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ECRの調査によれば、SaaS/ASP分野において、利用がもっとも進んでいるのが「セキュリティ」である。
そこで第4回はSaaS/ASPにおけるセキュリティサービス市場の動向について注目する。SaaSによるセキュリティの有効性、市場規模、市場規模予測などについてECRの調査結果を交えてご紹介する。
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セキュリティ分野におけるSaaSの有効性
今回は、SaaSの中でセキュリティをテーマとして取り上げる。改めて言うまでもなく、セキュリティの確保は企業にとって非常に重要なミッションである。ウイルスをはじめとするサイバー攻撃が毎日のように襲ってくる中、企業は顧客データや自社の財産となるデータを常に守っていかなければならない。情報漏えいやシステムの破壊、改ざんといった危機に対して、企業は常に備えて一定レベル以上のセキュリティを確保し続けなければならない。
顧客にとっては、自分たちが利用する企業のセキュリティは守られていて当たり前のものである。安全に、かつ信頼度の高い状態で、最高水準のセキュリティが保たれ、その投資は新しい攻撃やウイルスなどが発生するごとに増加していき、また事業規模やネットワーク規模が拡大するにつれ投資が増えていく。そこで得られる結果とは、安心感(何もないこと)である。
企業にとって、セキュリティを維持することは、直接の生産性にはつながりにくい。この業務を直接担当する情報システム部門や、情報セキュリティ部門においては、セキュリティを一定レベルに維持して、顧客や経営陣などのステークホルダーを安心させることが業務遂行の目的となる。しかし、評価の対象となる業務の上限が「何も起こらない」ことが目的・結果であるため、ステークホルダーからは評価されにくい。
一方で、ERPやCRMなどは、会社のコストを削減したり、会社の売上高の増加に貢献するなど、導入や運用の効果が目に見えるかたちで得られる。さらに会社の基幹系業務システムに関わることは、経営に対する貢献度が明確で、業務担当者にとってもCIOへの道が開けるなど、取り組みへのモチベーションも変わってくることだろう。
昨今では金融業など顧客データベースを大量に抱える業種をはじめ、情報セキュリティ専門の部署や監査室を設置するなど、積極的な企業も数多く存在する。しかし、セキュリティ先進企業においても、あくまでセキュリティは企業姿勢としては「守り」としての位置づけが基本である。必然的に、社外からの攻撃の有無とそれに対する防御、具体的な内容を伴う詳細なセキュリティ監査レポートを作成することが評価の基準となるわけだ。
しかし、残念ながら、経験則に基づいて申し上げると、経営陣がセキュリティ監査レポートの詳細を細かく見る可能性は非常に低い。これが、「IT部門に理解があって」ITによるコスト削減や売上高増加に関する業務レポートは時間をかけて見るような経営者であっても、である。
つまり、情報システムの担当業務のうち、セキュリティ業務は高い労働意欲がないとモチベーションの維持が難しい。それでいて、「何かあった」場合は企業の事業継続性を損なうような損害すら与えかねない。
企業にとって高いセキュリティ水準を維持することがいかに困難であるか、このさらなる詳細は別の記事に譲るとして、少なくとも経験の浅い新任の担当者に任せっきりにしてしまうのは大きなリスクを抱えてしまうことになるだろう。とはいえ、職域が高く経験が豊富な担当者は、「攻め」の基幹系業務システムの開発などに従事させたい。そうした“板挟み”になった際に有効なのが、実は「SaaS」なのである。
SaaSでのセキュリティサービス利用の背景
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SaaS/ASPで最も利用が進むセキュリティ分野
ECRでは、国内の一般企業に向けてSaaS/ASPの認知と利用に関するアンケート調査を2008年に行った。アンケートのサンプリングで獲得した回答数に対して、日本の企業デモグラフィクス(従業員規模別/業種別企業数)にあわせたウェイトバックを行い、アンケートで得られた結果が、日本市場全体としてはどのような規模感を伴うものなのかを分析した。その結果から、セキュリティサービスに関する結果を抽出してみる。なお、ECRでは、SaaSによるセキュリティサービスを、大きく「ファイアウォール・アクセス監視」、「ウイルスチェック」、「総合セキュリティ管理ツール」に分けて考えている。
ファイアウォール・ アクセス監視 | ファイアウォール、Webサイトへの不正アクセスなどの各種ログ解析サービス |
ウイルスチェック | クライアントPC内のウイルス、スパイウェアなどのチェック&削除サービス |
総合セキュリティ 管理ツール | キーワードなどによるフィルタリングサービス、インターネットでやり取りされた情報(アクセスログ、送受信など)の記録を保存し,セキュリティを総合的に管理するサービス |
Source:ECR発行『SaaS 市場戦略レポート』,2008 |
SaaS・ASPによるセキュリティサービスを契約している企業は、SaaSを認知・認識している企業17万8,400社のうち、ファイアウォール・アクセス監視が約2万6,000社、ウイルスチェックが約2万4,000社、総合セキュリティ管理ツールが約2万3,000社となった。これは、現在提供されているSaaS・ASPの中では、最も利用が進んでいる分野であることを示す数字である。
SaaSによるセキュリティサービス契約数
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Source:ECR発行『SaaS 市場戦略レポート』,2008 |
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