• 2024/10/01 掲載

焦点:中国経済、消費重視の構造変革に踏み出す 投資依存脱却への難路

ロイター

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[北京/香港 30日 ロイター] - 中国の習近平指導部が2024年の成長目標達成に向け、大々的な景気刺激策を打ち出した。経済成長のために、これまでの投資頼みから消費者重視にかじを切ったが、持続的な原動力にする道のりは険しい。

ロイターは先週、 中国財政省が新たな財政刺激策の一環で今年約2兆元(2840億ドル)相当の特別国債を発行する予定だと伝えた。うち1兆元が消費財購入の助成や子育て支援など消費喚起を狙ったものだという。

エコノミストは、中国が消費重視へ政策を転換しなければ、1990年代の日本のような長期低成長に向かう可能性があると10年余り前から指摘していた。エコノミスト・インテリジェンス・ユニットのエコノミスト、Tianchen Xu氏は「政策の思考転換という画期的な出来事だ」と評価する。

80年代以降、中国の成長モデルは、不動産、インフラ、産業への投資に過度に依存し、消費者は置き去りにされた。このモデルがインフラや製造業の過剰生産能力を生み、世界金融危機以降、投資リターンが減少する中、驚異的かつ持続不可能な債務急増を招いたとエコノミストは指摘する。

今年発表された「消費者重視」の一連の政策は、24年の成長率を目標の5%程度に押し上げるのに十分とみられる。だが長期的な見通しはほとんど変わらない。

中国の家計支出は年間国内総生産(GDP)の40%未満で、世界平均を20ポイントほど下回る。一方、投資の割合は20ポイントも高い。この差は一朝一夕には埋められない。

カーネギー・チャイナのマイケル・ペティス上級研究員によれば、日本はGDPに占める消費の割合を91年の底から10ポイント上げるのに17年かかった。今回、習指導部が発表した財政措置は「本当の意味での構造的リバランス(再調整)の一環ではない」と指摘する。中国経済は数十年にわたり、家計が直接・間接的に投資や生産を支援する構造だった。こうした構造を転換する必要があるという。

<構造変革の痛み>

現在の社会経済政策は、消費ではなく投資を支える構造になっている。家計は、低い預金金利、低所得の一因となっている労働者の権利や農民の土地権利の弱さ、脆弱な社会保障制度に圧迫されてきた。

税制は投資拡大と低賃金を助長している。株への投資などにかかるキャピタルゲイン税は20%で、インドの30%や米国の37%より低い。半面、個人所得税の最高税率は45%と、世界有数の高さだ。

戦略的産業を中心に企業は、中央・地方政府の両方から免税などの優遇措置を受けている。習指導部は、技術革新を国家安全保障に不可欠と見なし、電気自動車(EV)、グリーンエネルギー、ロボット工学など、「新しい生産力」と呼ぶ戦略的分野を手厚く支援しようとしている。

消費者に活力を与えるための政策の再構築は、何年もかけて大規模な調整を行う必要があり、リスクも伴うとアナリストは指摘する。

ファゾム・コンサルティングの中国エコノミスト、ホアン・オルツ氏は「経済のバランスを消費重視にシフトする『正しい』方法は、家計の資金で製造業を支援するのをやめることだ」と指摘。「その結果、製造業が縮小し、投資が急減し、景気後退に陥ることになる」と述べた。それでも中国は長期的な構造調整を選択し「日本化」する可能性が高いと同氏はみている。

今回発表した一連の支援策の財源として、中国政府は、企業・政府・家計間の所得分配の仕組みは変えず、国債の増発で手当てすると予想される。

カーネギー・チャイナのペティス氏は、「中央政府はおそらく、あと数年は財政移転の資金を賄えるだろう。しかし成長モデルを変革しなければ不均衡は拡大し続け、現在と同じ問題に将来直面するリスクがある。ただその時、中央政府の財政は混乱が起きた場合に対処できるような健全な状態にない」と警告した。

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