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- 2012/09/05 掲載
A.T. カーニー 山本美樹夫氏: 次世代の経済社会モデルで重要になるのは、ユーザー参加型の“Story”
アメリカン・エキスプレス・サービス・アカデミー レポート
知識共有促進型の組織で求められるリーダーシップ
山本氏は「コンサルタントという職業を選んだとき、社会が良くなるような何かを世の中に残したいと思いました。それが自分のゴールでもあります」と語る。社会を変革する際、世の中の構成要素を考えると、経済的視点から産業が大きな役割を担っていることが分かる。では、その産業を変えていくにはどうしたらよいのだろうか。その答えは企業を変えることだ。山本氏は「コンサルティングとは、そのためのツールであり、アプローチです」と打ち明ける。
こうした背景を持つ山本氏は、「事業の社会的役割を定める」と題して講演を行った。まず企業に求められる組織形態を進化のステップから捉えると、初期段階では機能別に人が動く「指揮命令型」のものが大半だったという。しかし、それが進むと、著名な経営学者のピーター・ドラッガー氏が提唱するような「知識共有促進型」の組織へ変容していく。何らかの仕事が興るとき、さまざまなスキルを持つ人々がその場その場のチームとして編成され、事業を推進していくモデルだ。
そして事業が達成されると、また違うプロジェクトが編纂される。さらに、これが進化すると「美意識共有型」になるという。このような経済社会モデルが到来したとき重要になることは、1つ1つの仕事に関してミッションを遂行するリーダーシップである。個人的にも、人間的にも、魅力のある人材を日本から輩出する必要があるだろう。
山本氏は自分たちが立ち上げたNPOを振り返り、次のように述べた。
「我々の活動は、ボランティアからサラリーマンまで幅広く集い、個人的にプロジェクトを設計し、それをコーディネイトして、実際のものとして立ち上げる行為。プロジェクトを立ち上げる期間は、特に給料を支払うこともなく、自分に集まってくるスタッフを取りまとめます。そのため、リーダーに魅力がなければ人は付いてこない。NPOでリーダーシップを発揮するということは、経済社会の企業組織においてもリーダーになりえる人物だと思います」
そういう意味で、山本氏は前述の企業とNPOの新たな連携の在り方も模索しているという。
とはいえ、このようなNPOなどで活躍する若い社会企業家たちの間で、よく耳にする問題がある。それは自分たちが描くビジョンを実現するサービスと、その戦略の間にギャップがあり、なかなか一致しないということだ。この問題をどうやって現実のものに落とし込むかという点は重要だ。
そこで、まず社会的にみて自分たちの事業がどのような位置にあるのか、その役割定義をしっかりする必要がある。もう1つ、原点に立ち返り、自分たちの事業役割を考える上で描く戦略とは何か考えてみることも必要だ。
「いろいろな意見があるでしょうが、端的にいうと戦略とは“メリハリ”のことだと思います。限られた経営資源において、やることと、やらないことを決めることです。自分だけですべてを実行することは不可能。何に集中すべきか決めることが基本となります」
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