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- 2015/06/23 掲載
日本の小売・流通業界がASEAN諸国へ上手く進出するための秘訣
日本が生きる道、その1つの答えがアジア
国内の企業は、1990年には550万社あったが、最近の統計では380万社を切った。すでに“企業の少子化”も始まっている。東京都では、約20年間で製造系の中小企業が約4万社から1万8000社(2009年時点)に減った。「スウェーデン、スイス、ベルギーなど、人口が1億人を切る国のほとんどが、海外展開を強化している。これまで日本は国内で需要を満たしていた。海外売上高の比率は17%程度しかない。しかし人口が減れば、海外展開せざるを得ないだろう」(大久保氏)。
実際に日本から海外に展開する企業の収益を調べると、その46.3%が増益していることが分かる。もちろん利益だけでなく、従業員も増えている。大久保氏は「決して日本の産業の空洞化を進めているのではない。本社機能やR&Dを国内に置き、製造拠点を人件費の安いアジアに移し、販売拠点を欧米諸国で展開する。そのような分業体制で進めれば、まだ日本企業は収益を伸ばせる」と説明する。
日本企業が進出するのにベストな国は?
では、日本企業はどこに進出するのがベストなのか?人口減少国は自国でも海外展開するぐらいなので進出は難しい。当然、人口が多い国が狙い目だ。アジアには32億人が生活している。大久保氏は「アジアは20%の増加率で人口が増えている。日本市場がまるまる6個ぶん増える計算だ。ただしアジアと言っても広い。日本との関係が良好な国、たとえばASEANに行くのがよい。とりわけインドネシア、ベトナム、ミャンマー、カンボジアの4か国に大きな勝機がある」と指摘する。
実際にイオングループもカンボジアのプノンペン、ベトナムのハノイなどに大型店をオープンした。「GDPで見るとミャンマーが東京オリンピックを迎えた日本の状況と似ているという。カンボジアも同様の状況だ。これより少し進んでいるのがベトナム。インドネシアは1970年代初期の日本と似ている。これから一番伸びるのがタイだ。ほとんどの国が高度成長を迎えるため、今から進出しても十分に間に合うと思う」(大久保氏)。
2015年末には、モノ・ヒト・サービスの自由化によるASEAN経済共同体(AEC)も発足する。大久保氏は、その統合のポイントについて「単一市場と単一生産基地」「競争力のある地域」「域内格差の是正」「グローバルな経済への統合」という4点を挙げた。「具体的には2018年までにAEC域内で関税が撤廃される。短期滞在ビザも撤廃される方向だ(ミャンマーを除く)。まだ課題も残っているが、小売業への出資規制緩和や金融機関の相互進出なども進みつつある」(大久保氏)。
では、AECによる経済効果の影響はどうなるのだろう? 「アセアン統合によって、カンボジアとベトナムが圧倒的に有利になるだろう。小売業はこれらの国に進出するべき。ミャンマーは安価で豊富な労働力があるが、まだ産業インフラが未整備で、進出時期は少し早いかもしれない。ただし日本の支援で工業団地の開発も急ピッチで進んでいる。カンボジアは、ホーチミンからプノンペン、バンコクへと続く南部経済回廊により、物流環境が整備された。ベトナムはGDPが2000ドル近くになり、労働集約産業から資本集約産業へ移行中だ。インドネシアは人口も多く、中間所得層が拡大し、巨大消費に向かっている」(大久保氏)。
大きなチャンスが広がるASEAN市場だが、安易に何でも進出すればよいというわけでないようだ。かつて日本の海外進出は1995年がピークだった。しかし失敗例も多く、2000年初頭には撤退が増加。最悪、帰って来られないこともあった。大久保氏は「まず現地に行って、F/S調査(Feasibility Study:実現可能性調査)を十分に実施し、ビジネス・マーケティングをしないと失敗する。JAICAやJETROでもFS調査の資金を支援しているので利用するとよい。また現地法人のライセンス申請が下りないこともある。ベトナムでは2店舗目からライセンスが厳しい。現地対応できるコンサルタントと組まないと、時間と費用だけを浪費してしまう」とアドバイスした。
特に小売業では、人材採用と同時にその支援も求められる。「まだ現地ではサービス精神がないので、人材教育をしないとダメ。現地の法律に照らし合わせ、就業規定、給与規定、労働契約も現地語で結んでおく。大手では連結決算にも対応しなければならない。さらにバックオフィスの業務支援、OA・NW・ITのサポートもしておく。このあたりをしっかりしないで進出すると後で苦労する。結果的にコストがかかり、さらに撤退という憂き目にあいかねないので注意したい」と述べた。
【次ページ】 ASEAN諸国への進出における人材開発の問題と注意点
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