指数、VIX)と、欧州版VIXである「V2TX」は先週、数年ぶりの高水準を付けた後に低下した。しかし関連指標は警戒シグナルを発し続けている。
投資家がVIX指数の波乱を予想すると上場するVVIX指数は100を超える水準で推移しており、市場の乱高下が収まっていないことを示唆している。
シティの株式取引ストラテジー責任者、スチュアート・カイザー氏は「VVIX指数が100を割るまでは、この指数を注視しなければならない。目下のところ、これは重要な指標だ」と語った。
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