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ライブ配信とEC(ネット通販)を掛け合わせたサービス「ライブコマース」。その市場が中国で急成長をしている。2020年の流通総額は約14.6兆円という予測もある。Tik Tok、快手(クワイショウ)などの動画プラットフォームがライブコマースに対応し、タオバオ、京東(ジンドン)、拼多多(ピンドードー)などのECが販売・発送を担当するという業界の仕組みもでき上がってきた。中国ライブコマースの業界構造とともに、小売業がライブコマースを成功させるカギを探る。
2020年の流通総額は約14.6兆円の見込み
中国のライブコマースが急速に成長をしている。以前からこの領域は成長し続けており、2019年の流通総額は4,338億元となっていたが、新型コロナウイルスの感染拡大により需要が急増し、2020年の流通総額は9,610億元(約14.6兆円)になると予想されている。
ライブコマースとは、スマートフォンのライブ配信を利用して商品を販売する仕組みだ。日本のテレビショッピングとよく似ているが、スマホなのでテレビよりもはるかに利便性が高い。視聴者はコメントを使って、その場でライブ主に質問をすることができる。さらにECサイトと連動しているので、ワンタップで商品が購入でき、決済も同時に済んでしまう。
ライブコマースの草分けは、アリババのEC「淘宝(タオバオ)」で、2016年3月からサービスを提供し、現在3万人以上の「タオバオ達人」と呼ばれる人々がタオバオの商品を販売するライブ配信を行っている。
その達人の中で、最も売り上げる薇娅(ウェイヤー)は、2019年11月11日の独身の日セールで、27億元(約410億円)の商品を売った。これは平均的なショッピングモールの1年分の売り上げとほぼ同じだ。ウェイヤーの販売手数料は販売額の14%前後とみられるので、彼女が1日で稼いだ報酬は60億円近いものになる。
コロナ打撃を受けた商店主たちが続々開始
この成功を見て、さまざまなプラットフォームがライブコマースの仕組みを構築していたところに、新型コロナウイルスの感染が拡大し、街中の商店は休業せざるを得なくなった。そこで、商店主たちがライブコマースに注目をして、閉店している店内でスマホを使って店舗の商品の販売を試みた。商品の販売手段を絶たれた店主たちが、大挙してライブコマースに流れ込んだ。
プラットフォーム側も、ライブ主の登録手続きを簡素化するなどして支援をした。消費者たちも外出自粛で買い物に行けないため、ライブコマースは「買い物の手段」だけでなく「手頃な娯楽」として急速に盛り上がっていった。
中には驚異的な成功を収める例も現れた。2月28日には、茅台酒(マオタイシュ)の9つの組合が連合して蘇寧(スーニン)ライブ上でライブコマースを行った。本場の茅台酒が買えると話題になり、視聴者は240万人以上、用意した10トンの茅台酒を売り切った。しかし、購入できなかった視聴者が不満を述べたために、購入できなかった視聴者に600元のクーポン券を配布する事態になった。
翌29日には、建設機器を販売する中聯重科土方機器が、Tik Tok上でライブコマースを行った。商品はショベルカーで、スーツ姿の副総経理が実際に運転して見せるというユニークなものだった。こちらは9万人が視聴し、620台のショベルカーが売れた。
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