「準備は整った」、オラクルがエンタープライズ向けクラウドで自信を見せる3つの理由
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大阪リージョン開設で「あらゆる企業でDX加速化の準備が整った」
今回の大阪リージョン開設は、同社がグローバルでデータセンターリージョンを36拠点に拡大させる取り組みの一環だ。2月3日に行われた記者発表会では、日本オラクル 執行役 最高経営責任者のケネス・ヨハンセン氏が登壇、「Oracle Generation 2 Cloud」と呼ばれるIaaS、PaaS、SaaSのすべてのサービスを新データセンターで提供すると述べた。エンタープライズをはじめとする多くの企業で、クラウド環境における高い可用性が求められている。また、データ活用により、新たな成長領域でアプリケーションやサービスを開発し、ビジネスモデルを変革するデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進、実現していくためには、データマネジメント、特にクラウドにおけるデータのセキュリティは重要なポイントとなる。
ヨハンセン氏は、この点についても「データは日本のコンプライアンスに準拠し、日本で保護されていなければならない」と話した。「Oracle Cloud」の利用企業は、東京、大阪と国内データセンターで日本の法規制にも準拠した形で保護できるため、国内での2つのリージョン体制によって、「企業ITのあらゆるワークロードを、エンタープライズ品質で、よりセキュアにクラウド上に移行、構築することができる」というのだ。
これにより、将来のさまざまなビジネス要件に応えデータ・プラットフォームを構築し、「あらゆる企業でDXを加速化する準備が整った」とヨハンソン氏はコメントした。
この記者発表の内容を受け、日本オラクル 執行役員 クラウド事業戦略統括の竹爪慎治氏に、企業ITのクラウド移行の現状や、課題について聞いた。
DX推進を阻む、レガシーと新たなシステムとの連携
DXを進めていくためには、データを活用しながら、新たなサービスを創出するために「既存システムをモダナイズすることで、運用コストを削減し、そこから得られたコスト、リソースを、新しい領域に再配分する」ことが大事だ。
しかし、現実には、そこに大きな課題がある。多くの企業で、業務効率化をはじめ、製品やサービスの高付加価値化に取り組んでいるものの、「その先にある、さらなる新規製品やサービスの創出まではつながっていないのが現状だ」という。
その理由の一つとして、「レガシーシステムと新領域システムとの連携」が課題として挙げられる。レガシーシステムは、長期的な視点に基づく計画、コスト設計がなされ、より高い堅牢性が求められている。こうした“重厚長大”なシステムと、新たな成長領域である、俊敏性や柔軟性が求められるシステムとの連携には、統一的なセキュリティの担保が課題になる。
さらに、いわゆるエンタープライズ要件と呼ばれる可用性、拡張性、信頼性といった非機能要件の実現が、まだまだクラウドでは難しいのが現状だ。
そして、RDB(Relational Database:関係データベース)についても、エンタープライズ規模の大規模DBのトラフィックをパブリッククラウドで担うには相当な困難を伴う。竹爪氏によれば、「複数のDBに対して、それぞれの性能、セキュリティの一貫性を保つには、膨大なコストと時間、SI力が求められる」からだ。
「DXを推進する企業が、検証(PoC)から本番実装に移行していく中で、検証時には重要視してこなかったような、大規模データベース運用の信頼性や拡張性などの要件が重要視されてきます」(竹爪氏)
そこで、柔軟性や俊敏性といったクラウドの利点を保ちながら、「エンタープライズ品質」の非機能要件を担保するクラウドサービスが求められているのだ。
「Oracle Cloud」の3つの競合優位性
そこで、既存のレガシーシステムと新規のシステムの連携、活用に有効なのが、「Oracle Cloud」のシングルアーキテクチャだと竹爪氏は話す。DX実現のステップとして、まずは、クラウドへ既存のレガシーシステムをシフト。そして、データ利活用の柔軟性や、スピーディなアプリケーション開発体制を実現しながら、新たなシステムと既存システムとの連携を実現していく。これを、オラクルクラウドの統一されたシングルアーキテクチャのプラットフォーム上で実現していくのだ。
こうしたDXジャーニーは、「特に、スモールスタートでDXを推進し、拡張していく企業に有効だ」と竹爪氏は語る。
「Oracle Cloud」差別化要因は次の3点だ。
(1)価格とテクノロジー
「Oracle Cloud」はプロセッサ当たりのスループットが高く、お客さまに対して高いコストパフォーマンスを提供できると竹爪氏は説明する。
従量課金のクラウドにおけるTCO(総所有コスト)は、時間あたりのコストと、性能の掛け合わせで決まる。
「Oracle Cloud」はブロックストレージに新しいテクノロジーを投入し、ネットワークについても「IOPS保証と、ネットワーク通信料に応じた“隠れコスト”について、これを明示的に定義した課金体系により、競合事業者に比べ、2倍以上の価格差を実現した」という。さらに、全世界のリージョンで統一された価格を提示している。
(2)クラウド・セキュリティ
「Oracle Cloud」は「セキュリティ第一で設計されたクラウド」だと竹爪氏は語る。エンタープライズDBで40年近く蓄積したノウハウをクラウドに実装し、IaaS、SaaSを含めたすべてのレイヤーで暗号化を実装。さらに、仮想化レイヤーのテナント分離を実現することで、「他社のデータ侵害が自社に影響を及ぼさない」高度なセキュリティを実現した。
また、自動化されたセキュリティ管理、運用も特長だ。パッチ適用だけでなく、オラクルの専門チームにより推奨される設定やセキュリティ運用が自律的、自動的に適用される。
(3)データ・プラットフォーム
データドリブンなビジネスを構築するためには、大規模データを運用する仕組みを整備する必要がある。構造化データだけでなく、あらゆる非構造化データを扱え、組織の中の開発者が自由にアクセスできるデータ・プラットフォームを整備することが重要だと竹爪氏は述べる。
「これまで、それぞれのデータをマネジメントする仕組みは、個別にDBを追加していくアプローチが多かった」と竹爪氏は話す。その結果、アプリケーションやデータ管理の方式が複雑化し、統一的な性能やセキュリティが担保できない、あるいは、成長にともなってプラットフォームがついていかず、再設計が必要になってしまうなどの課題があった。
その点、企業内のさまざまなデータや、AI、ブロックチェーンといった新たな領域のテクノロジーに対応した機能、そして、適切なデータマネジメントの仕組みを、シングルデータベースアーキテクチャ上で実現していくことができるのがオラクルの強みだ。
さらに、自律型(Autonomous) や 統合型(Converged)のアプローチにより、さまざまなデータベース機能を包括的に提供しながら、一貫したセキュリティ性能と拡張性を、低コストで運用していくことが可能になるというのだ。
データ活用を可能にする、データドリブンなDXプラットフォームを提供する
「Oracle Cloud」の強みについて、竹爪氏は、「エンタープライズ企業が求める厳しい運用要件に応えるテクノロジーを提供できるのはオラクルだけだ」と力説する。データマネジメントについては、基幹システムをクラウドに最適に移行するためのツールやコンサルサービスを有し、IaaSも、DBも最適に稼働するようチューニングされる。
さらに、セキュリティやデータの一貫性、拡張性や連携性までを見据えると、「大規模システムであればあるほど、アプリケーションとミドルウェア、DBとIaaSをすべて1社で擁しているオラクルが強みを発揮しやすい」という。
また、ミッドレンジの企業であれば、クラウドへの移行に際し、DB運用の自律化を実現するAutonomous機能により、いわゆる「ひとり情シス」や、事業部門(LOB)でのクラウド活用などのユースケースで引き合いがあるという。
すでに「Oracle Cloud」の大阪リージョン採用を表明したのは次の3社だ。
1社目は、国内大手の家電量販店チェーン エディオンだ。同社の基幹システムには、これまで「Oracle Exadata」を活用してきたものの、さらなる可用性、事業継続性を強化するため、「Oracle Cloud」への移行を採用した。
2社目は、医療会計システムなどを手がけるISV(independent software vendor)のソフトマックスだ。同社は、西日本地域の中小の病院向けに、電子カルテシステムのインフラ基盤として「Oracle Cloud Infrastructure」を大阪リージョンで構築。電子カルテ関連サービスを幅広い顧客に展開していくという。
そして、3社目は、医薬部外品や健康関連用品の販売を手がけるファイテンである。基幹システムのデータ転送性能(レイテンシー)を高めたいとの課題に対し、「Oracle Database Cloud」へ移行し、大阪リージョンでの本番稼働を予定している。
これら3社すべてがミッションクリティカルな「基幹系システム」の移行先として、Oracle Cloudを選んだのだ。
オラクルDBで培ってきた実績、ノウハウは、あらゆるエンタープライズ、ミッドレンジの企業に対し、オラクルが最も価値を提供できる領域であり、また、顧客企業から最も期待されている領域でもある。
「まずは、既存システムのモダナイゼーションをトリガーにする。その先に、成長領域に対して、シングルアーキテクチャによるDXプラットフォームを実現することで、お客さまのデータドリブンなDXの実現に貢献していく」──。竹爪氏はこのように今後の抱負を語った。