- 2023/11/30 掲載
焦点:来年の軟着陸と利下げ期待で米株堅調、楽観ムード警戒する声も
[29日 ロイター] - 足元の米国株は、来年は米経済のソフトランディング(軟着陸)が実現して米連邦準備理事会(FRB)が利下げに動くとの期待から、買い意欲が高まっている。
S&P総合500種は11月の上昇率が約9%と、月間では昨年7月以来の大きさになりそうだ。ドル高や米国債利回り上昇といった今年を通じて投資家を悩ませてきた流れは逆転し、投資家の不安心理の度合いを示すボラティリティー・インデックス(VIX)はコロナ禍以降の最低圏にある。
こうした動きは、2つの前提にけん引されている。1つ目は、投資家の間でFRBが来年前半に利下げを開始するとの観測が強まっていること。政策金利がより高く、高金利局面がより長くなるとの懸念は薄れてきており、LSEGのデータに基づくと金利先物市場は早ければ来年5月にも利下げがあると織り込んだ。
もう一つは、FRBが昨年3月から計525ベーシスポイント(bp)もの利上げを実施しても米経済が底堅さを維持している点を踏まえ、いわゆるゴルディロックス(適温経済)シナリオが有力視されている点だ。
クレセット・キャピタルのジャック・アブリン最高投資責任者は、雇用鈍化や消費者物価の減速を含めた最近のデータが話の方向をがらりと変えたと指摘。「政策金利とインフレ、10年国債利回りはいずれもピークアウトしたとの自信が増している」と述べた。
FRB内でタカ派として知られるウォラー理事が28日、物価上昇率の下振れが続けば利下げする可能性を示唆したことも、市場の利下げ期待を一段と高める形になった。
ハーバー・キャピタルのポートフォリオマネジャー、ジェイク・シャーマイヤー氏は「物価上昇率はFRBの想定より急速に鈍化し、全ての兆候がソフトランディングを指し示している」と主張した。
こうした状況を背景に米国債利回り低下とドル安が加速しており、基調に変化がなければ金融環境の緩和を通じてリスク志向が一層強まってもおかしくない。
直近の10年国債利回りは4.3%と、10月に記録した16年ぶりの高水準からおよそ70bpも低下。ドルは10月初め以降、主要通貨バスケットに対して約4%値下がりしている。
一方S&P総合500種は年初来の上昇率が19%前後に達し、過去最高値が視野に入ってきた。VIXは13弱で、パンデミック発生前の2020年初め以降の最低水準に近い。
シャーマイヤー氏が率いるチームは、金利低下の恩恵を受ける小型株や新興国市場への資金配分をどれだけ増やすかについて「積極的に議論」しているという。
とはいえ誰もがFRBの利上げが終了したと確信しているわけではない。また来年大幅な利下げが見込まれているだけに、実際の利下げ幅がそれより小さくなっても市場にとっては実質的な「利上げ」となり、今の楽観ムードに打撃を与えてしまう、と野村証券のクロス資産戦略マネジングディレクター、チャーリー・マクエリゴット氏は警告する。
一部の投資家は、これまでのFRBの利上げがまだ完全に顕在化しておらず、最終的に米経済はもっと深刻な減速に見舞われるのではないかと心配する。
ドイツ銀行のエコノミストチームは27日、FRBが来年中に175bpの利下げを実施すると予想しつつも、来年前半には軽度の景気後退を伴うと述べた。
それでも同行は、来年末のS&P総合500種が足元から12%近く上昇し、5100に達するとみている。
もう少し悲観的なのがJPモルガンで、ボラティリティーが歴史的な低さにある中で割高感が生じている上に、地政学リスクと政治リスクがなお高い点を挙げ、来年のS&P総合500種の目標値を4200に設定した。
PR
PR
PR