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- 2020/09/21 掲載
「FEDビュー」と「BISビュー」とは?金融政策の伝統的な2つの立場を解説
【連載】エコノミスト藤代宏一の「金融政策徹底解剖」
リーマンショック時に脚光浴びた「BISビュー」
一般的に中央銀行に課せられた責務は「物価の安定」であり、資産バブルの防止と、その崩壊後の対処は直接的な責務ではない。しかしながら、金融政策が資産価格に影響を与える以上、中央銀行にとって資産バブルは避けて通れない問題である。資産価格と中央銀行の政策スタンスについては、大きく分けて2つの考え方がある。
1つは「FEDビュー」、もう1つは「BISビュー」と呼ばれるものである。FED(連邦準備制度)は米国の中央銀行制度であり、BIS(国際決済銀行)は、金融面で国際調整を担うための機関の名称である。
まず「BISビュー」では、資産バブルを未然に防止することを重視する立場をとる。市場にバブルの兆候が見られた場合、速やかに予防的な金融引き締めを実施すべきとの考え方である。バブル期の過剰投資がその後の深刻かつ長期の不況を招くため、そうした代償を払うくらいならば、不人気政策である金融引き締めを早期に講じるべき、というわけだ。
1980年代後半の日本のバブル、2000年代半ばの欧米住宅バブルが引き起こしたリーマンショックなど、これらの敗戦処理中にはBISビューがもてはやされ、バブルの温床を醸成した中央銀行を批判する声が増えたのも事実である。
臨機応変な政策スタンスの「FEDビュー」
一方のFEDビューは、おおまかに言えば「物価安定」の達成を目的とする金融政策の結果、資産価格が大幅な上昇を示したとしても、それを金融引き締めによって阻止する必要はないとの考え方である。このような立場をとるのには、考えるべきいくつかの問題点があるためだ(下図)。
- 資産バブルが発生しているときに客観的な判定ができない
- バブル退治のために金融引き締めを実施したとしても、それによって資産価格の急騰が収まるかは分からない
- 引き締めの結果として生じる実体経済への悪影響が無視できない
- バブルを未然に防ぐことを重視した結果として、失業が発生するくらいならば、バブルが崩壊してから、その時々の状況にあった対策を講じた方が全体として望ましい政策運営ができる
【次ページ】FRBの金融政策を整理すると……
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