- 2024/07/02 掲載
焦点:AI主導の米株高、ドットコムバブルと類似点 バブル崩壊を警戒
Lewis Krauskopf
[ニューヨーク 2日 ロイター] - 人工知能(AI)を巡る興奮に後押しされた米国株の上昇は20年前のドットコムバブルと比較され、楽観論によって価格が再び膨らんでいるのではないかという疑問が強まっている。
AIフィーバーは底堅い経済と好調な業績と相まって、S&P500指数を2022年10月の安値から50%以上上昇させ、ナスダック総合指数も22年末から70%以上値を上げている。
株価のバリュエーションと投資家の熱狂は世紀の変わり目のピークにはまだ達していないが、類似点はある。
AI半導体メーカーのエヌビディアなど巨大テック株の一部銘柄が現在の市場を象徴しており、1990年代後半の「4騎士」(シスコ、デル、マイクロソフト、インテル)を想起させる。
懸念されるのはドットコムブームと同じ結末を迎える可能性だ。わずか3年余りで4倍近くになったナスダック総合は2000年3月のピークから02年10月までに約80%下落した。同じ期間で2倍になったS&P500はこの期間に50%近く値を下げた。
アマゾンのような一部のインターネット銘柄は生き残り、最終的には繁栄したが、他の銘柄は回復しなかった。
ウェルズ・ファーゴ投資研究所のグローバル市場担当シニアストラテジスト、サミール・サマナ氏は「AIで何が起こるか、誰も正確には分からない」と述べ、最終的な勝者についても同様の不確実性があると指摘した。
LSEGデータストリームによると、ドットコムブームと同様、IT(情報技術)セクターがS&P500全体の時価総額に占める割合は32%にまで膨れ上がり、35%近くまで上昇した2000年以降で最高となっている。マイクロソフト、アップル、エヌビディアのわずか3社が指数の20%以上を占めている。
ただ、テック株はドットコムバブルのピーク時よりも割安に評価されており、予想株価収益率(PER)は2000年の48倍と比べ、現在は31倍で取引されている。
この違いはエヌビディアと、ネットインフラを支える製品を提供するシスコのバリュエーションを見れば明らかだ。
データストリームによると、両銘柄とも急騰したが、エヌビディアの予想PERは40倍にとどまり、シスコは00年3月に131倍に達した。
キャピタル・エコノミクスのアナリストは、現在の株高は堅調な業績見通しによってもたらされており、ファンダメンタルズがより大きな原動力となっていることを示唆していると指摘する。
データストリームによれば、21倍となっているS&P500のPERは過去の平均を大きく上回っているものの、1999年と2000年の約25倍を下回っている。
キャピタル・エコノミクスは「われわれの基本シナリオは市場全体のバリュエーションが2000年のような水準に達するまで、このテックバブルは崩壊しないというものだ」としている。
ドットコムバブル時代の投資家はいくつかの指標では今よりも熱狂状態にあった。米個人投資家協会(AAII)の調査によると、高値圏では不安視されることが多い強気心理の割合は00年1月には75%に達していた。最近は44.5%で、過去の平均は37.5%だ。
AIバブルは既定路線ではないが、多くの投資家は米国の成長が堅調に推移し、ハイテク株が高値を更新し続ければ、可能性が高まると警戒している。
ジョーンズトレーディングの市場担当チーフストラテジスト、マイク・オルーク氏は「多くの類似点がある。バブルが発生する時、その背景には何らかの本物のポジティブでファンダメンタルな展開があり、それが代価をどれだけ払っても買いに向かわせる熱狂を生み出す」と語った。
*写真キャプションを修正して再送します。
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