- 2024/07/08 掲載
焦点:バイデン撤退に備える市場、候補交代で政策に変化なしとの見方も
[ニューヨーク 8日 ロイター] - バイデン米大統領は選挙戦を継続するのか、懐疑的な見方が浮上する中、金融市場ではより強力な民主党候補が現れた場合の潜在的な経済シナリオと取引をシミュレーションする準備をしている。
先月行われた大統領選の第1回テレビ討論会で、バイデン氏が共和党のライバルであるトランプ前大統領と比べて精彩を欠いたことを受けて、債券利回りは上昇した。トランプ氏が大統領に返り咲くとの憶測が高まり、投資家は財政赤字の拡大と高インフレ政策を連想したからだ。
どちらの政党がホワイトハウスを掌握するかによって、貿易、規制、財政政策に関する重要問題が決まる可能性がある。共和党勝利の見通しを踏まえて減税や規制緩和への期待感が広がり、米国株は先週上昇した。
バイデン氏は5日、ABCニュースとのインタビューで、再選を目指す姿勢を強調した。しかし、民主党内ではバイデン氏に選挙活動の中止を求める声も強まっており、ある上院議員はこの問題について話し合うため8日に上院議員による会合を計画している。不確実性は経済の予測を困難にし、市場の変動が大きくなる可能性がある。
ランニング・ポイント・キャピタル・アドバイザーズのパートナー兼最高投資責任者、マイケル・シュルマン氏は「株式市場にせよ債券市場にせよ、候補者が変われば不確実性が増す」と指摘。「バイデン氏が候補でなくなった場合どうするか戦略を準備する必要がある」とした。
関係筋によると、バイデン氏が選挙選からの撤退を決めた場合、ハリス副大統領が代わりの最有力候補と目されている。
グレンメードの投資戦略担当バイスプレジデントであるマイケル・レイノルズ氏は、関税や減税などの問題を含めて新たな候補者が何を主張するのか、「市場はリアルタイムで見極める必要がある」と述べた。
ハリス氏がバイデン氏の経済政策を大幅には変更しないと予想する声もある。ノースエンド・プライベート・ウェルスの最高投資責任者アレックス・マクグラス氏は「目立った差は見られないだろう」とした。
調査会社キャピタル・エコノミクスは5日付のメモで、ハリス氏やカリフォルニア州のニューサム知事などの代替候補は「大胆な提案は避け、バイデン氏と似た政策を掲げて選挙活動を行うだろう」と述べた。
<市場が荒れる可能性>
コメリカ・ウェルス・マネジメントの最高投資責任者ジョン・リンチ氏は、バイデン氏が撤退した場合、割高になっている株式市場は短期的に下落する可能性があると述べた。LSEGデータストリームによると、S&P総合500種指数は直近で、12カ月先の予想利益の21.4倍で取引されており、長期平均の15.7倍を上回っている。
「高値圏にある時、市場は荒れやすいものだ」とリンチ氏は語る。
一部の債券投資家は、新たな候補者指名で民主党が勝利する可能性が高まれば、討論会後の国債売りが反転する可能性があると指摘する。
ブランディワインの債券ポートフォリオ・マネジャー、ジャック・マッキンタイア氏は「新たな候補者が出れば選挙戦が激化し、ねじれ議会の可能性が高まる」と述べた。現在は下院は共和党が僅差で優勢、上院は民主党が多数派と「ねじれ」議会となっている。ねじれ状態だと劇的な政策変更の可能性が減り、一般には市場にプラスとみられている。
マッキンタイア氏は、ねじれ議会なら共和党圧勝時に見込まれる過度な財政刺激策の可能性が減るため、国債価格は上昇する可能性があると話す。しかし、今後数カ月は景気減速が共和党の選挙戦に有利に働く可能性があるため、価格上昇は抑制されるかもしれない。
「選挙を材料に構造的な変更を行うのは尚早だが、投資判断や資産配分の決定で選挙の重要性が増していることは間違いない」という。
<株式市場の反応は不透明>
S&P総合500種は6月27日の討論会以来、1%超上昇した。
バージニア州シャーロッツビルのチェース・インベストメント・カウンセルのピーター・タズ社長は、討論会を受けてトランプ氏の勝利の可能性が高まったことが、株価上昇の一因となった可能性を指摘。
「一部の投資家の間では、企業寄りの大統領、あるいは少なくともより企業寄りの大統領が誕生する可能性が高いとの見方が、市場に資金を投入するかどうかの判断に影響しているはずだ」と語った。
トランプ氏勝利なら法人税が引き下げられ、米株式市場を押し上げる可能性があるほか、貿易相手国への締め付け強化で国内製造業に恩恵をもたらす可能性があるとみられている。一方、中国製品への関税が引き上げられれば、多国籍企業への重荷となるリスクもある。
前述のシュルマン氏は「非常に微妙で不確実だ。選挙結果を正しく予測したとしても、株価の反応はどちらに転ぶか分からない」と語った。
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