- 2023/12/01 掲載
アングル:株式市場は「サンタラリー」が一足早く到来、先行きに不安も
[ロンドン 30日 ロイター] - 世界各地の主要株式市場は、年末にかけて株価が上昇する「サンタクロースラリー」の華やぎが一足早く到来し、11月がまるで夢のような1カ月になった。トレーダーは、インフレが低下して中央銀行が金利を引き下げることが可能な「ゴルディロックス(適温経済)」のシナリオに賭けている。
MSCI世界株価指数はほぼ9%上昇し、新型コロナウイルスワクチンの登場に沸いた2020年11月以来の上昇率となる見込みだ。
インフレが緩和して、米連邦準備理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)など主要中銀の積極利上げは打ち止めとの見方が広がり、債券と株式が上昇、ドルは下落した。
債券価格は世界的に急騰。ICE BofA世界投資適格級債券指数は11月に約4%まで低下(価格は上昇)し、月間では1997年以来の好調ぶり。米国債利回りは月間として2008年以降最大の下落となる見通しだ。
債券は夏場に売り込まれた痛みが和らぎ、主要株式市場は年初来の急落を巻き戻す方向に動いている。
ただし手放しでは楽観できない。安全な債券に資金が流れる動きは通常ならば景気後退の予兆となっても不思議ではなく、株式市場がその景気後退リスクを軽視している可能性があるからだ。
ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ投資戦略・調査部門を率いるアルタフ・カッサム氏は「足元の株式市場はあまりにも楽観的過ぎる。正しいのは債券市場だ」と見ている。「金利には低下余地があり、ディスインフレーションが続くかもしれないが、そうなれば成長も鈍るし、金融引き締めの影響は遅れて表れる」と述べた。
<株価は幅広く上昇>
11月の株式急騰は広範囲にわたっている。米国のS&P総合500種株価指数は月間で8.5%上昇。欧州のStoxx 600指数は6%上げた。ハイテクセクターで構成する世界成長株は11%上昇し、景気循環的な高配当のバリュー株も約6.7%上がった。
主要中銀は2021年末から政策金利を計3965ベーシスポイント(bp)も引き上げており、投資家は利上げは打ち止めと感じている。
市場は既にFRBとECBが来年100bp超利下げするとの見通しを織り込んでおり、主要国・地域の大半は引き締めの効果を見極めるために利上げを一時停止している。
チューリッヒ保険グループの首席マーケットストラテジスト、ガイ・ミラー氏は「(株式は)既に反発しているが、政策転換が本物だという具体的な裏付けが必要だ」と話す。
ヴァン・ランスコット・ケンペンのシニアインベストメントストラテジスト、ヨースト・バン・レンダース氏は、金融引き締めが経済に影響を与え、欧米の株価は今後下げると見込んでいる。
10月の米住宅販売は13年ぶりの低水準に落ち込み、ユーロ圏は域内の景気後退入りが迫る中、10月の企業向け融資が2015年以来初めて減少。中国国家統計局が30日発表した11月の製造業購買担当者景気指数(PMI)も前月からさらに悪化した。
バン・レンダース氏は、株式市場は低インフレの悪影響も無視しており、これは「顧客に値上げを転嫁した企業で売上高と利益の名目上の伸びが高くなっているためだ」と説明。「インフレが鈍化すると(企業の利益は)ますます厳しくなる」と予想する。
株式の見通しに暗雲が垂れ込めている状況は、株式と債券の値動きに再び乖離が生じる可能性を示唆している。
国債は最近まで3年連続の損失が見込まれていたが、11月の急騰によって年初来のリターンが1.2%となった。よりカバー範囲の広いグローバル指数は年間のリターンが1.6%と見込まれている。
バン・レンダース氏は、米国債利回りの緩やかな、さらなる低下を予想している。10年物米国債の利回りは10月に5%超まで上昇したが、足元は4.2%。指標となるドイツ国債の利回りも最近の高値から低下に転じている。
ステート・ストリートのカッサム氏は「来年は米経済が軟化すると見込んでいる。全体としては、成長の不足が株価を抑制する要因になるため、今は債券を選好している」と言う。
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