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  • 2020/07/28 掲載

ニューノーマル時代を支えるデジタル技術とは? 最新動向を一挙紹介

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新型コロナウイルスの感染拡大を防止するデジタル技術やソリューションが次々に市場に投入されている。24時間前に発症を予測するウエアラブル端末やオンライン会議参加者の表情を認識するシステム、レストランなどで働くロボットウエイトレスなどなど。野村総合研究所(NRI)はこうしたリモートワークなどデジタル技術を活用する新しい生活様式や働き方を「デジタル・ニューノーマル」と呼ぶ。同社IT基盤技術戦略室長の城田 真琴氏がデジタル・ニューノーマルと、それを支えるデジタル技術トレンドなどを語る。
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コロナ禍はデジタルで抑制できるか
(Photo/Getty Images)

コロナ対策に用いられるさまざまなデジタル技術

 リモートワークやオンライン授業、対面営業などコロナ禍における企業の活動や消費者の行動を持続するための新しい行動様式が生まれている。「3密」回避など日常的な感染対策が新しい生活様式、新しい働き方のスタイルが今後定着していくのだろう。

 そんな「デジタルニューノーマル」を実現するデジタル技術には、リモートワークを円滑に進めるための技術、ステイホームでの日常生活を支援したり、快適にしたりする技術、実世界でウイルス感染を防止する技術などがある。NRIではそれぞれを「フロント(ユーザー側)」と「バック(企業側)」、「オンライン」と「オフライン」に分類する(図1)。

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図1:コロナ対策で用いられる技術の分類
(出典:野村総合研究所 報道発表)

リモートワークを円滑に進めるための技術

 コロナ禍で最も利用者が急増したのは、ビデオ会議だろう。NRIによると、Zoomの1日あたりのミーティング参加者は、2019年12月31日の約1000万人から2020年4月に3億人を超えたという。

 また、欧米の金融機関トップらはこぞってリモートワークに肯定的な発言をしており、今後のオフィスの必要性、さらに不動産需要に大きな影響を与える可能性もある。オフィス面積の削減を表明する企業はすでに出てきている。

 リモートワークを円滑にする非対面営業システムもオンラインで実現され始める。たとえば、営業担当者がビデオ会議で資料を共有したり、商品紹介のデモをしたりする。顧客は事前にアプリをインストールしたり、メールによる会議への招待がなくても簡単にビデオ会議に参加できる。

 しかも、画面やファイルの共有だけではなく、たとえば道の案内や事故現場の位置把握のための地図情報を共有したり、書き込みをしたりすることも可能だ。リモートから契約書や申込書へ記入もできる(図2)。

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図2:進化する対面営業システムの例
(出典:野村総合研究所 報道発表)

 ある生命保険会社は、スマホを使ったオンラインでの保険契約を検討している。後日、顧客に契約書を郵送するよりも、オンラインで契約を完結した方がが成約率は高くなるだろう。こうした非対面営業へのデジタル技術活用は、CIO(情報統括責任者)の喫緊の課題でもある。

 NRIの新型コロナウイルス影響に関するCIO調査によると、顧客接点業務に関するIT戦略の中で、「非対面営業の強化」が最も優先度が高い(図3)。

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図3:NRIが実施したCIO調査では、多くのCIOが非対面営業強化は緊迫の課題として捉えていることが明らかとなった
(出典:野村総合研究所 報道発表)

 電子署名や電子契約の仕組みもリモートワークの実現に欠かせない。在宅勤務の障壁となる「紙やハンコ」の契約書をなくし、契約業務の電子化を図るためだ。印紙代や郵送代の削減、契約合意から郵送までの時間短縮にもする。

 クラウド上で契約締結から書類管理までを行うので、社外からのアクセスも可能になり、書類の紛失などのリスクも低減する。オンラインによる名刺交換も進むだろう。

 ある金融機関はアプリからデータを入力したり、ドキュメントをスキャンしたり、電子署名でサインしたりする。支店で可能な取引はすべてアプリから可能にする計画。ライブビデオチャットなどデジタルチャネルも積極的に活用する。

 こうしたビデオ会議の課題の1つが、画面から相手の表情や感情をどのように把握するかだ。そこで、注目されているのが発言した音声や顔の表情といった感情を認識する技術になる(図4)。

 笑顔や怒り、嫌悪、悲しみなど顔の表情を認識する技術、緊張など不意に現れる表情を認識する技術がある。文章や単語などの言語解析、声の高さや強さなどの音響解析といった音声認識も使う。

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図4:米Affectivaの感情認識ソフト
(出典:野村総合研究所 報道発表)

 たとえば、米Affectivaの感情認識ソフトは、Webカメラを使って、顧客の顔の筋肉の動きをキャッチし、メディア広告などの消費者反応を分析する。分析に必要な感情データベースも蓄積する。


日常生活を快適にするデジタル技術

 コロナ禍の日常生活を快適するデジタル技術も数多く開発されている。たとえば、ECで売られている商品が自分のサイズに合っているのか、フィットしているのかは、自宅に届いて、試しに使ってみないと分からないこともある。

 そこで、眼鏡のオンライン販売を展開する米ワービー・パーカー(Warby Parker)は、スマホアプリで眼鏡を3次元による仮想試着機能を提供している。カメラで顔の形状を読み取り、AR(拡張現実)技術を組み合わせて、頭を左右、上下に動かして、眼鏡フレームの確度やフィットなどを確認する仕組みだ。

 Eコマースの販売促進に、ライブ配信型コマースを活用するEC事業者も現れている。テレビショッピングに比べて、制作費を含めて低コストで配信できるだけではなく、視聴者との双方向のやり取りも可能になる。

 たとえば、中国アリババグループの淘宝(タオバイ)は2016年からライブ配信型コマースの提供を開始しているが、NRIによると、2020年2月には同年1月より初めて利用する業者が719%も増えた。米ShopShopsもライブ配信型コマース・アプリを使って、インフルエンサーがスタジオや自宅ではなく、店舗から商品やブランドの紹介を生配信することで、販売数を増やす。中国人向けからどんどん広がってもいる。

 しかし、ECの拡大では配送がネックになることもある。そこで、注目されているのが自動運転による非接触配送サービスだ。

 元グーグルのエンジニアが創業した米ニューロ(Nuro)はウォルマートやドミノ・ピザなどと提携し、自動運転車を使った無人宅配を始めている。新型コロナ患者を収容する施設に、食品や医薬品などを非接触で配送するサービスも提供する。Amazon.comは2020年6月、創業6年の自動運転技術のスタートアップZooxを買収するなど、こうした業務提携が活発化している。

 自動化は、消費者からの問い合わせなどに対応するコンタクトセンターでも進む。3密を避けるため、配置する人員を縮小し、デジタルチャネルの活用やデジタルセルフサービスに移行する。音声認識や音声合成を活用した音声自動応答も使う。チャットボットの活用は、人材確保を不要にすることもある。

 ある企業は問い合わせに対して、待ち時間が人なら10分、チャットなら5分などとして、チャットへ誘導する。AIを組み込むことで、チャットの応答性能をあげるなど、デジタル・ヒューマンへ進化もする。本物の人ではないが、自然な表情、声でのリアルタイムの対話は利用者に安心感も与えるという。

【次ページ】感染症を予防・防止するデジタル技術
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