- 2024/07/10 掲載
日銀、24年度GDP見通し引き下げか 基調判断は維持の公算=関係筋
[東京 10日 ロイター] - 日銀は30―31日の金融政策決定会合でまとめる7月の「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)で、2024年度の実質国内総生産(GDP)見通しを4月時点の前年度比0.8%増から小幅に引き下げる可能性が高い。一方で、経済や物価の基調に関する見通しは維持する公算が大きく、経済が緩やかに回復していく見通しを引き続き示すとみられる。複数の関係筋が明らかにした。
内閣府は1日、建設総合統計の大幅修正を踏まえて23年7―9月期以降のGDP成長率を下方修正。24年1―3月期の成長率は実質年率換算で2次速報のマイナス1.8%からマイナス2.9%に大幅に下方修正された。これを受けて日銀も、24年度の実質GDPの見通しを引き下げることを検討するとみられる。
しかし、7月入り後に日銀が公表したデータや資料からは、2%物価目標に向け、賃金と物価の好循環が着実に進んでいることが示された。
賃金について、8日の支店長会議では、賃上げの動きが各地域の中小企業にも広く浸透していることが報告された。同日発表された毎月勤労統計の5月速報では、共通事業所ベースの所定内給与が前年比プラス2.7%と4月のプラス2.2%から急拡大。春季労使交渉(春闘)での強い賃上げ率が中小企業を含めて波及し始めていることを裏付けた。
6月日銀短観では、企業の中長期の予想インフレ率が2%付近で維持されたほか、販売価格判断DIは大企業・中小企業ともに上昇した。支店長会議では、サービス業など人件費の比率が高い業種や人手不足感が強い業種を中心に、転嫁を実施・検討する動きに広がりが見られているとの報告が多かった。
設備投資意欲の強さや個人消費の底堅さから、日銀は経済が26年度にかけて緩やかな回復を続けるとのこれまでの見通しを維持する可能性が高い。日銀では、経済・物価ともにここまで日銀の見立て通りに進んできているとの見方が多い。
日銀は7月の会合で今後1─2年程度の国債買い入れ減額計画を決定する。市場では、日銀が同時に利上げに踏み切るとみる向きもあるが、追加利上げの時期については見方が分かれている。
日銀では、個人消費の弱さへの懸念も引き続き見られる。支店長会議後の記者会見では、物価高の持続などで消費者の節約志向が「急に広がっている」との発言もあった。
24年度が0.6%程度と推計されている潜在成長率並みの成長率にとどまる一因には個人消費の弱さがあり、追加利上げの是非を巡っては個人消費の下振れリスクについての議論が焦点の1つとなる。
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