- 2007/03/02 掲載
気鋭のジャーナリストに聞く「NHK問題」のその後 / NHKと政治(2/2)
武田徹氏 |
武田●視聴者が「払う」「払わない」を判断できるようにすべきだという意見にはにわかに賛成しかねます。例えば、同意の上で受信料を支払い、番組を見るということではペイテレビという選択肢もあるのですが、お金を払ってから見るというのは、公共放送の在り方としてなじまないと思います。理想を言えば、見てからそれが本当に公共的なテーマを扱った番組かどうかを判断する義務が受信者の側にあって、その評価の反映が受信料であるべきでしょう。そして自分たちのメディアを自分たちで経済的に支えるということは重要。最近はフリーペーパーなんかが出てきて、情報は無料だという風潮にもなっていますが、それらは消費社会を前提としないと成立しないものですから、消費社会を本質的に批判することはできないんですよね。となると、消費社会の歪みにも警鐘を鳴らせるメディアを持っているというのは今こそいっそう重要になっているわけで、公共放送をいかに経済的に自立させるかという問題は、単に自分が今のNHKが気にくわないとかいう感情的なレベルを超えて議論される必要があると思います。
『NHK問題』(ちくま新書)
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武田●ネットにも同じように経済的独立の問題がつきまといます。アフィリエイト広告などでクリアできるという人もいますけど、それもやはり消費社会が前提です。AmazonやGoogleのことは批判できないという状況が生まれるということになりますよね。もちろんネットでもジャーナリズムとして成立可能な領域はあると思うんですけど、全方面でというわけにはいかないでしょう。それとプッシュメディアとプルメディアという違いもあります。どんなにいい告発がブログから行なわれても、誰も見なければ意味がないわけですよ。嫌な言い方ですけど、ジャーナリズムの力っていうのは量の力という部分も大きくあるわけですから。
――本書ではGoogle時代の公共放送の意義についても触れています。また、かつて堀江貴文氏は“ニュースの価値は人気ランキングで決めればいい”と発言しました。
武田●関心があるということは、すでに知っているということですよね。つまりはすでに用意されているものでしかないし、それを放送していたのでは内容や伝え方が保守的にならざるを得ないです。公共放送は誰も知らない、新しいことを伝えて、こんな問題があるんだけど、これは公共的なイッシューとして議論すべきではないでしょうかと問いかけてゆけるメディアであるべきだと思います。その時には誰も関心を持たないニュースでも10年、20年経って、このニュースが世界を変えたんだということが起こり得るのが公共放送であるべきだと思います。
武田徹(たけだ とおる):ジャーナリスト。
文化やメディアなど幅広いフィールドで執筆活動を展開している。また、ジャーナリスト育成にも力を注いでいる。
著書に『戦争報道』(ちくま新書)、『ニッポンの素』(新宿書房)、『核論』、『偽満州国論』(ともに中公文庫)など多数。
HP:http://homepage3.nifty.com/ttakeda/
(執筆・構成:速水健朗 協力:近藤正高)
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