- 2023/12/25 掲載
アングル:株価急上昇・債券急変動の2023年、弱気派の懸念外れる
[ロンドン 21日 ロイター] - 今年の世界金融市場は最も風変わりな1年として後世に記憶されるかもしれない。多くの波乱に見舞われたにもかかわらず全てがうまく行ったことと、多くの予想が外れたことがその主な理由だ。
株式市場は、数十年ぶりの高金利環境や、複数の米地銀が破綻し著名銀行クレディ・スイスが救済買収されるに至った「ミニ銀行危機」を乗り越え、世界株価指数が20%近く上昇した。
債券市場では、ほんの数カ月前まで、米連邦準備理事会(FRB)が利上げを終えた後、景気後退に陥る中でも高金利を維持せざるを得ないと予想されていた。それが今ではインフレが鎮静化の様子を見せ、利下げ開始が視野に入っている。
他の市場では、説明の難しい急上昇が見られた。暗号資産(仮想通貨)ビットコインは年初から150%上昇。最も売り込まれていた新興国市場の債券は3桁台の上昇を達成し、米国の超大型ハイテク7銘柄「マグニフィセント・セブン」は99%も値上がりした。
PIMCOのグローバル債券担当最高投資責任者(CIO)、アンドルー・ボールズ氏は「年初の時点で米地銀危機が起こってクレディ・スイスが消滅すると教えられていたなら、リスク資産がこのような1年になると予想できたか自信が持てない」と語った。
結果として、世界の主要な国債は3.5―6.5%のリターンをもたらし、世界株の時価総額は10兆ドルも膨らんだ。
米ソーシャルメディア大手メタ・プラットフォームズと米電気自動車(EV)大手テスラの株価はそれぞれ190%と105%上昇。ナスダック指数の上昇率は20年ぶりの高さとなりそうだ。人工知能(AI)ブームを背景に、米半導体大手エヌビディア株は240%も上がって時価総額1兆ドル超え企業の仲間入りを果たした。
とはいえ、今年の市場は非常に荒い値動きでもあった。
3月のミニ銀行危機では、世界中で株価が下落して1月の上昇分が吹き飛んだ。安全資産への逃避から金(ゴールド)が上昇し、欧米の国債利回りは2008年の世界金融危機以来で最大の月間下落率を記録した。
世界の投資家は夏を通じて金利の着実な上昇に神経をとがらせ、10月にはイスラム組織ハマスがイスラエルを奇襲攻撃して地政学的緊張が高まった。
外為市場では、ドルは年間で1%安と、ほとんど動かなかった。しかし日銀が利上げを渋ったため、円は対ドルで9%下落。中国は景気回復が息切れし、人民元が対ドルで3.5%下がった。
例年と同じく、最も値動きが大きかったのは新興国市場だった。
トルコはエルドアン大統領の再選後に経済が抱える問題に取り組んだが、通貨リラがさらに35%下げて逆風となった。
エジプトは20%、ナイジェリアは45%、アルゼンチンは約50%の通貨切り下げを実施した。
半面、コロンビアやメキシコ、ポーランド、ブラジルの通貨は上昇した。主要通貨ではスイスフランが最も強く、7.5%の上昇だった。
今年、最も目覚ましい「行って来い」を演じたのは10年物米国債だった。10月に5%まで上昇したにもかかわらず、結局は年初とほぼ同じ水準で年を終えそうだ。
<選挙年>
日経平均は今年ドル建てで17%、円建てで27%、それぞれ急上昇しており、過去10年で最も好調な年となりそうだ。
中国で不動産不況が続いた余波で国際石油価格は圧迫され、年間で約8%下落した。半面、金(ゴールド)は11.5%上昇した。
来年は政治面で忙しい年となりそうだ。
米国、台湾、インド、メキシコ、ロシア、そしておそらく英国を含む世界50カ国余りで選挙が行われる。世界株式時価総額の80%、世界総生産(GDP)の60%を占める国々だ。
またFRBが3月20日に最初の利下げを行うと予想されているほか、6月には石油輸出国機構(OPEC)総会と主要7カ国首脳会議(G7サミット)が予定されている。
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