- 2023/12/05 掲載
ムーディーズ、中国格付け見通し「ネガティブ」に 債務問題を懸念
[5日 ロイター] - 格付け会社ムーディーズは5日、中国の格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に変更した。
中期的な経済成長率の低下や不動産部門の縮小が理由。
ムーディーズは中国の成長減速・債務増加見通しを踏まえ2017年に格付けを1段階引き下げA1とした。それ以来の調整となる。
長期自国通貨建て・外貨建て発行体格付け「A1」は据え置いたが、GDP伸び率は24年と25年に4.0%に減速し、26─30年には平均3.8%に低下すると予想した。
見通しの変更についてムーディーズは、中国当局が債務問題を抱える地方政府や国有企業への資金支援を迫られることが予想され、中国の財政、経済、構造的強さに広範なリスクを与えているためと説明。
さらに「中期的な経済成長の構造的・持続的低下や、現下の不動産部門縮小に関連したリスク」も見通しの引き下げ要因とした。
国際通貨基金(IMF)の最新データによると、地方政府債務は22年に92兆元(12兆6000億ドル)、国内総生産(GDP)比76%で19年の62.2%から上昇した。
中国財政省は、ムーディーズの措置に失望したと表明、中国経済は回復トレンドを維持するとした。不動産・地方政府リスクは制御可能とし、「中国の経済成長見通し、債務の持続可能性、その他ムーディーズの懸念は必要ないものだ」と説明した。
5日の中国株式市場は同国経済への懸念から優良株が約5年ぶりの安値を付けた。取引時間中にはムーディーズによる引き下げのうわさが流れ、地合いが悪化した。
関係筋によると、中国の大手国有銀行は終日、人民元を買い支えていたが、ムーディーズの発表後、ドル売りを大幅に増やした。午後遅くの人民元は横ばい。
中国ソブリン債の債務保証コストは11月中旬以来の水準に上昇した。
みずほ銀行(香港)のアジア通貨担当チーフストラテジスト、ケン・チュン氏は「市場は目先の国債のリスクよりも、不動産危機や低成長の方を懸念している」と指摘。
複数のアナリストによると、A1の格付けは投資適格級の領域内で高水準であるため、格下げされても海外ファンド勢が売りを迫られる可能性は低い。フィッチとS&Pも中国をムーディーズと同等の「A+」に格付けしている。格付け見通しはともに「安定的」。
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