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  • 2014/09/02 掲載

【シャープ事例】不具合相談による無駄な修理訪問30%減、ナレッジ活用率も47.9%に上昇

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「たとえば洗濯機修理の訪問でも居間にAQUOSがあれば画面クリーニングを行うといった対応をします。」修理完了後にさらに5分間顧客対応するシャープの顧客サービス。シャープでは、CS(顧客満足度)の向上に全社で取り組み、日本および海外で使えるナレッジ システムを構築。その取り組みと成果について、シャープ CS・環境推進本部 副本部長 兼 CS企画統轄の中川 潤子氏に聞いた。

グローバルCSの向上を目指して

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シャープ
CS・環境推進本部 副本部長 兼 CS 企画統轄
中川 潤子氏
 シャープ CS・環境推進本部 副本部長 兼 CS企画統轄の中川 潤子氏は、CSの向上を目指しシャープがどのようにサービスの事業に取り組んでいるかを紹介した。「『誠意と創意』という弊社の経営信条はCSの精神に非常に近いと感じています。すべてのお客様にいかに満足頂き、喜んでもらえるかを目指しています」と言う。

 CSは「品質」と「サービス」によって成り立ち、この2つを中川氏が所属するCS・環境推進本部が管轄している。各事業本部の品質統轄部門とも連携しCS、品質の向上には全社で取り組む。CSでは「絶対安全」は基本の必須事項として、事業本部の中でも品質確認は行うがCS・環境推進本部で承認しなければ出荷できないことにもなっている。

 サービスの基本は「お客様のお困りを迅速に解決する」ことだ。「サービスの対応が良ければお客様はシャープ製品のリピーターになって頂けます。再購入意向率がCSのKPIです」と中川氏、これをいかに上げるかが重要となる。

 お客様との接点が「お客様相談センター」だ。ここでお客様からの声を受け取る。センターでは「お客様応対」「アフターサービス」の2つでCS向上に努める。相談応対の過程で得られる情報を各事業部にフィードバックするのも重要だ。年間およそ350万件の相談を受け「おもてなしの心でお客様の立場に立って対応しています」と中川氏。そのためにはお客様の状況をいかに的確に理解するかが重要であり、担当者の解決力、技術力向上が課題となる。

 解決力、技術力向上にはナレッジが重要だ。「これがないと仕事が進みません」とのこと。新製品についても迅速なナレッジ蓄積に取り組んでおり、製品発売前から事業部担当者と連携しナレッジを収集、作成している。

 実際に修理作業を行うのはグループ会社のシャープエンジニアリングだ。出張修理が8割を占め、訪問先の限られた空間でも確実に修理できるよう、実際の家の居室環境を会社の中に用意し検証している。この施設は新人研修などにも利用される。また作業の見える化にも取り組み、故障箇所を素早く把握する故障診断ツールも開発している。ユニークな取り組みとしては「+5運動」がある。修理完了後にさらに5分間顧客対応するのだ。「たとえば洗濯機修理の訪問でも居間にAQUOSがあれば、お断りをして画面クリーニングを行うといった対応をします」と中川氏。

 サービス事業においては「不具合相談」の増加が課題だ。これは故障ではないがうまく機器などが使えず、お客様は故障だと思い相談してくるもの。「修理に行っても説明で終わることがあります」と中川氏。これは会社にとっては無駄なコストとなり、CSも低下させる。不具合相談を減らすために簡単メニューを搭載したり画面操作環境を改善したりと製品側でも改善に取り組む。そのためにサービスで得た知見をベースにCS推進本部と事業部が商品企画段階から連携している。もちろんナレッジを活用し、相談を受けた際に的確に課題を解決することが重要だ。

 海外におけるCSサービス活動にも力を入れている。シャープでは海外主要拠点にコールセンターを置き、グローバルでサービスを展開している。海外でも「不具合相談」の増加は課題の1つ。解決のために海外でもナレッジ システムを構築している。「日本でも海外でも共通に使えるナレッジがたくさんあり、それを翻訳し蓄積しています」と中川氏。

 このグローバル ナレッジ システムでPTCのソリューションが採用されている。選択理由は23カ国語に対応し「検索がさまざまなアプローチで行えるところも評価ポイントです。さらにコンテンツ比較機能もいい」と中川氏。このシステムはインドネシアとオーストラリアにまず導入されている。インドネシアでは2012年5月に導入し、2年で不具合相談による無駄な修理訪問を30%削減した。ナレッジの活用率も2012年度に23.1%、2014年6月時点で47.9%にまで上昇した。

 シャープではサービス活動による更なるCS向上を目指し、新たにサービス パーツ業務の改革にもチャレンジする。そのために、PTC Service Parts Management の導入も決めた。サービス パーツの管理は、従来は人手で過去の経験に頼っているところが多かった。在庫過多になる一方でバックオーダーを抱えるなどの状況も発生しており、これをなんとかしたいと考えていたのだ。新たなシステムを導入することで、適切な需要予測を行いパーツの生産、販売、在庫を最適化する。サービス パーツ管理を最適化するだけでなく、そこにかかっていた人的リソースの削減も目指す。新システムは2014年秋頃から導入を開始する予定だ。

 日本に比べ海外についてはまだこれからの部分もあるが「CSのマインドを世界に広げる活動をこれからも続けていきたい」と中川氏は言う。

経歴:
1978年4月、シャープに入社。デザインセンターや生活ソフト本部で、マーケティングやユーザー調査などを担当。1995年より、緊急プロジェクトチーム等で、超薄型ノートPC"MURAMASA"や、PHS スマートフォン"W-ZERO3"を企画開発。2009年10月、現CS環境推進本部に異動し、グローバル CS、サービスの統轄責任者として従事。


>次ページ 戦略的サービス事業への変革、苦労点と成功へのアドバイス

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