• 2023/11/29 掲載

公取委、労務費の価格転嫁で行動指針 違反なら独禁法抵触

ロイター

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Yoshifumi Takemoto

[東京 29日 ロイター] - 公正取引委員会と内閣官房は29日、賃上げ促進のため、現状では難しいとされる労務費を理由とした価格交渉の環境整備を行うための行動指針を公表した。日本の雇用の7割を占める中小企業が賃上げの原資を確保するのが狙い。

岸田文雄首相は15日に行われた政労使の意見交換会で「労働者の7割が中小企業で働いていることを踏まえ、中小企業が使いやすいように賃上げ税制を拡充するとともに、価格転嫁対策、特に労務費の転嫁の強化を強く働きかける」と強調。

「今月下旬には、内閣官房と公正取引委員会連名の労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針を、発注者側・受注者側に公表し、違反行為は独占禁止法に抵触するおそれがあることを示し、全国的にその周知徹底を図ること等により、中小・小規模企業の賃上げを全力で支援する」としていた。

今回の指針作成に伴う法令や政省令の変更はない。

公正取引委員会はことし5月末月以降11万社を対象にコスト構造に占める労務費の割合が高い業種での価格転嫁の現状調査を実施。ビルメンテナンス業や警備業、情報サービス業、技術サービス業、映像・音声・文字情報制作業、不動産取引業、道路貨物運送業などでは、そもそも労務費の価格転嫁を要請していない企業が多いことがわかった。調査全体の中央値をみても、価格転嫁率は、原材料価格80%、エネルギーコスト50%に対して、労務費は30%にとどまった。

労務費の価格転嫁に企業が慎重な理由として、1)労務費上昇は効率性向上などの努力で吸収すべきとの意識が発注者側にあり、2)交渉過程で企業秘密にかかわる詳細な説明を求められるリスクや、3)取引関係に悪影響がありうること─が挙げられた。

このため、労務費を理由とした価格転嫁交渉が実現できるよう、以下のような指針を公表した。

─発注企業は労務費上昇分を受け入れる方針を経営トップまで上げて決定する

─労務費の転嫁について定期的に協議の場を設ける

─労務費上昇理由の説明を求める場合は、公表資料に基づくものとする

─サプライチェーン全体で適正な価格転嫁を行う

─労務費理由の取引価格交渉を求められた場合協議のテーブルにつき、取引停止などを行わない

─受注者からの申し入れの巧拙にかかわらず協議を行い、価格転嫁にかかわる考え方を提案する

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