- 2024/01/22 掲載
アングル:出遅れ中小型株に資金流入、循環物色で底上げ期待
[東京 22日 ロイター] - 日本株の上昇基調が強まる中、資金が中小型株にも流入してきた。大型株に比べて出遅れていたが、業績回復期待が根強い中で物色が広がりをみせており、相場の底上げにつながるとの期待もある。一方、急ピッチの株高による過熱感はくすぶり続けており、短期的な調整への警戒は根強い。
<物色が中小型株に波及>
22日の東京株式市場で日経平均株価は前営業日比583円68銭高の3万6546円95銭と、バブル後高値を更新し1990年2月以来の高水準を付けた。けん引役は生成AI(人工知能)需要への期待から前週末の米市場でハイテク株が上昇した流れを引き継いだ半導体関連株だったが、プライム市場の約9割が値上がりしており幅広い物色が確認された。
とりわけ、このところ出遅れていた中小型株の上昇が目を引く。年明け後の急騰相場では大型株の上昇が際立っていたが、きょうは大型株を指数化したTOPIXコア30が前営業日比1.32%高だったのに対し、コア30に次ぐラージ70が1.53%高、ミッド400が1.36%高、スモールが1.43%高と、いずれもキャッチアップするような値動きとなった。
いちよし証券の投資情報部・銘柄情報課課長、及川敬司氏は、中小型株は大型株に比べて出遅れ感が強かったとして「今年は業績面での改善期待が強い中で、先回りして買われているようだ」と指摘する。岡地証券の投資情報室長、森裕恭氏も「年初以降の大型株の上昇に乗り遅れてしまった個人投資家が、中小型株を物色し始めている面もありそうだ」とみている。
<根強い業績回復期待>
物色動向としては、大型株と同様に、芝浦メカトロニクスやKOKUSAI ELECTRICなど半導体関連に買いが入ったほか、丸井グループやJR東海といった消費関連も堅調だ。「消費者の値上げ許容度は高まっており、企業の値上げが浸透しつつある。一方、原材料コストの上昇は一服感もみられ、業績修正への期待が強い」(いちよし証券・及川氏)との声が聞かれる。
きょう上昇が目立ったのは不動産株で、「国内金利は低位にあり、金融緩和政策が続くのであれば目先の懸念材料はない」(国内運用会社ファンドマネージャー)という。あすは日銀の金融政策決定会合の結果発表や総裁会見が行われるが、大きなサプライズは見込まれていない。
業績回復期待の強さも、中小型株に資金を向かわせているようだ。米景気の底堅さが意識され、国内企業の業績下振れ懸念が後退してきたと声が聞かれる。
直近では、前週末19日に発表された1月米ミシガン大消費者信頼感指数(速報値)は2021年7月以来の高水準となった。一方、1年先のインフレ期待は12月の3.1%から2.9%に低下し、20年12月以来の低水準となった。
三菱UFJアセットマネジメントのチーフファンドマネジャー・石金淳氏は、米景気のソフトランディング期待が一段と高まったとみている。「米株が調整に入る、あるいは米国のインフレが加速することが足元の日本株にとって嫌なシナリオだったが、その両方の可能性が低下している」(石金氏)という。
<短期的な過熱感も>
資金流入が中小型株に広がってきたことで相場の底上げが期待され、テクニカル面でも目先は上方向の節目らしい節目が見当たらないことから、日経平均の市場最高値3万8915円87銭を意識する声も出始めている。
GCIアセットマネジメントのポートフォリオマネージャー・池田隆政氏は「日経平均の200日移動平均線からの乖離率が目先20%程度まで上昇する余地があると仮定すると、3月までに3万9000円近辺をトライする可能性もあるのではないか」と話す。同乖離率は22日時点では約14%となっている。
米景気が底堅いことや日銀の早期政策修正観測が後退していることなどから、株式市場を取り巻くファンダメンタルズ面からのリスクを指摘する声は現時点では少ない。
もっとも、株価は短期間で大幅上昇しただけに過熱感は強い。日経平均は昨年末に比べ3000円超上昇。25日移動平均線からの乖離率は5%以上で買われすぎが意識されるところ、足元では7.2%と高水準にある。
ネガティブな材料が出ればいったんは利益確定売りが強まりかねず、岡地証券の森氏は「株価のボラティリティーが高まっている分、1000円など値幅を伴った調整が入るリスクは十分ある」と話している。
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