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- 2009/07/16 掲載
【セミナーレポート】成功をおさめた起業家らが、グローバルリーダーへの道を理論、実践の両面から指導
5月22日-23日開催セミナー「アメリカン・エキスプレス・アカデミー with DREAM GATE」
≫【セミナーレポート(1)】「リーダーシップ育成」 茂木健一郎氏、AMEX サイデル社長が語る
変化に強くあるべき
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そこでは消費者の命を守ることが第一に挙げられている。さらに各務教授はこの信条に関連して「タイレノール事件」を紹介した。1982年に米国でタイレノールに違法にシアン化化合物が混入されたという事件だ。関連する全商品の速やかな回収と積極的な情報開示が行われた結果、事件後のタイレノールの売上は数ヵ月で事件前の80%にまで回復した。経営的危機の回避に成功した背景には、信条の徹底により緊急時にすぐに全社一丸となれるベースができていたことと、ニュースメディアを最高のパートナーと認識し、公正な情報開示を行ったからだと各務教授は指摘する。
CEOの役割については、「最高経営責任者という訳は正しくないと思っています」と言い、むしろ「Chief Executive Officerなのだから首席執行役員(現会社法でいえば代表執行役)とすべき」と、自説を展開した。
「Officeとは本来は『命』という意味。Officerは実行のために命をかける人。CEOは最前線に立ち命がけで目の前の戦に勝利するというミッションを与えられた最高戦線指揮官でなければいけません」
さらに執行役の役割について説明する中でGEのジャック・ウェルチ元CEOを紹介。ジャック・ウェルチは徹底した戦略追求と後継者育成に取り組み、「企業は戦略なり」「企業は人なり」を実践し、GEを成長させた。しかし後継者のジェフリー・メルトはCEOを引き継ぐ際には「ジャックがやっていたことはすべて変える」と言わんばかりの勢いであったとし、変革とさらなる成長にその後取り組んでいるという。各務教授はこうした姿勢にこそ、グローバル競争の本質が見えると言う。
「欧米やアジアのトップ企業は変化し続けようとします。それに対して日本の企業は改善を積み上げ、波風を立てずに対処しようとします。これではグローバル競争で勝てません」
昨今では環境が大きなファクターになるなど、良い企業や良い経営の定義さえ変化している。こうした中で、これからのリーダーはビジネスを取り巻く多くの変数を見ながらガバナンスを行わなければならない。そうしたことを語ったうえで各務教授は、グローバルリーダーに求められる要件を次のようにまとめた。
「現実を直視する中で、企業目的を示し、社内で共有すること。戦略を作り、追求すること。社会的側面を考えること。そして、想像力と創造力を持つこと。特に、業績と社会的責任はトレードオフではありません。二兎を追う強い信念を持つことが必要です」
ベンチャーの本質
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「ライブドアや楽天市場など、成功と言われているベンチャー企業でさえドメスティックなまま。サイボウズももちろんそうです。それに対してGoogleはグローバルに展開し、巨大企業になりました。グローバルなベンチャーをやってみたかった私は、そこにある違いは何なのか、知りたかったんです」
高須賀氏は続けて、ベンチャー企業と従来企業との違いについて説明を始めた。従来企業は規模の大小を問わず、堅実に売上を上げられる事業を持っている。確実性が高い中で事業を展開し、それを大きくすることを考えなければならない。一方、ベンチャー企業は堅実な事業をまだ持っていない状況からスタートしなければならないと、高須賀氏は言う。
「ベンチャー企業は、ベースとなる事業がまだ何もない状況から始めなければなりません。ベンチャー企業の規模の違いは、展開しようとする事業の不確実性の高さによります」
高須賀氏はビジネスに必要な要素をコンセプト、戦略、実践の3段階に分類し、大規模な従来企業とベンチャー企業との違いを説明した。コンセプトの段階では不確実性が高く、実践の段階では不確実性が低くなる。大企業はコンセプトより戦略、戦略より実践にリソースを配している。1980年代までは不確実性が低くゴール設定が明確だったため、実践部分が最も重要であり、実践部分にリソースを最も大きく配するのが正しかった。
「不確実性が低く、数字で計算できる分野は大企業の得意分野です。反対に、不確実性が高すぎてまったく見えない分野は、ビジネスとして成立しません。ビジネスとして成立するギリギリの分野、不確実性の極大化こそがベンチャーの本質です」
不確実性が高く、一般には見えていなかったものがマーケットに入ってくることで、既存の強弱関係を破壊する。これは、不確実性の極大化が導く、新たな確実性の創造だと、高須賀氏は語る。その破壊力の大きさ、すなわち不確実性の高さにより、ビジネスの規模が決まるというのが高須賀氏の考えだ。
最後に高須賀氏は、不確実性についてさらに深く考察した。不確実とは言え、そこにはビジネスのロジックがなければならない。ロジックはあり、数字で解決できる話は合意形成が簡単だが、大きなビジネスにはならない。ロジックはあるのだが、数字では説明できない程度の不確実性が、ベンチャービジネスにはちょうどいいと言う。
「感覚的な目安としては、プロの意見を聞いてまわると賛否両論になるくらいがちょうどいいと思います。50対50くらいが理想ですね。ただ、こちらは合意形成が難しいですよ」
理想のリーダーシップを追い続ける旅
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「リーダーには、善玉リーダーと悪玉リーダーがいるということだと思います。自分の夢と世界との折り合いをつけた人が善玉リーダー、エゴに捉われてダークサイドに堕ちた人が悪玉リーダーと言ってもいいでしょう。経営者として夢を実現しようと歩んでいくことは、理想のリーダーシップ像を追い続ける旅。私自身も、まだ旅の途中です」
この後、浜田氏は自身の経歴を紹介。アメリカでコンサルティング会社にいた当時のことや、デルコンピュータ 日本法人代表取締役社長および米国本社副社長などを経てHOYAのCOOに就任したいきさつを語った。常に目指してきたのは「世界に通用するプロのグローバル経営者」だと浜田氏は語る。企業の成長とともに経営者としての個人も成長していかなければならないが、追い付かないことも多く、ドロップアウトしてしまうことも多いという。
「しかし、ドロップアウトは悪くありません。敗者復活戦だってあります。重要なことは、経営リーダーとしての成長サイクルを作ることです」
5人の仲間、50人の軍団、500人の組織ではそれぞれリーダーシップの発揮のしかたは違う。規模が大きくなればマネジメントシステムを作り、人を通じた経営をしなければならない。優秀な人を集め、ステージに合わせて自分を成長させていく必要がある。一方で、人はエゴに負けやすい弱いものでもあると、浜田氏は言う。エゴに負けて悪玉リーダーにならないために、人の弱い側面を常に自覚していなければならない。
経営リーダーの資質については、心技体の3つの要素に分けて説明された。心は意志の力、正義感、責任感などの人間力。技はビジネスへの理解力、コミュニケーション力、イマジネーション力、経営理論の知識や知性。体は肉体のことではなく、成功体験や失敗体験など、体験の“体”だと解説。この3つの要素が揃った上で、みんなが心に誓うことができるゴールを設定、共有し、自分とチームメンバーの連帯感を作り、エネルギーに満ちたチームを作って実行することがリーダーの役割だ。
浜田氏はさらに、グローバル経営リーダーとして成長するための要件を、自身の経験を踏まえて次のように語った。
「母国語圏を飛び出してリーダーとしてやっていくためには、高度な経営スキルと異文化の中でのコミュニケーション能力、個人としての圧倒的な魅力が必要です」
国や文化を超えて通用する経営手法やコミュニケーション手法は、日本国内だけの体験からは得られないものだ。自身を含め、日本で育ってきた者に当たり前のように身についている偏見や偏った倫理感は通用しないと指摘。国や文化を超えて共有できる普遍的な倫理感、慈愛や高潔さを知らなければならないという。また、グローバルと欧米かぶれは違うとも警告。自分の育った国を愛せない人間には他の文化を理解できるはずはないという考えだ。
「好きか嫌いかではなく、違うのだと知ることが大切です。そのうえでお互いが歩み寄るのを待つのではなく、相手に合わせてコミュニケーションのしかたをシフトすることで、国や文化を超えて価値を共有できます」
続いてグローバルカンパニーの実例として、自身が現在在籍するHOYAにおけるガバナンスを具体的に紹介した。ポイントは高い透明性を保っていること、嘘をつかないこと、速やかな経営判断を行っていることだという。
浜田氏は講演の最後に、次のようにリーダーシップに関する思いを一言に込め、参加者に投げかけて講演を終えた。
「人の心をどうやってつかむか。人の心にどうやって火をつけるか。これがリーダーの本質です」
3名の講演者が、それぞれの立場からリーダーシップについて、理論と実践の両面から語ったこれらの講演。リーダーとしてこれから成長していこうとする参加者にとって大きな糧になったに違いない。
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