• 2023/12/27 掲載

アングル:2024年の世界ソブリン格付け、米中などで重大な動きも

ロイター

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Marc Jones

[ロンドン 20日 ロイター] - 米国と中国には格下げの警告、トルコには10年ぶりに格上げの期待が浮上し、イスラエルは初の格下げに直面──。2024年は世界全体で50余りの選挙が予定されていることもあり、各国のソブリン格付けには一部で重大な動きがあるかもしれない。

24年は、ソブリン格付けの見通しが「安定的」となっている国の割合が過去数年で最も高い水準で年明けを迎える可能性がある。しかし記録的な債務と借入コスト上昇、成長率の低迷、複数の戦争などが重なり、主要国の格付けは流動的だ。

ムーディーズは米国と中国という世界の2大経済大国の見通しを「ネガティブ」としている。米国は格下げされれば唯一残っている「トリプルA」格付けを失う。

ムーディーズのマリー・ディロン氏は、米国については「債務の支払い能力が急速に悪化する」可能性に対処できるのか、中国については不動産や地方政府の債務問題の悪化を食い止められるのかを、それぞれ見極めたいと述べた。

8月に米国を格下げしたフィッチとS&Pグローバルも、11月の大統領選挙が近づく中、米国の動向を注視している。

フィッチのエド・パーカー氏は「われわれが(米国の)格下げの際に指摘した要因の多くは、今もそのまま残っている」と述べ、金利の上昇、国防支出、高齢化などによって米国の債務水準は上昇を続けると予想した。

フィッチは中国の成長率が4.5―5%に落ち込むとみている。ただ、不動産セクターなどの問題によっては成長率が1.5%まで減速。その後25年に2%成長まで回復するという「仮想的なストレスシナリオ」も作成済みだ。「このようなシナリオでは格下げもあり得る」としつつ、中国の全般的な力強さを考えれば1段階以上の格下げは見込まれないとした。

トルコは、エルドアン大統領が起用した新たな財務相と中央銀行総裁が政策立て直しの取り組みを継続すれば、10年以上ぶりの格上げとなるかもしれない。オマーンも「投資適格級」に格上げの可能性がある。

ムーディーズのディロン氏は、トルコでは3月に地方選挙があり、政策金利を40%超に維持する当局の決意が試練にさらされるが、もし当局がこうした方針を堅持して外国人投資家が戻り始めれば「前向きな動きが示される」と言う。

<オマーン、パナマ、イスラエル>

オマーンが「投資適格級」を確保すれば、同国の債券は世界債券指数の構成銘柄となり、アナリストは推定で30億ドルの資金が流入すると見込んでいる。そうなればオマーンの借入コストは低下するだろう。

S&Pのフランク・ギル氏は、オマーンが2年連続で格上げされていると指摘。「結局のところ、まだ石油価格の影響を大きく受けるが、GDPに占める税収の割合は31%を超えている」とした。

対照的にパナマはGDPの約5%を占める世界最大級の銅鉱山の閉鎖という苦渋の決断を迫られており、「投資不適格級」への格下げが最も危ぶまれている国だ。

モルガン・スタンレーは、選挙が行われる5月頃に格下げが行われると予測。格付けが「BBBマイナス」で見通しが「ネガティブ」のフィッチが格下げに最も近いとみられる。

フィッチのパーカー氏は「われわれはいくつかのネガティブな動きに注目している。24年に興味深い国になるのは間違いない」と述べた。

スペイン、ドイツ、選挙を控えた英国は、新型コロナウイルスのパンデミック前と比べて歳出がGDP比で少なくとも4%ポイントの増加となっている。

S&Pはまた、フランスをAAから格下げするかどうかも決定する見込み。「フランスの格付けに関する決定は)24年末までに決着する可能性が高い」とギル氏は予想。債務残高の対GDP比が今後数年間はほぼ110%にとどまると予想されるため、「追加的な財政改革を行うかどうか注目している」という。

一方、イスラエルはハマスとの戦争により、史上初の格下げとなる可能性がある。

S&Pの見通しは「ネガティブ」だが、フィッチとムーディーズは最も差し迫った格下げ警告、すなわち「レーティング・ウォッチ・ネガティブ」と「レーティング・アンダー・レビュー」を適用している。

イエメンのイラン系反政府勢力フーシ派が紅海でイスラエル行きの船舶を攻撃しており、「戦争がいつまで続くのか、その後に何が起こるのか、大きな不確実性がある」とフィッチのパーカー氏は指摘した。

S&Pのギル氏によると、イスラエルは2000億ドルの外貨準備が全海外債務をカバーしているが、今年と来年の財政赤字の対GDP比が5%ポイントと5.5%ポイントになりそうだ。「(格付けは)間違いなく動く可能性がある。ただ、われわれが議論しているのはAAマイナスからAプラスへの変更だ」という。

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