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  • 2019/09/25 掲載

デジタル革新への処方箋、“情報銀行×AI”による消費行動の先読みが必要だ

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デジタル革新の原動力の1つとなっているのが、オフラインとオンラインのチャネル融合だ。これにより、両者で収集したパーソナルデータを統合的に分析することで、顧客の消費行動をよりきめ細やかに捕捉し、より良い顧客体験での新たな差別化につなげることが可能となった。では、その実現に向けた具体的な手法とは何か。TISのデジタルトランスフォーメーション企画部でエキスパートを務める鈴木翔一朗氏が、現時点での解の一端を披露するとともに、OrigamiでPRコミュニケーションディレクターを務める古見幸生氏が、デジタル化をけん引するスマホ決済の“今”を解説する。

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あらゆる企業が「デジタル革新」を求められている
(Photo/Getty Images)

オンラインがオフラインを呑み込む時代が来た

 「Digitize or Die(デジタル化するか死ぬか)」。現代マーケティングの権威であるフィリップ・コトラー氏が2015年に発したこのメッセージが現実味を増している。そのことは、デジタル革新で急成長する企業が相次ぐ一方で、そのあおりを受け、昔ながらの企業が不振に喘いでいることからも容易に理解できるだろう。

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TIS デジタルトランスフォーメーション企画部 エキスパートの鈴木 翔一朗 氏
 TISのデジタルトランスフォーメーション企画部でエキスパートを務める鈴木翔一朗氏によると、こうした時代が到来した背景には、デジタル化で生まれたオンラインの世界が、従来のオフラインの世界と同様に扱われるようになり、パーソナルデータの活用法が新たな段階に突入したことがあるという。

 かみ砕けばこうだ。従来、企業が現実、つまりオフラインの世界で消費者の行動を把握することは、その手立てが乏しいために容易なものではなかった。

 また、オンラインの世界では、各種ログから消費者の行動は把握できたものの、利用者は限られ、また、オンラインとは分断されていたことで、活用もその中にとどまらざるを得なかった。

 だが、オンラインの入り口となるスマホの登場と進化、さらに各種のデジタルサービスの拡充によるオンラインの利便性の向上が、この状況を劇的に変えた。

「これらにけん引されてオンラインの利用者が急増することで、企業もオンラインとオフラインを同列に扱い、両世界で収集されたパーソナルデータを紐づけするようになりました。結果、顧客のオフライン世界の行動が新たに可視化されるだけでなく、より大量のデータで消費行動を分析できるようにもなりました。そして、そこでの新たな気づきを基に、より良いデジタル体験を生み出した企業が、デジタル革新が進む中で頭角を現しているわけです」(鈴木氏)

 成功を収めた企業の代表として挙げたのが中国のビットオートだ。同社は自動車のWebメディアとして創業。その後、免許取得から自動車の購入、利用、売却という顧客が向き合わざるを得ない自動車のライフサイクル全体の行動に対して、必要なコンテンツとサービスをWebと実店舗で拡充することで急成長を遂げている。

 デジタル化は従来から、業務効率化を目的にあらゆる企業で進められてきた。その質が、オンラインとパーソナルデータを両輪に柱に利益を大きく左右する活動へと変わってきているわけだ。デジタルがリアルを呑み込む「デジタルオーバーラッピング」の動きは、その象徴でもあるのだという。

消費行動分析に特化したAIが秘める可能性

 デジタルを武器に成功を収めたビジネスの共通項として鈴木氏が挙げるのが、「顧客体験が斬新かつ極めて魅力的であるということ」だ。

 ただし、国内に目を転じると、そのために知見や経験を十分に備えた企業は、現段階で決して多くはない。とはいえ、「デジタル化が今後、国内でも加速することは明らかです」(鈴木氏)。である以上、他社に先んじるためにも、次の一手を早急に検討する必要がある。

 「その叩き台として、ぜひ検討を」と鈴木氏が披露したのが、「キャッシュレス」と「健康増進」を両立支援に向けたヘルスケアビジネスである。

 健康維持の方法は、スポーツをしたり、食品に気を配ったりなどいくつもあり、そこで利用/消費されるものもさまざまだ。ただし、それらの決済データは従来、オンラインとオフライン、さらに企業ごとに分散管理され、そのことが大量データによる提案高度化の壁となっていた。

 対して、鈴木氏のヘルスケアビジネスでは、リテール決済ソリューション群の「PAYCIERGE(ペイシェルジュ)」を利用することで、キャッシュレス決済の仕組みとともに、オンラインとオフラインの決済データについて企業を問わず一元管理/把握できる「情報銀行」を構築できる。

「これにより、どんな商品を、いつ、どれほどの金額で購入したといった情報を企業の垣根を越えて辿れるようになります。その分析により、顧客が次に欲すると推察されるモノやサービスを、そこに参加する企業が一丸となり、最適なタイミングにレコメンドすることで、提案の中身を格段に高度化することが可能になるわけです」(鈴木氏)

 たとえば、シューズを購入時に、ランニングに効果のあると思われるサプリを提案したり、運動イベントを紹介したり、睡眠グッズの提案や食事の指導を行ったりする。関心を持ちつつも、調べることの面倒さから実購入にまで至らない商品の多さを勘案すれば、こうした取り組みが顧客と企業の双方に少なからぬメリットをもたらすことは明らかだ。

 もっとも、そこで鍵を握るのが、「魅力ある提案を矢継ぎ早におこなえるかどうかです」(鈴木氏)。それを欠いた場合、サービスは遠からず飽きられる。その回避に向けた切り札に鈴木氏が位置づけるのが、トレンドや消費行動分析におけるAIの活用だ。

 実はTISは、人の行動パターン分析に特化したAI技術を手掛けるシンガポールのSQREEM社と今年5月に業務提携。「WebサイトのトラフィックやSNA投稿などのオンラインのオープンデータを独自に収集/解析するSQREEMのAIを利用することで、質の高い提案サイクルを回すことが可能となります。そのための仕組みの構築も、当社であればすぐに取り掛ることが可能です」と鈴木氏は笑顔で語る。

 鈴木氏によると、このビジネスアイデアはTIS内で検討が本格化しており、すでにアンケートでの評価調査も実施。結果は、「使いたい」との回答者は5割を突破し、中でも消費行動を測るうえで大きな指針となる20~30代の女性からの期待が特に高いのだという。

デジタル化の先兵であるOrigamiのインパクト

 一方で、デジタルを加速させる存在として、今、注目を集めているのがQRコード決済だ。現金がQRコード決済に置き換わることで、決済データから顧客の消費行動を可視化することが可能になるからだ。

 このサービスの国内での先駆けが、スマホ決済サービス「Origami Pay」を提供するOrigamiだ。

 その高い独創性と使い勝手から、同社の出資者には、トヨタファイナンス、銀聯国際、ジェーシービーなどの名だたる国内外の企業が名を連ねる。加盟店は今年末には145万に達する。

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OrigamiPRコミュニケーションディレクターの古見 幸生 氏
 OrigamiでPRコミュニケーションディレクターを務める古見幸生氏によると、Origamiでは加盟店が決済データをより有効に活用できるよう心を砕いているという。「決済データを自社で抱え込むことは一切考えていない」(古見氏)のもまさにそのため。Origami Payで収集される決済データなどは、あくまでも提携先や加盟店のものであるとの立場を取る。

「決済データを自身で収集/活用するとなれば、アプリ普及の意欲も高まり、結果としてOrigami Payの利用が広がります。そこでの安全、安心を担保しつつ、新たな付加価値を生むことが、金融ベースの技術会社である我々のミッションです」(古見氏)

 Origami Payで成果を上げた企業も相次いでいるという。

 東京のとある喫茶店では、常連客づくりを目的にOrigami Payの利用を決断。客足が鈍る雨天時に来客を促すメッセージを送ったり、Origami Pay自体の3%の即時割引、クッキーなどの追加注文を促したりといったことで、固定客の獲得はもちろん、客単価を735円から1078円と40%以上も高めることに成功している。

 また、30店舗を展開する美容院では、メッセージ機能や電子クーポンによるリピーターの獲得に向けOrigami Payを採用。結果、リピーターの増加に加え、現金管理の手間が省けるという副次的な効果ももたらされているという。

「デジタル化というと、“難しい”“コストがかかる”と捉えられがちです。しかし、Origami Payを使えば、身の丈に合ったIT化をITの知識が乏しくても容易に行えるのです」(古見氏)

 現実を踏まえれば、今後、デジタル化に向き合わない企業の先行きは危うい。そうした危機感を抱く企業を、TISはその技術力とノウハウ、さらに経験で協力に支援する。

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