- 2024/01/18 掲載
アングル:調達コスト高に販売不振、苦境深まる香港の不動産業
[香港 12日 ロイター] - 香港の不動産開発会社が年明け後に一段と窮状に追い込まれている。資金調達コストの上昇や、住宅販売および賃貸オフィス市場の低迷が原因。債権者や投資家は、不動産会社の財務の健全性に警戒感を強めている。
4人の消息筋によると、香港の不動産会社は借り入れ比率の高い業者や弱小業者が一部大手行から新規融資を打ち切られ、プライベートクレジット(銀行を介さないファンドによる企業融資)市場でより高コストな融資を求めざるを得なくなっている。
かつて活況を誇った香港の不動産市場は先行き不透明感が強まり、銀行の多くは既存の融資を圧縮したり、不動産業者に担保の上乗せを求めたりしている。その結果、資金調達コストはさらなる上昇が見込まれており、住宅販売の低迷や記録的高水準にあるオフィス空室率を考えると、今年は不動産開発会社にとって昨年以上に厳しい年になりそうだ。
投資家は香港の不動産会社が中国本土の業者のようなデフォルト(債務不履行)に陥るとは見込んでいないが、このセクターがすぐ回復するとも見ていない。
ハンセン不動産指数は昨年30%急落し、2019年4月に付けた最高値から60%下げており、投資家はこのセクターの先行きに慎重な見方をしている。
香港の不動産市場はグレードAのオフィススペースの空室率が過去最高の16.4%に達しているほか、住宅価格が今年もスパイラル的な下落を続けると予測され、UBSとシティは既に21年のピークから20%下げた住宅価格がさらに10%下落すると予測している。
UBSのアナリスト、マーク・ルーン氏は「香港の弱小業者の一部が十分なキャッシュバッファーを持てるかどうかは、地元経済の回復スピードと金利低下のタイミングにかかっている」と述べた。同氏は、金利引き下げは下半期以降と見込んでいる。
<危機の連鎖>
香港の不動産会社は数十年にわたって順調に成長したが、その後は2019年の反政府デモ、新型コロナウイルスのパンデミック、域内と中国本土の景気回復の遅れなど危機の連鎖に見舞われた。
業者の利ざや縮小は、長年にわたり低水準が続いた資金調達コストが急上昇したのも一因。1カ月物の香港銀行間取引金利(HIBOR)は09年から17年まではゼロ近辺で推移し、22年初頭もわずか0.2%だったが、その後急騰して昨年11月には07年以来の高水準となる5.66%を付けた。
もっとも、こうした向かい風にもかかわらず、香港の不動産開発会社は一般的に中国本土の業者よりも負債比率が低く、事業や収益の多様化も進んでいることから、債務不履行を回避できると予想されている。
とはいえ、商業銀行は不動産開発会社の返済能力への懸念を強めており、同セクターへの投融資を圧縮していると、信用市場や不動産業界の関係者は指摘する。
香港金融管理局(HKMA)のデータによると、不動産開発・投資向け融資総額は23年第2・四半期から減少し始め、第3・四半期は第1・四半期と比べて5%減った。
プライベートクレジット市場の関係者は「同市場が銀行からの資金調達の落ち込みを穴埋めしている」と説明。不動産会社は銀行からの借り入れが不可能になり、昨年以来、プライベートクレジットから借り入れる業者が増えていると話した。
「クレジット業界はこのセクターに対して慎重姿勢だが、態度は一律ではない。キャッシュフローが豊富な業者はまだ資金調達に問題が生じていないが、借り入れ比率の高い業者の中には市場からの借り入れが全くできないところもある」という。
3人の消息筋によると、金利は銀行の6%程度に対して、プライベートクレジットは10%ないし20%。市場評価額がさらに下がる事態に備えるため、LTV(総資産に占める負債の割合)は60%以下から30%程度に厳しく抑えられている。
<投資家は慎重>
シティは先週、香港の不動産会社数社の格付けと目標株価を引き下げた。資本支出が多いこともあって今年はキャッシュフローがマイナスになりそうな企業もあると警告した。
格下げされたのは新世界発展と恒基兆業地産(ヘンダーソン・ランド)で、いずれも借り入れ比率が高い住宅大手。ホンコン・ランド、恒隆地産といった非住宅業者も格下げを受け、香港株式市場では不動産会社株が軒並み大幅下落した。
JPモルガンは調査ノートで、香港の不動産セクターで空売りを模索しているヘッジファンドが増えていると分析。「2024年には金利が下がるかもしれないが、住宅価格やオフィス・店舗の賃料が引き続き期待を裏切る可能性があり、大半の投資家は今が香港不動産市場に参入する最良のタイミングだとは感じていない」と指摘した。
PR
PR
PR