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経産省によるロボットフレンドリー環境の推進
同日、別のセミナーでは惣菜盛り付け工程のロボット化について、経済産業省 製造産業局 産業機械課 ロボット政策室の佐藤 大樹氏のほか、日本惣菜協会 AI・ロボット推進イノベーション 担当フェローの荻野 武氏、コネクテッドロボティクス代表取締役/ファウンダーの沢登 哲也氏が講演した。こちらもレポートしておきたい。
経済産業省では「ロボットの未導入分野に、ロボットを導入しやすい環境を作る」ことを「ロボットフレンドリーな環境の実現」と呼んで、「ロボット実装モデル構築推進タスクフォース」という枠組みを作り、施設管理、小売、食品、物流倉庫の4分野で取り組みを進めている。
経産省の佐藤氏はロボットフレンドリー事業の今後についても紹介した。今後は「ロボット導入先進地域ネットワークの構築」を考えているという。実際の現場へのロボット導入の要となるのはシステムインテグレーター(SIer)だ。
地域によって大きな偏りのあるSIerのフォローを行う組織を作ることで、ロボット導入前の事前検討や調査、要件確認、そして運用開始後の運用・改善・保守を、外部機関が担えるようにする。具体的には全国各地域に支援機関を作って要件定義などを行う。この取り組みを全国に広げる。中小企業の困りごとを受け入れて、課題を発見し、作業工程を分解し、ロボットや自動化機器が担えるようにする。そしてSIerにつなごうという狙いだ。
同時に、知識がない企業に対するリテラシー向上も進める。その教え方や伝え方の情報共有も進め、全体の底上げを図る。そして中央と地域が連携してロボット導入を促進する。地域金融機関も取り込んで資金繰りもうまくできるようにしていきたいという。
特にこの最後のファイナンスに関する部分はとても重要だと筆者も以前から感じており、折に触れて講演などでも強調している。今後、実りのある取り組みとなることを期待している。
少数精鋭で挑む、惣菜業界のロボット化
惣菜盛り付け自動化については、惣菜協会の荻野氏が、300社を超える惣菜製造企業に参画を呼びかけても「実際に手をあげてくれる会社は十数社程度と、それほど多くなかった」という話が印象的だった。つまり、「新しいことに挑戦しよう」という人たちは、もともと数パーセントしかいないということだ。
その中で各社が協力して高速開発を進めたこの事業だが、成果物がどんどん導入されているとはまだ言い難い。今後は対応できる具材を増やし、機械の稼働率をさらに上げるために、別工程で同じ機会を活用できるようにすることも目指したいという。
惣菜盛付全工程ロボット化統合システム開発(マックスバリュ東海)
荻野氏はいつも渋沢 栄一の「合本主義」を強調している。つまり業界共通の課題、協力できる部分についてはみんなで協力すべきだという考え方だ。筆者も何度もこの話を聞いているのだが、それでも実際に現場を提供して協力しようという会社はわずか数パーセントという話を聞いて、改めてその重要性を実感した。
もともと、みんなが新しいことにチャレンジしようという機運のある業界ではないのだ。だがその中でも、少なくとも数パーセントは新しいことに挑もうとしている人たちがいる。その彼らの力を合わせることが重要だというわけだ。
惣菜盛り付けで求められる「汎用機」
コネクテッドロボティクスの沢登 哲也氏は2021年に初号機を完成させた惣菜盛り付けロボット「Delibot」を紹介した。ポテサラやきんぴらなどを盛り付けることができるロボットで、より省スペース、より多品種、より速いスピード、より安いコスト(生産性)を目指して、バージョンを3回上げている。
2025年には「デリボットS(仮称)」という標準化モデルを出す予定だ。標準機はさらに小型、重量300kg以下でキャスター付きと運びやすくなる。対応食材も増える。細片食材だけでなく、ブロッコリーや唐揚げなどにも対応する。
【Product】惣菜盛付ロボット「Delibot」_202311
惣菜は移り変わりが激しい。季節や時間帯によって異なる商品を作ることが求められるため、専用機ではなく汎用的に用いることができるロボットが求められているという。
また、食材盛り付けだけではなく、さまざまなトレーにも対応しないと「商品」としての完成度は上がらない。各部品の安定性のほか、現場での扱いやすさ、清掃や段取り替えなどの維持コストを下げる必要もある。盛り付け完成度を上げるためにAIも使って向上させた結果、「惣菜のはみ出し」などがなくなって見栄えが良くなり、売上が1.2倍上がったという。
ただ、実際にはロボットが盛り付けやすい容器であれば、もっと高速化が可能だ。そもそも定量盛り付けではなく、食材重量に応じて値付けする「不定貫」で良ければロボットはさらに高速に動かすことができる。不定貫にすると、人による手盛りに比べて、半分以下のコストに抑えることができるようになるという。「不定貫はスーパー、製造向上、消費者の三方良し」だと沢登氏は語った。
同社では「ロボットはサービス」だと考えており、RaaSモデルでビジネス展開を想定している。「働いたら働いた分だけ、できるだけランニングコストに近いかたちのリースで導入してもらうようファイナンス会社と話を進めている」と語った。
中小企業で進むパレタイズ・清掃ロボットの普及
展示会場の各ブースで話を聞いたところ、各社が口をそろえて「パレタイズロボットや掃除ロボットの引き合いは非常に多くなっている」と語っていた。中小企業の現場でも女性や高齢者の割合が増えているため「15kg以上のものを持たせたくない」と考える現場が急増しているそうだ。
また業務用清掃ロボットについても昨今の性能向上と小型化により、床面積のかなりの部分を清掃ロボットに任せることができるようになった。それが評価されている感触があるとのことだった。
よく言われていることだが、ロボットができる仕事はロボットに任せ、人は人にしかできないことをやるべきなのだ。その考え方が徐々に徐々に、だが確実に普及しつつあることを感じる。
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