• 2024/01/08 掲載

アングル:今年は高金利時代への移行鮮明に、投資家の想定崩れる事態も

ロイター

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Paritosh Bansal

[2日 ロイター] - これまで利上げを続けてきた西側の主要中央銀行が、いよいよ待望の利下げ路線に転換する時期が近づいている。投資家はそう確信しているもようで、結果的に資産価格が上昇した。だが資金コストが相応に高くなる新たな経済構造へと世界が向かう中で、2024年は想定外の出来事が起きてもおかしくない。

ここ数週間は、中銀当局者が過早な利下げ期待をけん制しているにもかかわらず、世界的に株高・債券高が進んできた。例えば米国で投資家が構築したポジションは、連邦準備理事会(FRB)が景気後退(リセッション)を招かずにインフレを抑えるという完璧なソフトランディングを想定したものだ。

そのような確信の背景には、米経済が驚くほど底堅く推移している状況がある。逆風を和らげる働きをしてきたのは、コロナ禍で消費者が積み上げた貯蓄と、混沌を増す世界において米国が安全な投資先として魅力があるとみなされる点だ。有名なエコノミストや元FRB幹部らも、FRBは一般に考えられている以上に何度もソフトランディングに経済を導いてきたと主張している。

ところが今回の場合に限れば、ソフトランディング実現の確率は低いとの見方が多い。コロナ禍関連の貯蓄は払底しつつあり、とりわけ荒れそうな米国の大統領・議会選が近づくとともに、経済の先行きには暗雲が立ち込めている。

投資家は、24年末までにFRBが政策金利を最大1.5%下げる可能性を見込んでいるが、それでも金利水準は4%近くと、過去20年間のほとんどの時期よりも高い。この水準は、景気に対して中立的とされる自然利子率を上回っており、金融政策は引き続き経済成長の足を引っ張る形になる。

<金利の重要性>

金利は経済成長から金融資産価格、自動車や住宅の購入費用まで全ての価値を決める基本要素になっている。

これが上昇すれば、ハイテク株や暗号資産(仮想通貨)などのリスク性資産の魅力は低下する。投資家は多大なリスクを背負わなくても、相応のリターンを得られるからだ。

資金調達が困難になるほど、リスク志向の投資は失敗しがちとなり、バブルが破裂して23年3月の米地銀危機のような事態に発展。企業は経営が苦境になると身の丈を縮めるため、失業が発生するとともに新規雇用が乏しくなる。

<24年に及ぼす影響>

FRBや他の中銀は1年余りにわたって利上げに動いてきたとはいえ、世界はまだ資金調達コストが実質ゼロの局面から対価を必要とする局面へと完全に切り替わったわけではない。24年はその移行に伴う影響がより鮮明化する公算が大きい。

つまり特定の企業や、時には幾つかの国家全体が利払い負担に耐えられなくなって債務再編を迫られる。新興国の一部が行っている債務交渉や、企業破産の増加傾向でそうした兆しは既に明らかだ。米企業の破産申請件数は20年以降最多となっており、今後さらに増加するだろう。

実体経済に目を向けると、コロナ禍後の働き方の変化で大打撃を受けたオフィス市場を含む商業不動産などのセクターは、一段と痛みが大きくなる。より多くの家主は、保有不動産の再評価や投げ売りを迫られ、そうした損失は銀行と投資家に波及する。

消費者にとって、貯蓄の利回り収入は増えるだろうが、借り入れコストも増大して軌道修正が必要となる。多くの米国の成人は、30年の住宅ローン金利が低い時代しか知らないが、これからは水準が2倍以上に切り上がる中で予算をやりくりしなければならない。

一番大事な問題は、誰もがより高い金利とともに生活する方法を模索することを余儀なくされるのに伴って、投資家が現在抱くさまざまな確信も試練にさらされるということだ。

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