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  • 2024/07/08 掲載

もう誰も逃げられないAIとの「共生」、生き残りたい企業が速攻するべき「脱却」とは

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生成AIの普及をはじめとして、現在、ビジネスを取り巻く環境は急激に変化を迎えている。そのインパクトは、150年前の産業革命に匹敵すると話すのは、ガートナー ディスティングイッシュト バイス プレジデント アナリストの亦賀忠明氏だ。AIの進化によって人間の「無力化」すらも起こり得るこれからの未来、企業はAIに淘汰されず共生するには何を行えばよいのだろうか。亦賀氏が企業が必要な「ある脱却」について解説する。
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進化し続けるAIに対して人間はどう在るべきなのだろうか
(出典:ガートナー(2024年5月))

新たな「産業革命」が始まっていると言えるワケ

 2022年にChatGPTが登場して以降社会を席巻している生成AIをはじめとして、とどまるところを知らないデジタル技術の進歩により、社会やビジネス環境は大きな変化にさらされている。

 そんな変化が激しい現在について、「企業は今、デジタルの進化で引き起こされる歴史的な転換点に直面しています。そのインパクトは150年前の産業革命に匹敵し、今後はあらゆる産業、あらゆる業務の構造が抜本的に見直されます。その変化対応で肝に銘じておくべきなのは、新たな産業革命がすでに始まっているということです」と強調するのは、ガートナー ティングイッシュト バイス プレジデント アナリストの亦賀忠明氏である。

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ガートナー
ディスティングイッシュト バイス プレジデント アナリスト
亦賀 忠明氏

 手作業から自動化へ、オフィス中心からハイブリッドワークへ、固定的から変化対応とスケールへ──。こうした変化はすでに起こっている革命の一端だと亦賀氏は話す。

 この大きな変化を底支えする要素技術は、クラウドやIoT、AI、5G/6G、ドローン、デジタルツイン、ロボットなどいくつもあり、それらの進化とともに革命は加速していく。

 こうした要素技術に関するキーワードとして亦賀氏が提示するのが、要素技術間の多様な結びつきを意味する「メッシュ」だ。

「メッシュによって現実世界の自動車や建物といった多様な“モノ”が、人に新しいUXをもたらすデバイスとして新たに変わります。その仕組みを生み出し、実行したプレーヤーが新時代の勝者となります」(亦賀氏)

 これからの社会における勝ち残りで求められるのが、単なるデジタルへの対応を越えた、デジタルが前提となるビジネスモデルの創造だと亦賀氏は話す。

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これからはデジタルを前提としたビジネスを展開することが求められる
(出典:ガートナー(2024年5月))

 その一例として同氏が挙げるのが、エヌビディアが提供するメタバース構築プラットフォーム「Omniverse」を使ったBMWのデジタルツイン工場の事例だ。

 この事例では、2025年に生産開始予定の新工場における生産シミュレーションが実施されている。新車投入時に生じる工場内の構成変更がもたらす影響を改善するために、生産設備を含めたラインの状況、あらゆる部品と部材、人の動作といった現場のさまざまな情報を基にした多品種製造時の精緻な生産シミュレーションが実施されている。

「バーチャル検証を通じて、すでに変化対応工数が3分の1に削減されています。デジタルが当たり前の製造業の姿の1つです。生産に伴う物流情報との統合もすでに視野に入っています」(亦賀氏)

生成AIの進化により人は「絶滅」する?

1ページ目を1分でまとめた動画

 BMWの事例のように、時代の変化に即したビジネスモデルをすでに創造する企業がある一方、デジタル技術への対応に苦戦する企業も少なくない。

 2024年4月にガートナーが実施した調査では、10年以内にデジタルが自社ビジネスに破壊的な打撃を与えるとの回答は実に45.6%に達しているという。

「ところが、そのことが経営戦略に反映されている企業はごく少数で、行動を起こしている企業は国内ではニトリなどさらに限られます。新時代への適応、つまり旧時代の破壊に向け“チーフ産業革命オフィサー”を早急に設置し、自社ビジネスやITの再定義を開始すべきです」(亦賀氏)

 行動を起こす際には、社会で起きている変化についても把握しておくことが重要だ。

 今後の適応で鍵を握るテクノロジーはAIであり、医薬品設計や材料科学、チップ設計など広範に業務での工数削減や開発期間の短縮などで大きな成果を上げている。近い将来には、人間と同様の汎用的な知能を実現したAGI(Artificial General Intelligence)、さらに人間を超えた知能を備えたASI(Artificial Super intelligence)の登場も控えている。

 ただし、こうした新たなテクノロジーには思わぬリスクも潜んでいると亦賀氏は警鐘を鳴らす。たとえば、OpenAIは2023年7月、ASIの制御を目指した新チームを発足した。亦賀氏は「米中対立による政治的駆け引きの面もある」と前置きしつつ、そこでの表明に含まれていた「スーパーインテリジェンスの巨大な力は非常に危険な可能性があり、人類の無力化、さらに絶滅につながる恐れもあります」との一節があることを指摘する。

 こうした極端なケースまでいかずとも、AGIやASIの登場により、AIにより人の職が奪われることは十分に考え得る。ただ、そうした流れは歴史の必然として正面から受け止める必要があると亦賀氏は訴える。

「人はこれまで、機械化できる作業は機械に置き換えてきました。近年では飲食チェーン店で配膳ロボットが一気に広がっています。デジタルによる産業革命である以上、こうした大きな変化も受け入れるべきです。その上で人はテクノロジーではできないことを行い、どうAIと共生するのかを次世代の生き残りに向けて考えねばなりません」(亦賀氏) 【次ページ】企業が今スグ行うべき「脱却」とは

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