- 2023/12/22 掲載
英国とスイス、金融サービス協定を締結 規制を相互承認
[ロンドン/チューリッヒ 21日 ロイター] - 欧州連合(EU)に加盟していない英国とスイスの両政府が21日、金融規制に関する協定「ベルン金融サービス合意」を締結した。規制と監督を相互承認し、両国の銀行や保険会社、資産運用会社、証券取引所が互いの国で事業展開しやすい環境を整えることで、貿易の活性化に加え、規制対応の負担抑制につなげるのが狙いだ。
協定は、両国が互いの金融監督機関を尊重し、ルールをすりあわせる必要性を回避しているのが特徴。これにより、英国の金融機関は英国の規則、スイスの金融機関はスイスの規則を遵守しながら、どちらの国でも支店を開設しなくても事業活動が可能となる。
EUが非加盟国の近隣諸国に一方的にEU規則の遵守を求める「同等性」評価制度を採用しているのと比較し、はるかに強い相互信頼に基づいた協定となった。
今回の協定を巡っては英国のEU離脱後、交渉が2年間続いていた。最大の貿易相手だったEUからの離脱を受けて事業の場を広げる必要がある英金融業界にとって、協定締結は追い風となる。協定は両国での議会承認後に発効する。
協定は法人向け事業と富裕層資産運用に力点が置かれた。
スイスの金融業界は、富裕層のクロスボーダー資産運用業務の分野で世界的なけん引役。同資産総額は2022年に2兆2000億スイスフラン(2兆6000億ドル)に上った。協定により、資産200万ポンド(250万ドル)以上を保有する英国の顧客向けにスイスから直接、国境を越えた投資サービスを提供することが認められる。
また英国の金融アドバイザーはスイスの富裕層向けに業務を行うためスイス当局に登録したり、スイスの試験を受けたりする必要がなくなる。
ただ、今回の協定では、小口の一般顧客向け事業は対象に含まれなかった。また、保険会社の場合、大企業の顧客向けの損害保険事業の一部は対象だが、生命保険や傷害保険、医療保険は除外された。
スイスの首都ベルンで協定に署名した英国のハント財務相は声明を発表し、「『ベルン金融サービス合意』は世界初のものであり、世界最大の金融センターとして並び立つ両国の強みを土台としている」と述べた。
さらに「英中小企業は不慣れなスイスの規則の中で四苦八苦することに時間とお金を使う必要はなくなり、公平な条件で競えるようになるだろう」と付け加えた。
スイスのケラーズッター財務相は「長期的に金融センターとしてのスイスの国際競争力を維持し、引き上げるのに寄与する合意だ」と話し、5年後に協定を見直すことで協定が対象とする範囲が広がる可能性があると表明した。
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