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- 2020/09/08 掲載
第1四半期・決算まとめ、赤字転落・減益予想の企業続出、株価はどうなったか?
【連載】井出真吾の「株式市場を読み解く」
業績見通し「未定」だった企業の半数弱が開示
通常、3月決算企業は前年度の決算を発表する4~5月に今年度の業績見通しを公表するが、今年は「コロナ禍の影響が見通せない」として期初に開示した企業は全体の42%にとどまっていた。第1四半期決算と併せて26%の企業が通期見通しを公表したものの、いまだ3割超が「未定」だ。1Q決算で開示した企業の深刻すぎる業績見通し
今回開示した企業を含む約1,000社について最新の業績見通しを2019年度の実績と比べると(経常利益ベース)、全体では25%の減益を見込んでおり、コロナ禍の影響が大きいことが分かる。こうした見通しを期初に開示済みだった企業と、今回の決算で開示した企業に分けると、期初に開示済みだった企業は14%の減益予想にとどまるのに対して、今回開示した企業は38%減益と大幅な悪化を見込んでいる。減益率は期初予想を公表していた企業の3倍近い。
業績見通しの内訳を詳しく見ると、「期初に開示済み」の企業は社数ベースで33%がコロナ禍でも増益を見込んでいるほか、57%(すなわち過半数)の企業が50%以内の減益で済む見通しだ。
これに対して「今回開示」した企業では増益見込みの企業が15%にとどまり、「50%以内の減益」も45%と相対的に少ない。その分、「50%超の減益」が24%を占めるほか、「赤字転落や赤字拡大」を見込む企業が16%に上る。
このことから、図表2の結果は、特定の企業が足を引っ張っていることによる見通しではなく、今回開示した企業が全体的にかなり厳しいことが分かる。
新型コロナの影響は、市場予想を超えるほど“ヒドイ”?
「今回開示」した企業の業績見通しは市場予想との乖離(かいり)も大きい。証券会社のアナリストによる業績予想の平均値と、実際の会社側の業績予想を比較すると、全体では会社予想が14%ほど下回る(経常利益ベース)。中でも「今回開示」は市場予想を20%下回っており、市場は想定以上に悪い内容を突きつけられた格好だ。
一方、期初に開示していた企業は9%の下方乖離にとどまり、この程度の乖離は通常の範囲内と言える。期初予想が“発射台”となったことで、今回の決算発表に対してアナリストがあまり楽観的な見通しを出さなかったためだろう。
邪推かもしれないが、今回初めて開示した企業の一部には、「コロナ禍の影響を見通せないため」というよりも、「あまりに内容が悪いため」期初時点での見通し公表を見送ったという事情もあるかもしれない。
【次ページ】厳しい見通しに株価は急落……明暗を分けたポイントとは
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