- 2023/12/05 掲載
アングル:来週のFOMC、利下げ転換シグナルの適切な発信巡る議論開始か
[ワシントン 4日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は12─13日に今年最後の連邦公開市場委員会(FOMC)を開く。政策金利は3回連続で据え置きが決まると予想され、利上げ局面はどうやら終わりそうだが、今度はいつ、どのように利下げへ政策転換するのか、適切な情報発信を迫られることになる。政治家や投資家、国民はFRBの態勢が整う前に利下げを要求するかもしれず、これは難しい課題と言える。
実際利下げする時期はまだ先に見える。足元の基調的な物価上昇率は前年比3.5%と、FRBが目指す2%を大きく上回っている。政策担当者は、低失業率下の経済が再び過熱化することを引き続き懸念しており、彼らが言及するのはむしろ高金利長期化や追加利上げの方が多い。
もっともこれは、7月以降5.25─5.5%に据え置いている政策金利水準でも十分に経済や物価を落ち着かせられるとFRBが確信を強めながらなお、選択肢としてさらなる引き締め余地を残しておくという意味合いでもある。
いずれにしてもFRBは、物価上昇率が利下げを始められるほど下振れたかどうか判断する時期が、数カ月中に訪れるかもしれない。折しもそこには、大統領・議会選の年という政治的な要素も絡んでくるため、事態は複雑化する。
そうした判断に至る議論が、今回のFOMCで始まるとみられる。ドレイファス・アンド・メロンのチーフエコノミストで、かつてFRBの金融政策に携わったビンセント・ラインハート氏は、政策担当者にとって厄介な局面になると予想。公表される最新見通しで利上げの終了が示される公算が大きいが、彼らにとってそれが2%の物価目標へのコミットメントの弱まりや、すぐにも利下げがあるとのシグナルと解釈されるのは本意ではない、と説明した。
FOMC声明の経済情勢判断は、物価上昇率の着実な鈍化に伴って経済活動と雇用の伸びが緩やかに減速するという「ソフトランディング」シナリオにおおむね沿った内容になるだろう。
ただFRBは、この情勢判断と、物価動向が期待通り推移しなかった場合に追加利上げする選択肢を維持したいという考えをうまく調和させなければならない。
さらに9月同様、今回の見通しも来年末までに政策金利は低下する展開が示されそうなので、どう見ても次の一手は利下げだという事実に注目が集まり、その適切な時期を巡る議論になるのは避けられない。
<メッセージに変化>
来年は11月に大統領・議会選が行われ、投票日が近づくほど、利下げが政治と結びついて見えやすくなる。特に大統領時代にFRBの利上げに怒ったトランプ氏が、現在の支持率通り野党共和党の大統領候補に指名されれば、その傾向は一層強まるだろう。
それでもバンク・オブ・アメリカの米国チーフエコノミスト、マイケル・ゲイペン氏は、個人消費支出(PCE)物価指数の前年比上昇率が3%を大きく割り込み、3カ月から6カ月の平均で2.5%かそれ以下になれば、FRBは「慎重かつ緩やかな緩和サイクル」に向けてかじを切るとみている。
投資家はもっとピンポイントに、利下げは来年3月から始まるとの見方を強めつつある。
これに対してFRBのパウエル議長が約束しているのは、1970年代の失敗を挙げた上で、物価上昇率が2%に戻ると確信する前に早まって利下げをしないということ。当時は拙速な利下げによって物価高が経済に根を下ろし、その後強烈な金融引き締めを強いられて、景気後退を招いてしまった。
パウエル氏は1日の講演でも、それが適切であるなら追加的な引き締めに動く用意はあると改めてくぎを刺した。
しかしFRBからのメッセージが変化し始めたのも確かだ。タカ派と目されているウォラー理事でさえ、先週には一段の利上げなしで物価上昇率の鈍化が続くと自信を持っている理由を説明した上で、この流れが続くなら利下げが妥当になるとの見解を示した。
パウエル氏も、物価下振れと成長の緩やかな減速という面では「われわれが望んだ地点に達しようとしている」と語っている。
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